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    maLucia_sandbox

    @maLucia_sandbox

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    maLucia_sandbox

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    14のノエル様が時々魂に焼き付いた生前の"あの頃"を夢に見る話。

    戦士クエやってると原初の魂が震えるとか言うからぁ……

    古竜の見る夢とても、苦しい夢を見る

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    私は誰かと旅をしていて、いつも隣には誰かがいて、私はその誰かを守り、私は焦がれるほどにその誰かが好きだった。

    あての無い旅だった。
    目的は……あったのか、なかったのか。
    さして広くもない大陸を気の向くまま、導かれるままに。
    君と共に。

    桃色の花が、
    雨のように優しく舞い散っている。
    そんな景色を君と見た。
    夜の暗闇を彩る光の花が、
    大小輝き消えてはまた輝いている。
    そんな景色を君と見た。
    ふわりと甘い、
    新雪のような菓子の味を覚えている。
    少し冷え込んだ芸術祭の日、
    君は珍しく熱心に本を探していた。
    おかしくて笑うと、ムスッと拗ねた顔をされた。
    星がよく見える澄んだ冬の夜、
    誓いにも似た大切な約束をした。

    それなのに

    君の顔も、君の名も、君の声も、

    何一つ思い出すことができない。

    私の中から零れ落ちていく君の欠片を、必死に掻き集めている。

    必死になって集めた欠片は決して君ではないけれど。

    私は……



    「……ッ!!!」

    心臓が跳ね上がったような衝撃を感じて思わず目を覚ます。ドクドクと早鐘を打つ心臓、私は……生きている。
    頬を何かが伝う、それは肌を離れ徐々に凍結し氷の粒となって間もなく自身の衣服へと落下した。泣いていたのか。

    ふと、横目にすやすやと眠る"君"を認めた。
    まだ、辺りは真っ暗だ。

    おかしな夢を見たせいで嫌な汗をかいている。少し夜風に当たりたい……が、ようやくぐっすりと眠れる環境にある君を起こすわけにはいかない。

    そっとベッドを抜けようと体を捻り、足を下ろそうとしたところで腕を掴まれた。

    「どこ……行くんだよ」

    振り返れば心配そうな顔をした君が少しだけ上半身を起こして自身の腕を掴んでいる。
    寝起きでも寝惚けている様子を全く見せないところはさすが傭兵、とでも言うべきだろうか。

    「あぁ……すまない、起こしてしまったか。……少し嫌な夢を見てな、風に当たりたいと思ったのだ」

    「それなら俺も行く」

    ぎゅっと掴まれた腕からは何か、怯えのような気配を感じさせられる。
    また、ふらっと出て行ったきり帰らない事がないか不安にさせているのだろうか。

    「いや、良い。その代わり……お前が起きたのなら、傍に居させてくれ、その方が余の気も紛れよう」

    わかった、と君は言うものの掴んだ腕を離そうとはしない。
    心配だ、と顔に書いてあるものの、何か言いたい事がありそうに視線を右往左往させていた。

    「ノエル……」

    「…………お前がいない世界の夢を見た」

    少し、話そうか迷ったが、ありのまま起きた夢の話をする事にした。
    下ろしかけていた足を再びベッドと布団の間に滑り込ませる。

    「え?」

    想定していた答えが返ってこなかったのだろう、君は目を丸くしてこちらを見る。

    「おかしな話だぞ。余は黒い角と尾、鱗を持つ体になっていて……しかも何故か女になっていた」

    我ながらおかしな夢だと思う。
    されどその夢での体験は嫌に鮮明に脳裏に焼き付いていた。

    「そして……お前のことを探していた。ずっとな。でも……余はお前の姿も、声も……名前さえ、何も覚えていなかったのだ」

    「余はそれでもお前のことを探し続けていた。……この心に、この魂に惹かれるものを必死に辿ったのだ。それがいつかお前に繋がると信じて……それは全くお前とは別物だというのにな」

    夢の中で君のことを必死に探していた、自分に似た人の心が、今でも我が身に起きた事のように心に沈殿していて気持ちが悪い。

    「恐ろしい……心地だった。怖い……余は、お前の傍に居られないことも、お前のことを忘れてしまうことも恐ろしくて堪らないのに……どうして……!」

    夢の内容を想起させていると身を割かれそうな恐怖が心を満たしていく。夢の中の自分と今ここにいる自分との境界が曖昧になり、溶け合いそうだ。

    ふと、冷え切った手に温かな感触。
    自分の手を見ると、君の手が自分の手を包み込むようにして握られていた。

    「ノエル……俺はここにいるから。それに言ったろ?二度とこの手は離さないって」

    安心させるように君は微笑んだ。

    ずっとずっと、見たかった顔だ。
    心の底から安心する、心を満たしていく、この優しい笑顔が好きだった。

    手を取り、君の元に体を引き寄せられてはぎゅうと抱きしめられる。
    自分よりも一回りも小さな体だが、逞しくて力強い。
    そのまま頭をぐりぐりと擦り付ける、その行動は紛れもない君の癖だった。

    何年ぶりだろうか。
    もう長いこと、この感覚を味わっていなかったような気がして、思わず涙が溢れそうになる。

    「ふふ、そう……よな、余もお前を守ると決めた身だ。死んでも離れぬさ」

    温かな幸せを噛み締めるように目を閉じる。

    この時間が永遠に続けば良い……と思う。
    それほどまでに、この孤独は永かった、ほんとうに。

    だが……

    ……看過できない違和感があった

    「なぁ……1つ聞いても良いか?」

    「ん?なんだ?」

    目を開ける。
    深夜にろくに電気を付けていないせいか、周りの風景はおろか、目の前の君の顔すら認識しづらい。
    意識すればするほどに、認識が困難になっていく。

    まるで、君の顔だけ"黒くシミになってしまった書物"のように抜け落ちている。

    「…………」

    「どうしたんだ?ノエル?」

    「お前の……」

    「お前の名前は、何だったか?」

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

    あぁ、また、我から、抜け落ちていく

    やめてくれ、これ以上私から、あの人を取らないでくれ

    嫌だ

    あの優しい顔が、我の名を呼ぶ声が、何度も口にした名前が、

    消えていく



    ほんとうに、何たる悪夢だろうか
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