アリスパロみたいなもの設定など(ただの思いつきです、体格差、年齢差は公式と同じような感じでイメージして頂ければ…)
アリスの登場人物の擬人化っぽいですが、中身は全然違います!!
イモムシ(島崎)
いろいろな生き物が暮らしている森の中で、仲間のいない珍しい生物。一人でぷかぷか煙をふかしているだけで、他の種族と交流することもめったにない。盲目であるというが、特に困っている様子はない。何を考えているのかよくわからない。
(チェシャ?)猫(テルキ)
生まれてから日が浅く、好奇心のかたまり。自分の体を消したり元に戻したりする力があるが、まだ不完全。興味を持ったものには猪突猛進タイプ。あまり警戒心がない。異質な存在である島崎のことが気になっている。
アリス(モブ)
ウサギを追いかけてひょんなことから森に迷い込んだ少女。外の世界と自由に行き来できる能力を持つ。森の住人とは仲良しだが、いまだにこの場所の全容はわからない。
白ウサギ(律)
性格は冷静沈着。時間厳守で約束に遅れることはまずない。森の生き物に時計の読み方を教えるなど、先生のような役割もしている。テルキの奔放なふるまいを陰ながら心配している。
アリス(モブ)とは大の仲良し。
「島崎さん?」
草むらをかき分けてテルキが姿を現した。
鮮やかなグリーンのストライプのベストに、裾を折り返した同じ色のズボンを身に着けて、ふさふさとした長い尻尾をくるくると動かしながら、イモムシの定位置である大きなキノコの上によじ登った。
「いないの?」
周辺を探したが、見当たらない。
「こっちですよ、テルキ君。」
さらに上の方から声がする。
見上げると、枯れて花びらの落ちた巨大な植物の茎が掲げた台座に、いつもの恰好で寄り掛かりながらのんびりと水パイプをふかしている島崎がいた。
「なんだ、そんなところにいたんだ。」
テルキは地を蹴ってひらりと階段状になった丈の高いキノコの上を素早く飛び移り、島崎の隣に着地した。
「何か用ですか?」
島崎はその閉じられた目でテルキの方を見つめた。
「用なんてないよ。“友達”なんだから、いつでも会いに来ていいだろう?」
テルキがそう言うと、
「そうでしたね。」
島崎は笑みを浮かべながら頷いた。
テルキと島崎が“お友達”になってから、ウサギの時計が何百周、何全周とするほどの時間が過ぎた。
もっとも、この森の中では時間が短い、あるいは長いという感覚を持つ生き物は少ない。
二人が出会ったのがいつだったのか、はっきりしたことはわからないが、兄弟から離れて森の中を探検していたテルキが島崎を見つけて、そのめずらしい生態に興味を抱き、足繫く通うようになって以降、その奇妙な関係―森の中の生き物はいつもひとりきりのイモムシを薄気味悪く思い、話題にもしない―をテルキが“友達”と名付けた。
「昨日は何をしていたんですか?」
「アリスと一緒に遊んでた。途中からウサギ君もやって来て、三人でかくれんぼをしたんだ。僕、最後まで見つからなかったんだよ。」
「それは、偉かったですね。」
島崎が手を伸ばしてテルキの頭を撫でた。にゃあ、とテルキが鳴く。
「アンタは何をしていたんだい?」
そう尋ねると、
「別に何も。いつも通りですよ。」
島崎はくわえた水パイプを離して横に放り、
「ほら、おいで。」
テルキに向かって両腕を差し出した。
呼ばれたテルキは尻尾を揺すって島崎に近づき、素直にその腕の中に身を預けた。
懐にすっぽりと収まって、抱きしめられる。
水パイプの煙の匂いが鼻をつく。最初は顔をしかめるほど苦手だったが、時間が経つにつれて、不思議と安心するようになった。だって、彼がそばにいる証だから。
「今度、島崎さんも一緒に遊ぼうよ。アリスにも会ったことないだろう。すごく面白い子なんだ。
筋力トレーニングが趣味なんだって。変わってるよね。かけっこしたら足は断然僕の方が早いけど、どんなにつらくても最後まで絶対に諦めない。あの子のああいうところが、僕は好、き……あ、」
ぱあっと花のような笑顔を咲かせて、自慢の友人の話を語って聞かせていたテルキだったが、島崎のひとさしゆびが唇に当てられて、それを中断した。
「どうしたの?」
島崎の胸にもたれて甘えるように尻尾を揺すっていたテルキは、不安そうに男を見上げた。
「君の“お友達”の話はつまらない。」
言葉とは裏腹に機嫌の良さそうな微笑を浮かべると、男はテルキの顔を覗き込むようにして、その唇にくちづけする。
「島崎さん……」
軽くふれただけですぐに離れたキスを追って、テルキは膝立ちになると、今度は自分から唇を合わせた。
首元に腕を回してすがりつくと、男の手が腰を抱き寄せてくる。
互いの体を密着させながら、求めあうようなキスが長く続いた。
「ん、……っ、」
ひらかせた唇の中に男の舌がしのばせられて、テルキはびくりと片耳を震わせた。
しっかりと肩を抱かれていて、抗うことができない。
入り込んだ舌が口腔を舐め回し、唾液が混ざって顎を伝う。
とかされていくようですこし怖くて、しまざきさん、と声にならない声で呼ぶ。
ちゅ、と音を立てて舌先を吸われた。またびくりと耳が震える。
テルキはこのキスしか知らない。こうして、恍惚とした体をまるごと男に預けて、相手の気のすむまでひらくことしか知らなかった。
自分が自分ではないみたい、と感じる。
こうして島崎と出会う前には、何を喜びに感じていたのか、もう思い出せなかった。
『あのパイプには毒が入っているんだよ』そんな誰かの言葉が不意によぎった。
それでもいい。同じになってしまいたい。
胸元のリボンを解かれる間、テルキは男の肩越しに、煙で濁った空の渇きを見た。