Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    bumilesson

    @bumilesson

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 27

    bumilesson

    ☆quiet follow

    本編が地獄みたいなんですが…。辻バレ前の二人。肉体関係あり。パイルバンカーとナギリさんのお話。

    #官ナギ
    #辻バレ前
    streetCorner

    汝、愛すべき敵を追ってエル・ドラドへ汝、愛すべき敵を追ってエル・ドラドへ


     自分はこんなに流されやすい性分であったか、とため息をつく。幸い思うままナギリの身体に触れて、精液を体内にぶちまけた男は手足を投げ出してベッドに張り付いている。すうすう、とあどけなさすら感じさせる寝顔だ。
     甘風をしのげて、まともな飯にありつけるからという理由で気が付けば嵐のような男と性行為をするようになって数か月が経つ。勢いに任せて唇を重ねられ、路地裏で犬が腰を擦り付けるように下だけを脱がせてセックスをして、今はもっと落ち着いた場所で愛し合いたいです、などという言葉に押されてホテルを使うようになった。
     仕事中だろうバカ公務員が、と罵ってみるが勤務時間外ですのでと言いながら新横浜のネオンの眩しい界隈に引き摺られてしまう。貪るように快楽を与えられ、好きです、辻田さんと偽の名を叫びながらこの男は自分を抱く。いい加減気づきそうなものだが、こいつの中で自分はバレない限り永遠に『辻田さんはいい人です』で終わってしまう事だろう。学習能力がないのだろうか。
     そもそもこの男に半ば怯える原因となったものは、これだ。ベッドの横に立てかけられた銀色に輝く大きな躯体。いかつく四角形で出来たそれは先端に銀色の太い杭を覗かせている。
     連射式パイルバンカー。忌々しい武器だ。こんなものを振り回し、辻斬りナギリを仕留めて殺そうとしている。見ているだけで寒気がしてくるようなえげつない武器が暗い室内で光を放っている。吸血鬼を亡ぼす為だけに生まれた武器。飛び出した杭が太く簡単に自分の腹を串刺しにして大穴を開けられる事を想像させる。杭以外の部分はシンヨコハマニウム合材で出来ている、と以前カンタロウが聞きもしない事を言っていた。
     自分を殺そうとしている武器がどんなものか。それは単純な興味だった。恐ろしく、その先に絶対的な死が弱体化した今となっては待ち受けていると分かっていても、何故かこの無骨な四角い形状に心魅かれるものを覚える。
     冷たく、ずっしりと重い。想像を超えて遥かに重量があり、それは持ち上げただけで地に足がめり込みそうになる程だった。こんなものを振り回しているのか、と視線を向けるとベッドが空になっている。気配はない。視線を背後から感じ、恐る恐る振り返ってみる。艶のない鳶色の瞳がそこにある。
     
    「な、なんだ貴様、起きてっ、」
    「気配を感じましたので起きてしまいました。いやあ、辻田さんがパイルバンカーにご興味をお持ちとは!」

     自分を殺そうとしている武器に興味がある者は単なる自殺願望者だ。そんな事があるか、と言いそうになるが大きな瞳が食い入るように自分を見ている。気づかれたか?と後ろに下がろうとするが、騒音のような大声を潜めて言葉が続く。
     
    「重くないですか?」
    「あ、ああ、」

     手の中に納まるどころか持ち上げれば肩が外れそうになる程の重量感だ。普通の人間がまず持ち運び、ましてや自分の腕を引きながらパイルバンカーを制服の中に格納して全速力で新横浜の街を駆け抜けるなど出来るはずがない。
     
    「本官は辻斬りナギリに斬られてから、警察を辞め修行に入りました。あの凶悪にして最強の吸血鬼をこの手で摑まえる為であります。その際の修行の目的がこのパイルバンカーを扱えるようになる事でありました。軽く世界一丈夫と言われるシンヨコハマニウム合金で出来ていると言いましても、これは非常に重くまた扱いも難しい。起動させて杭を打つ事も最初は出来ず、重いこの武器を持ち運ぶ事すらできませんでした」

     過去を思い出す男の横顔は、いつもの騒々しさを感じさせない。単なる騒々しいバカな警察官が別の顔を見せる。自分を抱く時もだが、この男は会う度に知らない顔を見せる。
     
    「けれど、このくらい強力な武器を使って足止めを食らわせないと辻斬りは止まりません。今もどこかで刃を研いで、我々や市民を辻斬りは狙っています。辻斬りを倒すのに相応しい男、そう辻斬り自身に言わせたいのであります。あの強大な力を持つ男が、そう簡単に逃げるわけはない。我々を再び恐怖で支配する為に、今は隠れているのでしょう。辻斬りナギリ、彼に出会えたなら言いたいのです。本官をここまで強くしたのは、お前であると。倒すのに相応しい男になったのだと認めさせたいのであります」

     それならもう。お前の望みはとう叶っている。
     ケイ・カンタロウ。いつかお前は俺を倒しに来るだろう。その銀の杭で足止めと言いながら俺の腹に穴を開ける日が来る。その時がもし来たら俺は自分を散々抱いてきた男が、仇敵だった事をお前に宣言する。愛すべきお前の敵、そこまでお前を強くさせた辻斬りナギリ、それはこの俺だ。お前が腹の中に何度も人間として生きている証の精液をぶちまけ、俺を好きだと叫びながら腰を振った相手が。 他の誰でもない。もしその日が来たなら俺はこの男に。
     
    「辻斬りは強いからな」
    「そうなのであります!身の丈5メートルに変身し火を吐き血の刃を振り回す恐怖の怪人!!」
    「うるさい!静かに話せ!!」
    「辻田さん、辻斬りの話をしていましたら…本官、興奮していまい目が冴えてしまったのであります」

     シーツで隠していたモノが目を覚ましている。こちらの杭も元気な様子だ。また元の騒々しさが戻ってきた。
     
    「仕方ないな」

     ベッドに再び潜り込んで、滾るそれを握ってやると太い首から抑えた喘ぎ音が漏れ出した。
     憑りつかれたように虚像の俺を求める愚かな男よ。銀の杭を振り回せ。俺はお前に勝ってみせる。
     真実を知り絶望に歪むお前の顔を見下ろす日が来るまで、くだらない戯れに付き合ってやろう。これは単なる気まぐれだ。
     
     いつか俺を倒し、殺すのはこの男かもしれないと頭の隅に虚像が浮かぶ。その日がまだ先である事を願いながら男の天を突くモノを咥内に納める。喉を刺す杭に、身体ごとまた貫かれる期待に身体が震え始めるのを感じながら。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    bumilesson

    DOODLE本編が地獄みたいなんですが…。辻バレ前の二人。肉体関係あり。パイルバンカーとナギリさんのお話。
    汝、愛すべき敵を追ってエル・ドラドへ汝、愛すべき敵を追ってエル・ドラドへ


     自分はこんなに流されやすい性分であったか、とため息をつく。幸い思うままナギリの身体に触れて、精液を体内にぶちまけた男は手足を投げ出してベッドに張り付いている。すうすう、とあどけなさすら感じさせる寝顔だ。
     甘風をしのげて、まともな飯にありつけるからという理由で気が付けば嵐のような男と性行為をするようになって数か月が経つ。勢いに任せて唇を重ねられ、路地裏で犬が腰を擦り付けるように下だけを脱がせてセックスをして、今はもっと落ち着いた場所で愛し合いたいです、などという言葉に押されてホテルを使うようになった。
     仕事中だろうバカ公務員が、と罵ってみるが勤務時間外ですのでと言いながら新横浜のネオンの眩しい界隈に引き摺られてしまう。貪るように快楽を与えられ、好きです、辻田さんと偽の名を叫びながらこの男は自分を抱く。いい加減気づきそうなものだが、こいつの中で自分はバレない限り永遠に『辻田さんはいい人です』で終わってしまう事だろう。学習能力がないのだろうか。
    2451

    recommended works