Nach dem Regenシュミットはずっとエーリッヒと共に育ってきた。いつだって、隣にエーリッヒがいた。それが当然で、これからもそうだと思っていた。
しかし、大学進学を機に二人の道がすこし歪み始めた、と、感じていた。
同じ大学ではあったが、学部が違い………そうなると、なかなか一緒にいる時間は取れない。
二人ともアイゼンヴォルフのレーサーを卒業し、今は運営としてチームと関わっていて……だから接点はもちろんあったし、シュミットにとってエーリッヒは特別だったから、エーリッヒにとっても自分は特別なのではないかと思ってはいる。しかし、エーリッヒが、大学の課題などを理由にチームの仕事を少しずつ減らし始めているのは事実で……。顔を合わせず過ごす日も、もう少なくはなかった。
「ねぇシュミット。これ、エーリッヒに渡しておいて」
ある日、やはりチーム運営に携わるミハエルが、シュミットにそう言って書類を預けてきた。
「エーリッヒに?ですが……昔ほどいつも一緒ではないので、いつ会えるか」
シュミットはそう言いながら、切ない気持ちになる。叶うことならこどもに戻り、エーリッヒと一緒にマシンを追いかけて走りたいとシュミットは常々思っていた。
「急ぎのものじゃないから大丈夫。……それにしても、君、随分寂しそうな顔をしてるよ」
ミハエルに指摘され、取り繕えもせずシュミットは苦笑を返す。
「まあ、エーリッヒ以上に私を理解してくれる人間はきっといませんから。会えない
のは……そりゃ、寂しいですよ」
今ではすっかり背も伸びたミハエルが、とても自然な仕草でシュミットの頭をぽんぽんとしてから、頬をするりと撫でてきた。
「その寂しさ、僕が埋めてあげようか」
「え?」
ふざけているような雰囲気ではなく、真っ直ぐに見つめられ、シュミットは目を逸
らせなくなった。
「僕だって、こどもの頃から君を見ているよ。エーリッヒ程じゃなくても、君のこと
は大体分かるつもりだ」
「……あなたが、昔のエーリッヒのように、私の隣にいてくれるのですか?」
返した声が少し上擦る。動揺しているのだ、と自覚して恥ずかしかった。
「君が許してくれるならね。ねぇ、抱きしめてもいい?」