練習走行を終え、残した事務仕事を片付けようと、シュミットはミーティングルームに戻る。
ミーティングルームはもう薄暗くなっていて、カーテンの隙間から赤い西日が差し込んでいる。
電気を点け、パソコンに向かおうとした時、部屋の真ん中のソファに人影が見えた。
見ると、エーリッヒがソファに凭れかかって眠っている。座面に投げ出した手と、向かいのローテーブルには書類が。彼もまた、事務仕事の為にここに来て、疲れのあまり居眠りをしてしまったのだろう。
シュミットは、そっと物音を立てないようにエーリッヒに近寄った。
いつもの香水の代わりにふわりとシャクヤクが優しく香る。練習の後風呂に入ったようだ。前髪はいつものように上げられてはいるが、少しまだ濡れているように見えた。髪を乾かす時間も惜しんで仕事をしていたのだろう。
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