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    karekimonigiwai

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    karekimonigiwai

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    お見かけしたぽっちゃナーがあまりに可愛かったので、ガリライ中心で書いてみました。
    大学に進学したスクカ軸のポ、ベル、ぽっちゃナーでギャグ時空の話です。

    #ガリライ
    gully

    OH MY GOLDEN”HOT”BEAR 幼い俺が前世の記憶を取り戻したとき、俺の目の前にいたのは新しい人生を謳歌している兄貴だった。そんな兄貴に倣って、俺も平和な世を享受しようと決めた。それからはもう開き直って、この娯楽と学びに満ちた今生を楽しんで生きている。
     ここマーレ州では俺やベルトルトのように、細部まで前世の記憶が戻った人間もいれば、ライナーのように記憶があやふやなままの奴も多くいる。だが大方は前世にとらわれることなく生きており、俺とライナーの関係も前世のそれとは違って良好だった。
     俺の一番の趣味であるカメラの被写体として、ことライナーは最高だ。高校時代に「再会」して以来、俺は奴の写真を使って幾度も賞をとったことがあったし、ブロマイドを売って随分儲けさせてもらった、のだが。

    「おい」
     俺は学食のトレーを持ったまま、ベルトルトの隣に座っている金髪男を見下ろした。丁度昼時、大きくとられた学生食堂の窓から日がさんさんと差し込み、見渡す限りテーブルの置かれた広大なフロアを照らしている。さざめき声が絶えないほど混み合うなかで、俺の友人のベルトルトとライナーはキッチンにほど近いテーブルにびっちり隣り合わせに座っていた。
    「よぉ、ポルコ!」
    「ポルコ、今日はこっちのキャンパスだったの?」
     のんびりとした瞳が四つ、こちらを見上げてくる。でも俺はそれどころじゃなかった。
     ライナーのトレーの上は所狭しとおかずの皿でひしめいており、その左端には山というより塔のごとく白飯の盛られた碗が置いてある。そして油でてかてかの唇をきゅっと上げて笑う、艶の良い頬をしたライナーは、ぷりっぷりという擬音でしかないような身体つきに変わっていたのだ。
    「よぉじゃねぇ! お前、ライナー。久々に会ったと思ったら牝牛のように肥えやがって!」
    「肥えたって言ったって、100キロ越えたところだぞ。全然太ってねぇだろ」
    「それを肥えたって言うんだよ!!」
     俺は持っていたトレーをライナーの向かいにバン!と置いて吠えた。ライナーがウォール高校のジョックだったのも今は昔、マンモス大学であるマーレ大学の学生になった今では、すっかり他の学生に埋もれている。それでも俺にとってライナーは特別だ。高校入学時に「改めて」出会った時からずっと、ライナーは異彩を放ち、俺の心の一番に君臨していた。
     いや、ジーンズにむっちりした身体のラインを浮かせて、上を見ればネルシャツのボタンを飛ばしそうに大胸筋と言う名の雄っぱいを膨らませている今のライナーも、悪くはない。だが、こう、だんだんと、俺の知っているライナーより確実に太くなってきているのだ。
     あまりの不安に唇がわなわなと震える俺に先んじて、ベルトルトが口を挟んだ。
    「そうだよ、ポルコ。ライナーは全然太ってない。188センチの104キロだよ?むしろアメフトのディフェンスタックルとしては細いほうだ」
    「確実に増えてきてんじゃねぇか。そもそもベルトルトがバイト代を全部こいつの食事代につぎ込むからこいつがどんどん肥えるんだよ」
    「えぇ? 僕が僕のバイト代を何に使おうが勝手だろ」
     俺は意外と弁が立つベルトルトをねめつけた。前世ではベルトルトがこんなに喋る男だとは知らなかった。転生して悪いことも良いこともある。ベルトルトとこうして言い合いができるようになったことは良いことだ。
     だがそれでも。
     俺はカラトリーを使う手を止めないライナーを横目に、ベルトルトに反論した。
    「こいつは、ライナーは、体脂肪率17%の時の身体が最高なんだよ。脱いでも着てもすげぇ写真映えするのに、これ以上肥えたらゲ〇にばっか人気がでるだろうが」
    「女性でそういうのが好きな人もいるよ。それに、ライナーは君のカメラのために生きているんじゃないんだけど」
    「!!!」
     痛いところを突かれて俺は言葉に詰まった。不器用な自覚がある俺が、ライナーと唯一接点を持てるのがカメラだ。俺はカメラを構えている時だけはライナーのことを素直に褒められるし、ライナーもそんな俺に素直に応えてくれて、いい表情を返してくれる。その機会を失いたくはなかった。
    「……俺のカメラのために生きてるんじゃない、んなことは分かってるんだよ」
     俺は手を付けないまま放置されている目の前のトレーを見つめた。わずかに湯気を出しながら、少しづつ冷めていくポークチャップ。
    「ポルコ……」
    「だがな!ベルトルトは知らんだろうが!」
     珍しくしおらしくなった俺を慰めようと、口を開いたライナーを俺は遮った。
    「こいつがマーレの戦士隊の副長をやってた時代は、そりゃぁもう渋くて恰好よかった。髭を生やして、頬はこけてたが精悍で戦場にでりゃあ右に出るものもない勇猛振りで、ブラッド〇ッドも裸足で逃げ出す男前っぷりだった。転生して高校に入学して出会ってみたら、顔は明るいし、ジョックなんかになりやがって、阿保面ひっさげてるのに試合に出りゃあやっぱり一番の活躍をしやがる。そんな奴を被写体にするなっていうのが無理な話だろうがよ!!」
     一気にまくし立てた俺に、二人のみならず周囲の視線が突き刺さる。前世の記憶を取り戻した奴がこうして逆上するのは珍しいことじゃないので、そのうち視線も散るだろうと考えた俺は、コーラを一口飲んで逸る気を落ち着かせた。
    「……要するに、被写体として俺はライナーに惚れてんだよ」
     気を落ち着かせたと思ったが、ダメだった。「惚れた」という言霊に自分自身でやられてしまって、そういう意図じゃないはずなのに、頬も耳もめちゃくちゃに熱い。
    「ポルコ。よく分らんが、ありがとうな?」
     さすがに食事の手を止めたライナーが、俺に向かってサムズアップする。
    「増えた分はもう仕方ない。だが、それ以上増やすなよ。食いたいなら俺が健康的なの作ってやるからよ、借家も近いんだし俺んち来いよ」
     全然顔が見られないまま、俺は横を向いてライナーに提案した。
    「いいのか」
    「良くなかったら呼ばない」
     流し目でライナーを見ると、ホクホクと顔をほころばせている。きっとこいつはベルトルトに奢られているときも同じ顔をしているんだろうと予想はつくが、唇の端に食べかすを着けたまま無邪気に笑うライナーを見ていると、心がほだされていくことを禁じ得ない。俺は前世から、こいつのこういう顔が見たかったのだから。

    「食べかすがついてるぞ。ガキじゃないんだから」
     頬の食べかすを親指で拭ってやり、ほらと差し出すとライナーは舌を出した。
     どこもかしこもパツパツのむくつけき大男が素直に舌を差し出す景色に、俺は先日のことを思い出す。
     秋の初めに家族旅行で熊牧場に行った時のことだ。コンクリートの檻の中に、肥えたヒグマが何匹もいた。貰いがいいのは、愛嬌良く片手を上げて手招きをしている熊だ。可愛いな、と売っている餌を投げてやりながら兄貴は言った。よく肥えているな、と兄貴は言った。曰く、ジビエ料理を出す店が、繁華街のとある路地にあるのだという。和風の料理をだす店で、兄貴が食べたのは熊鍋で、臭みがあるかと思えばそうでもなく、柔らかいのに噛めば噛むほど旨味が出てきて、熱で溶けた脂の甘さは脳を殴るほどだ。あれをもう一度食べたい。涎をすすった兄貴は、とろりと食の快楽に融けた瞳で例の手招きするヒグマを見て「可愛いな」と再度呟き、また餌を投げた。美味そうだな、とは聞いたんだったか、聞かなかったんだったか。
     ぼうっとしていた俺の指をライナーが舐める。美味そうに食うな、と思った。向かいのトレーに置いてあったフォークを取って、皿に残っていたフライドポテトに突き刺し、俺はそれをライナーの口元に持って行った。
    「……ん」 
     俺が差し出した芋にもライナーはためらわず口を開けた。モグつく表情にやはりよく食うなと思う。こうやって餌付けして、全部俺が作ったものに置き換わって、今よりもっと魅力的な俺の理想の体になったら、そしたら――。
     下腹部がピクっと反応して、俺はようやっと邪な連想を止めた。慌てて立ち上がりかけていたのを座りなおしてそれを隠す。のぼせていた熱が一気に下がって、ベルトルトからの胡乱な眼差しをひしひしと感じた。
    「うわっ!! いや、こんなジャンキーなものじゃなくて、ちゃんとしたの食わせてやるからさ!」 
    「ポルコはバイトで賄いしてただけだろ。料理なら毎日作ってる僕のほうが上手いよ」
    「~~っそれなら、俺はスポーツフードマイスターの資格とるぜ。こいつの食欲に任せてたんじゃ肥える一方だからな、俺が管理してやるよ!」
    「スポーツフードマイスターの資格なら、僕はもう持ってるよ」
    「っ、知ってて肥えさせてるなら、なお悪いじゃねぇか」
    「だから、アメフトに必要な肉体改造なんだって言ってるじゃないか」
     言い争うベルトルトと俺に、ライナーがため息をついた。
    「おい、ポルコ、ベルトルト、料理が冷めるぞ。ちゃんと美味いうちに食ってやらなきゃ料理に失礼だろうが」
    「「誰のせいで……!」」
    「俺のせいだろ?」
     鷹揚に言ったライナーが片目をつむる。大きな口から白い歯の覗く、眩しいような笑顔。ジョックでなくなっても俺たちの目をひきつけてやまない金髪のむくつけき熊男に、俺たちは同時に押し黙りカラトリーに手を付けた。ほとんどライナーを睨むようにしながら、俺はもくもくとフォークを口に運ぶ。
     食物が潤沢とは言えなかった前世で、食べ物のありがたさは身に染みている。鉄は熱いうちに打て、料理は美味いうちに喰え。しかし、現世の料理は冷めていても美味い。本当に美味い。
     ――ベルトルトとライナーと三人で、兄の言っていたジビエ料理屋に行ってみるのも悪くないだろう。 

    「『美味いうち』っていつ?」
     ベルトルトの吐いた疑問が、のちに俺の心の中で大きな時限爆弾となったのは、また別の話である。
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