ガラスのビー玉⚠️原作軸じゃありません!大学生パロです。
デクくんがパパ活っぽいことしてます。
デクくんが監禁されてます。
2人のお互いの呼び方が「かっちゃん」「デク」ではありません。
以上のことが大丈夫な方はどうぞ!
「おい、出久。おめーどこにいンだよ」
「あぁ、ごめん。ちょっと用事があってね、もう学校出ちゃった」
「アァ?一声かけろや。無駄に探しちまったじゃねーか。あ、あと今晩お前ン家行くからな」
「えー、いつも急だよね。何時くらい?」
「あー、早くて20時ぐらいだな」
「わかった、じゃあ待ってる」
「ン」
ぷつりと切れたスマホを適当にバックのポケットへと突っ込む。ほんとに、見た目によらず連絡がマメな人だなぁ。今まで付き合ってた人は講義の後連絡してくることなんて無かったし、僕のこと女より気軽にヤれる奴、くらいにしか見てなかったのに。爆豪くん、粗野に見えるけど所作は綺麗だし、良い家庭で育ったんだろうな。思わぬ彼からの連絡に少し気分が上がって、ふんふんと鼻歌を歌いながら歩く。夜の予定も出来たし、今日は早く切り上げてかーえろ。
「見つけたよ。君がみどりちゃんかな?」
「はい♡」
肩を叩かれ、くるりと振り返る。人工的な長い髪が太陽に照らされて、テカテカと光っていた。
やることを終えて、適当な公共トイレで女装を解く。別に脱げばバレるんだけど、やっぱり女の子の格好の方がテンション上がる人が多いし、かわいい方が僕も気分がいい。脱いだり着たりするのが少し面倒だけど、それでもやるくらいには女装のメリットが大きかった。けど、爆豪くんと会う時は基本女装はしてないなぁ。初めは彼も「そういう」目的だと思ったから、この格好で会ったこともあるんだけど、「趣味ならやめろとは言わんが、違うなら俺の前でンな格好せんくていい。」って言われたから、それからしてないかも。わざわざ脱いで行かなくてもいいかもしれないけど、しなくていいなら僕もしたくないし。特にウィッグは暑いし。涼しくなった頭を少し振って、髪を整える。よし、せっかく爆豪くん来るなら晩ご飯作ってもらお。きっと彼も食べずに来るだろうし。僕が料理出来ないことを知ってから、爆豪くんは家に来た時は材料さえあれば何か作ってくれるようになった。ちなみに何も無かったら作ってくれない。自分で買っておけってことだ。もともと食が太いほうではなかったけど、スーパーに行くようになってからは、少し食べる量が増えたように思う。昔は食べれればなんでもいいと思ってたけど、彼が作ってくれる料理は美味しくて。同じ料理のインスタントを買って食べてみたりもしてる。インスタントって、最近どんどん美味しくなっててすごいや。スーパーで前に食べた料理が目に入ると、つい買っちゃうし。まぁ爆豪くんの料理には及ばないけど!
スーパーに入り、適当に目についたものを籠の中に放り込む。あまり適当に買いすぎると怒られるから、なんとなく彼がよく組み合わせている野菜を一緒に買って、帰路に着く。ガサガサと音がなる袋は重く、これらがどんな料理になるのか今から楽しみだった。
「ただいまぁ」
挨拶をしても、何も帰ってこない。当たり前だ。爆豪くん、早く来ないかなぁ。靴を脱いで、壁にかけてある時計を見ると、針はまだ18時をさしていた。小さくため息をつきながら、買ってきた野菜たちを冷蔵庫へとしまう。キャベツは冷蔵で、玉ねぎは外。こういったことを教えてくれたのも、彼だ。堕落しきった生活をしていた僕を、普通の人間くらいの生活まで戻してくれた。何だかんだ面倒見がいいのだ。あ~、早く会いたいなぁ。
特にすることもなかったため、シャワーで汗やらなんやらを流し、部屋着に着替えてぼーっとしていた。時間を潰すために付けたテレビも特に興味を引く番組はなくて、またため息が出る。寂しいなぁ。
……ひとりは、いやだ
――――――
10歳のころ、僕は半年ほど監禁されたことがある。太陽の光も入らない、真っ暗な部屋が僕の居場所だった。足につながれた鎖は重く冷たくて、外そうとすればするほど皮膚と擦れて、痛かった。僕が動くと、それを知らせるように鎖がじゃらじゃらと鳴る。その音は「おじさん」を呼ぶ呼び鈴だった。
「どうしたんだい、出久くん。なにか欲しいものでもあるの?ない?……じゃあなんで動いたんだい?もしかして、逃げようとしたの?出久っ!!」
「っ!し、してないっ!」
「嘘をつくな!れ外は君を傷つけるものしかいない!!君を守れるのは僕だけだって言ってるのに!!どうして分かってくれない!?君のために、こんなにも尽くしているのに!!どうして僕から離れようとするんだ!!許さない許さない許さない」
「う゛っ、ごめ、んなさ、うぁっ」
おじさんは、僕が動くと殴ってくる。頭を、頬を、お腹を、手を、足を、何度も何度も何度も何度も。痛くて、熱くて、苦しくて。呻くことしかできない僕を見て、おじさんはようやく、溜飲を下げる。
「もう、だめだよ。僕だって君のことを大切にしたいんだ。君は賢い子だ、わかるだろう?このままここで僕と暮らすことが、君の1番の幸せなんだ。そうだろう?」
「わかって、るよ、ごめんなさい」
「あぁ、よかったよ。ごめんね、痛かったよね。今日はたっぷり甘やかしてあげようね」
そう言って、おじさんは服の裾から肌をするりと撫でてくる。んっと声をあげると、「おじさん」はにっこりとして、気分をよくする。だから、気持ちよくなくったって声をあげるようにしていた。おじさんが喜んでくれるから。
「ふふ、かわいいかわいい僕の出久くん。大好きだよ、僕がずっと君を守ってあげる。ね、出久くんは?おじさんのこと、どう思う?」
「好き、だよ。いつも守ってくれて、ありがとう」
「ふふ、出久くんはいい子だねぇ」
おじさんは、いつも12時ごろに1度部屋を出る。昔は何度も何度も抜け出そうとしていた。一度、殴られたときの衝撃で鎖を打ち付けている杭が緩んだことがあった。その時の僕は、愚かにも逃げられるんじゃないかって思ったんだおじさんがそれに気がつかないよう、その日は大人しく、言う通りにし続けた。おひる、12時。どこからか鳩が鳴く音が聞こえる。時計もない、陽の光もないこの部屋で、この音と夕方の鐘だけが唯一時間がわかる音だった。
「あ、もう12時か。はぁ、行かなきゃなぁ。ごめんね、すぐ帰ってくるからね」
おじさんは名残惜しそうに、僕を撫でてから出ていった。おじさんが出ていってから少し待って、それから杭を抜いた。鎖を引きずりながら、まずおじさんが出ていったドアを開けようとした。けど、どれだけ開けようとしても、ドアノブはガチャガチャと音を立てるだけで開く気配はない。他に窓かなにかないか探して見たけれど、何もなかった。出入りできるのは、あのドアだけ。出たい、みんなと遊びたい、お母さんに会いたい。出して、出してよ!!
「おや、お出迎えかい?ありがとう出久くん」
「ひっ!」
張り付いていたドアが開き、支えを失ったがべちゃりと床に倒れ込む。恐る恐る顔を上げると、にっこりと口角を上げたおじさんがいた。
「んー、絶対外れないようにしてたと思うんだけど、打ちこみが弱かったのかなぁ」
「いたっ、いたい、ごめんなさい、ゆるして」
おじさんは、僕の髪を乱暴に掴むとそのまま部屋まで引きづり込んで、いつものベッドの上へ放り投げられる。
「今度は絶対抜けないようにしないとね」
お道具箱からトンカチを持ってきたおじさんは、拾った杭に鎖を通して、大きな柱に打ち付ける。カァンカァンと、大きな金属音が鳴り響く。抜け出せなかった、ごめんなさいお母さん。会いたかった。帰りたかった。
「これでいいかな。怖がらせたかな、ごめんね。でも、これは君を守るために必要なんだ。それに、逃げようとした出久くんにはお仕置きをしないとね」
「ひっ、いや、いやい、っ!!」
「もう、逃げないでよ。僕が悪いことしてるみたいじゃないかっ!!」
「う゛ぅ、るして、いだいっ、いたいよぉ……」
「はぁ、仕方ないなぁ。でも、少し反省してもらわないとね」
おじさんは僕をひとしきり殴り、鎖が抜けないことを確認すると、部屋を出て行った。
「じゃあ、出かけてくるから。お留守番よろしくね」
12時の時計の音は聞こえなかった。
それからおじさんが帰ってくることはなく、僕は暗い部屋に1人っきりだった。人工の灯りがチカチカ点滅する中で、出ていく前におじさんが置いて行った乾パンを少しずつ食べて、その日その日をなんとか過ごした。けど、お腹が満たされることはなくて。なにより、寒かった。暗くて、寒くて、気づいたらあんなに嫌だったおじさんの帰りを待つようになってた。
ごめんなさい、ごめんなさい、全部全部僕が悪い子だから。もう出ようとしない。おじさんとずっといるから。お願いだから、帰ってきて。ひとりは、もうやだよぉ。
泣いて、泣いて、叫んでも、扉が開くことはなかった。きっと、こんな僕に愛想をつかしたんだ。お仕置きって言ってた。もう、僕のことなんてどうでもいいんだ。さみしい、さみしい、さみしい。一人は嫌だ。早く帰ってきてよ……!!
毛布にくるまって、ただただ扉の前で、おじさんの帰りを待ってた。泣いて、気を失って、ご飯を食べて、また泣いて。その繰り返しだった。時計もカレンダーもないこの部屋で、おじさんが出て行ってから何日経ったのかなんて分かりもしなかった。わかるのは、今が夕方ではないことだけ。
おじさん、いつ帰ってくるの。僕、いい子にしてるよ。ちゃんとお留守番してるよ。
ねぇ、どうして…!
それから、何日たったかわからないけれど、暫くしてからおじさんは帰ってきた。顔をぐちゃぐちゃにして、縮こまってる僕を見て、おじさんはにっこりと笑うと、反省したかい?と言って抱きしめてくれた。こくこくと頭を振り、あんなに怖かったおじさんの腕の中で、安心していた。人の体温が心地よくて、寒さが和らいだきがした。
――――――
「…く」
「い…く」
「出久っ!!」
「んぅ、爆豪くん?いつ来たの?」
「ん、ついさっき。テメェめちゃくちゃ魘されてたぞ。大丈夫か?」
「あー、ちょっと夢見悪かっただけ。気にしないで」
「そーかよ。ならいい」
「あは、心配してくれてたの?」
「?するに決まってンだろ」
「……そう」
「なぁ、お前メシは?」
「食べてない。けど、買い出しは行ってきたから、そこら辺に閉まってあると思う」
「あー、あった。じゃ、勝手に使うぞ」
「はぁい」
カタカタ、トントンと規則正しい音が響く。だんだんいい匂いがしてきて、ちゃんと僕のためにご飯を作ってくれてるってことがわかる。ふふ、嬉しいなぁ。優しいなぁ。
こんなダメダメな僕の傍にいてくれて、ここまでしてくれて。本当に僕のことが好きなんだ。
ここまで爆豪くんは尽くしてくれてるけど、それだけじゃダメなんだ。君は1人でも生きていけるだろう?けど、僕は無理なんだ。1秒でも1人でいる時間があると、寂しくて寂しくて気が狂ってしまう。僕と四六時中ずっと一緒に、なんて君には無理でしょう?
ごめんね、爆豪くん。僕はだめな子なんだ。1人では満足出来ないのに、君を手放せない僕を許さないで。