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    Cattleya404

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    卒業後アジームに戻ったふたり らぶいちゃ

    #ジャミカリ
    jami-kari

    きょうもかわいい、カリム様「起きろ、カリム」
    声を掛けると幼なじみがうっすらと目を開けた。二回、三回またたきをして、夢とこちらを行き来している。
    「なんてもの抱えてんだ、お前」
    「じゃ、みる?」
    ゆっくりまたたいたカリムが寝ぼけた表情のまま見上げてきた。定まらない視線が俺の指を追いかける。指差された先を見下ろし止まる。ぼんやり見つめ、急に瞬いたかと思うとバッと手に持っていたものを背後に押し込んでこちらを見上げ直す。
    「ジャミル!? なんで!」
    目が覚めたばかりにしてはハキハキとして通る良い声だ。これなら朝一番の仕事も滞りなく進められるだろう。
    「なんでって、お前が起きてこないから呼びに来た」
    カリムが慌てた様子で時計を確認する。時刻は予定していた起床時間から10分ほどあと。寝坊と言えば寝坊だが、元々30分は余裕を見ているから問題ない範囲である。
    「でも、えっジャミルは外で待ってるんじゃ」
    いつもなら多少の遅刻ぐらいでカリムを起こしに来ない。先にスマホへ連絡を入れ、侍女を介して部屋を訪ねることを伝えてからだ。カリムはあまり寝坊する方でもないし、スマホを鳴らせばだいたい起きてくる。学生時代ならともかく実家に戻ってからはカリムを起こしに来たことなんてない。今日が初めてだ。
    「お前、スマホの充電忘れてたろ」
    テーブルに置きっぱなしになっていたスマホを掲げて見せるとカリムがバツの悪そうな顔をする。カリムのスマホは最新機種だから1日ぐらい充電を忘れても大丈夫だが、一昨日も充電を忘れていたのだろう。暗い画面から動かない機械を一応充電器に挿してやる。出かけるまでにはそこそこ使えるようになってるだろう。
    「でも、いつもは」
    「今日は朝からトラブルがあったらしくて屋敷のなかがバタバタしてんだよ。部屋に入る許可ももらってる、口頭でだけどな。それより」
    じっとカリムの手元を見る。
    さっき必死に隠したそれは、頑張って両手で覆っていてもなんとなくカリムからはみ出していた。
    「なに隠したんだよ」
    口角が上がったのが分かった。
    たのしい、なんて感情に出し過ぎたら拗ねるから良くないと分かっていても、抑えきれない。
    背後に回り込もうとするとカリムが身体の位置をずらした。隠してるつもりのものをぎゅっと後ろ手で抱えたまま、背後を取られないようにくるくる回る。
    「な、なにも隠してない。支度するから外で待っててくれ」
    「別にここにいていいだろ。学生時代は全部俺が世話してたんだから」
    「いや、そー……でもさあ」
    渋るカリムを無視してベッドへと腰掛ける。身体を近づけると、ずずっと後ずさられた。
    「諦めろ」
    「えっ ふっふぁ、待ってく……あはは!」
    がら空きになった両脇をくすぐる。防ぎたいのに両手がふさがっているせいで身体を捩らせて逃げようとするカリムの手から持っていたものが転がり落ちた。
    「あっ」
    カリムが手を伸ばすより早く拾い上げる。
    大きめのぬいぐるみ。バスケ部で遊びに行ったとき、柄にもなくクレーンゲームで盛り上がってしまったときに取ったやつ。
    大半は寮内で欲しがってるやつに渡したが、一部カリムが引き取ったやつもある。これはその中でも「目つきがジャミルに似てる気がする!」とか言ってカリムが気に入っていたぬいぐるみだ。俺が見ても似てるところなんてわからないがカリムのなかではなにか繋がるところがあるらしい。
    「俺があげたぬいぐるみなんだ。隠すことないだろ」
    「……ジャミル、笑ってる」
    指摘されて思わず噴き出した。
    「だってお前、ぬいぐるみ抱えて寝てるとか」
    しかも俺があげたやつ。
    俺に似てるって言ってたやつ。
    「寂しいなら言ってくれれば一緒に寝てやったのに」
    「た、たまたまだからなっ」
    「たまたま! まあそういうことにしておいてやるよ。カリムも大人だもんな。もう俺が添い寝してやらなくても寝れるよな」
    朱く染まった頬を存分にふくれさせて、不満そうにこちらを見ていたカリムが、むーっと唸ったかと思うとぬいぐるみを奪い取ってポカポカとアタックを繰り返しはじめた。
    「痛いって」
    形だけの防御をして、笑い声を上げる。楽しくなってきたのかカリムもだんだん笑い声をあげ始めた。ふたりして大声でぬいぐるみを奪い合って攻防を繰り返してると、外からノック音がした。
    「カリム様は起きられましたか?」
    ドアを開けるとカリム部屋付きの侍女が立っていた。
    「えぇ、朝から騒がしくしてすみません」
    形だけの謝罪を述べる。
    彼女は俺を見上げて、さっきカリムから奪い取ったぬいぐるみを見、にっこりと微笑んだ。
    「相変わらず仲がいいこと。朝食の用意が完了しておりますとお伝えください」
    「かしこまりました」
    普段と何一つ変わらない作法で侍女が深々と頭を下げて扉が閉める。
    振り返ると、流石に頭が冷えたのか、カリムがベッドから飛び降り、用意されていた服へと着替えていた。
    「早くしないとほんとに遅刻するぞ」
    煽るとカリムがいっしゅんだけ不満げな視線をよこした。
    「分かってる。あー……ぬいぐるみはソファに置いてくれ。いつもはそこにいるんだ」
    「仲良しだな」
    少し考えてからぬいぐるみをソファの真ん中に置いて、カリムの元に戻る。服のしわを直してやって、朝の支度を手伝う。
    「そういえばトラブルってなんだったんだ? もう落ち着いたのかな」
    「さあな。あとで確認したらどうだ」
    腕時計に視線を落とす。ぎりぎり、遅刻はしないで済みそうだ。
    洗顔を終えたカリムの顔に化粧水を塗り込んでやる。導入美容液から始まるいくつもの液体をひとつひとつ順番通りにカリムの肌に叩きこむ。ここまで来るとカリムもされるがままだ。
    化粧を施し、寝癖を直してやる。完璧な次期当主様が完成して、いったん引いて全身を見て、間違いないと確認をする。
    「ありがとう、ジャミル」
    「どういたしまして」
    連れ立って部屋から出ると、侍女は外で待機していたようで、カリムへ深々とお辞儀をした。いつもと変わらない澄ました横顔を見ながら朝のやり取りを思い出し、敵わないなと笑みをこぼした。

    「ジャミル。今日はカリム様を起こしてあげるといいわ。最近、かわいいことになっているのよ?」
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