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    ちあり

    普段は素敵作家様の素敵鯉月を貪っています。
    たまに鯉月界の底辺で文字を打っています。
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    ちあり

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    学パロ鯉月です。
    幼馴染の設定です。
    バレンタインの小話で、短いです。

    #鯉月
    Koito/Tsukishima

    ハートの行方(どうしよう……)

    月島の手の中には、きれいにラッピングされた小箱がある。
    どう見ても手作りの、明らかに本命のそれは、大した重さはないはずなのに月島にはとても重く感じられた。
    鯉登と帰る途中、忘れ物を取りに戻った放課後の教室。
    同じクラスの女子が鯉登の机にチョコを入れているのを、月島は偶然見てしまった。
    女子が足早に去っていった後、教室に入った月島は真っ直ぐに鯉登の机に向かった。
    そして鯉登が誰かのモノになって欲しくないと、衝動的に机から小箱を抜き取ってしまったのだ。
    ゴミ箱に捨てる訳にはいかず、かといってぺたんこの学生カバンには収まりそうにもない。
    元に戻すのが一番いいと分かってはいるものの、月島の体は石になったように動かなかった。

    (俺には彼女の想いを無下にする権利はないのに)

    現在の幼なじみという気の置けない関係が壊れるのを恐れ、月島は鯉登に想いを告げることができない。
    それなのに自分以外の誰かが鯉登の一番近くにいるのを嫌がるのは、我儘でしかないというのは分かっていた。

    (でもアイツは今日誰のチョコも受け取ってなかったし、このチョコもいらないって言うかもしれない)

    都合よく考えようとするも、勇気の塊のような小箱は月島にとって恐怖でしかなかった。
    期待と恐れから一歩も動けずにいると、カラカラと扉が開く音が聞こえてきた。

    「基? 忘れ物は見つからなかったのか?」
    「音……」
    「ん? なんだ、その箱は?」
    「これは、その……」

    怪訝な顔で聞いてくる鯉登に、月島はこれが何なのか正直に答えられなかった。

    「まさか、誰かに本命チョコを貰ったのか」
    「……はぁ?」

    月島が箱を持っていたために、鯉登は月島が本命チョコを貰ったのだと勘違いしていた。

    「だっ誰なんだ クラスの女子か? 部活のマネージャーか? まさか先生か」
    「違っ……!」
    「おいを差し置いて基に本命チョコを渡すなど百年早いわ」
    「何を言ってんだよ、音!」
    「基はオイんもんなのに」
    「えっ?」
    「あっ……」

    さっきまで鯉登の大声で騒がしかった教室が、しんと静まり返った。
    鯉登はしまったという顔をして口に手を当て、月島から目をそらした。
    一方月島は、鯉登の発言で期待に手を震わせていた。

    「『オイんもん』ってどういう意味だよ、音」
    「……そのままの意味だ」

    意を決したように、鯉登は口から手を離して月島を見た。

    「そのままって?」
    「オイは小さいときからずっと、基が……。基が、好き、だったから、」
    「どういう意味で」
    「っ、はじめ?」

    月島は鯉登の肩を掴み、泣きそうな顔で鯉登を見た。
    月島の手を離れた小箱は、二人の足元にポトリと落ちた。

    「音が今日一日誰からもチョコを受け取らなかったことを、俺は都合よく解釈していいのか?」
    「はじめ……」

    鯉登は肩を掴んでいる月島の手を取ると、自分より一回小さなそれをぎゅっと握りしめた。

    「基、オイと付き合いたもんせ」

    にっこり笑ったその顔が今まで見たどの顔より幸せそうで、月島の胸がキュンと高鳴った。

    「こっちこそ、今日から宜しくお願いします」

    一歩踏み出した二人の関係を、足元の小箱が寂しそうに見つめていた。
    小箱が落ちた時、あの子の勇気が砕け散ったような気がした。

    (ごめんな、音はあげられない)

    月島は小箱を拾うと、持ち主の机にそっと返した。

    「基? 何をしてるんだ?」
    「持ち主に返してるんだよ。貰わないってことでいいんだろ?」
    「あぁ」

    明日の彼女のことを思うと少し胸は痛んだが、それ以上の優越感が月島を満たしていた。

    「結局忘れ物はあったのか?」
    「多分机の中に……あった」

    月島が持って帰るはずだったノートは、確かに机の中にあった。

    (これを忘れなければ、今も俺たちはただの幼馴染だったんだな)

    二人のキューピットになったノートを丁寧に鞄にしまい、月島は鯉登の方に向き直した。

    「じゃあ帰るか」
    「うん」

    どちらからともなく手を繋ぎ、二人は教室を後にした。
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    DOODLE鯉月。
    すけべなワードを使わずにスケベを書く回
    ギッと硬く閉じた目蓋が熱い何かを感じて震えた。なんだろう、と枕を握りしめていた片手で目を擦ればその熱い滴は乾いた指先に吸い込むようにして消えた。荒い息を短くハッハッと吐き出しながら両眼を開けると、そこには己に覆い被さる褐色の肉体が西洋の彫刻か何かみたいに美しくそこにあって自分の目蓋に落ちてきたのはその体から落ちてきたのは汗の一雫だったらしい。部屋の隅に放られた二人分の浴衣が視界の端でくしゃくしゃになっているのが見える。もう二人、長いこと一矢纏わぬ姿で体を重ねている。枕を握っていた手はもう力が入らず、見上げた雄が動くのと同時に口からはあられもない声がひっきりなしにこぼれ落ちる。堪えるのはもう、とうの昔に諦めた。胎奥を抉る動きに息を飲む。ぽた、ぽた、と落ちる彼の汗の刺激にも感じてしまう。持ち上げられた両足はぷらぷらと、持ち主の意思などまるで知らぬとでも言うかのように空を力なく切るばかり。若い雄は獣のように。荒い呼吸、滴る汗、体温で水蒸気が上がっているようにも見える。ふぅふぅと呼吸をして欲に忠実に腰を動かす彼に、おずおずと両の手を差し出してみた。枕以外に、すがるものが欲しかった。こちらの意図に気付いたのか、見上げた獣は口元だけで微笑んで体を近づけてくれた。その背に、腕を回す。掴まれるものにホッとする。手が汗で滑らないように爪を立ててしがみつくと、それを喜ぶように彼は律動を再開した。上がる嬌声は己のものとは思いたくない、耳を塞ぎたくなるような甘ったれたいやらしいものであったが、耳を塞ぐよりもその背にすがりついていたい気持ちが勝り、結局は事後に後悔するほどその背に傷をつけてしまうのだった。謝罪を繰り返す自分に、広い背中を晒して彼は「箔がついたというものだろう」と誇らしげに言うので、その背の肉をえぐった指先をじっとみつめては顔に集まってくる熱を散らす術をもたず、様々な体液でどろどろの布団に包まって逃げることしか出来ないのであった。
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