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    teira02

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    teira02

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    俺設定強火のスマブラ日常記、捏造設定しかない。
    今回はマスターハンドとマリオの週課である報告シーン。
    色々と大まかな濃い設定を持っているマルスとリンクとロイに焦点を合わせていますが、一番改変が強いのはマリオです。
    擬人化マスターハンドなのでご注意。

    ちなみにリック=トワイライトリンクです。

    #スマブラ
    smashBros.

    「マリオ、今日は随分お疲れだね」
    紺のスーツの袖が視界の端に揺れる。
    丁寧に嵌めた手袋には仄かに微熱を漂わせるカップが握られていて、彼はそれを机に突っ伏したマリオの前に置いた。
    「…コーヒーか、サンキュ。マスター」
    気に入っている豆の匂いで直ぐ顔を上げ、啜る。
    熱いのは好きだ。
    炎の魔力を多大に抱えている所為か、マリオは熱にとことん強かった。
    「君は熱い方が好きだろうから、存分に沸かしたよ」
    「その調子で他のファイター達もちゃんと労い続けてくれ」
    苦言をさらりと零すが、マスターは華奢な肩を竦めて人好きのする平々凡々とした顔を困らせる。
    右手の手袋を弄って、参ったなぁと目玉で語った。
    「何かあったのかい?問題が深刻じゃない場合、報告は事後でも良いとは言ったけれど君がそれで疲労しては意味が無いよ」
    「あんたにとっては換えが利かない最初のフィギュアだからな」
    「そんな言い方は冷たいなぁ。世界を保つ為に手を取り合う無二の関係じゃないか」
    「俺はあんたに一方的に呼び出されただけで、際限無く広める世界の為に仕方なく付き合ってるんだよ。勘違いすんな、マッドサイエンティスト」
    「何十年経っても変わらないねぇ、そんな所が信頼出来るのさ」
    「何十年って程でも無ぇだろ、精々二十年くらいだ」
    「でも、充分な時間だ」
    「ったく。神様ってもんは何処もどっか欠けてて気持ち悪いぜ」
    「安心してくれ、君達の世界と僕は違うよ」
    「へぇへぇ。何度も聞きました」
    気付くと、コーヒーはすっかり無くなっていた。
    温度が心地好くて、思いの外、喉が進んだらしい。
    熱を取り入れたからか、僅かに疲れも取れた気がした。
    コーヒーの香りが苛立ちも和らげて、マスターに諸々把握されている事もこればかりは悪くないとさえ思える。
    「それで?取り敢えず報告に来たんだろうし、聞こうか」
    「優先順位を付けて報告する。マルスの体調が良くねぇ。ロイが心配して頻繁に訪れてたが、短時間で消耗が激しいと俺に訴えて来た。調べたら案の定、『リミット』が開始してる。今は停滞剤を打って幾分落ち着いているし、数日もすれば快気するだろうが、マルス自身でも剥離の前兆が分からなくなってるらしい。下手をすると手遅れになる可能性があるから、早急に定期的な診察を出来る様に手筈を整えておいてくれ」
    「分かった。…やはりマルスはかなり気を付けないと駄目だね。一昨日の連戦が響いたのか、それとも純粋に体質が進行しているのか」
    「それを調べるのが俺とあんたの役目だろ。わざわざ薄水色の医師服まで着せやがって」
    「白衣が着れないからね、君は」
    「医者としての役割がデカ過ぎるっつってんだよ」
    「まぁまぁ。他に適任も少ないし、マルスに関してはほぼ君が主治医だ。仕方ないと思ってくれ」
    「仕方ない事ばかりじゃねぇか…くそ。えーと、次は台所の配管が多分バグってる。水が出ない蛇口が複数あって、調べたらドット化して崩れてた。あのままだと感染してウイルス化しちまうかもしんねぇし、とっとと駆除しといてくれ。後、地味に飯が作り辛い」
    「あー、クレイジーの置き土産かな。相変わらず地味に嫌な所へ仕込んでいくねぇ」
    「そもそも侵入させんなよ、あいつは俺達を破壊して愉しむ事しか頭にねぇんだぞ。個人の部屋はもっとセキュリティが高いとは言え、宿舎に入った実績作っちまったらこっからモード上げても時間稼ぎにしかならねぇんだが」
    「あぁ、大丈夫。僕も君達の生活環境にまであいつを入れたくないからね。そもそもの基盤コードを書き換えてセキュリティも一新するよ。使い勝手や見た目は変わらないから、いつも通りに過ごしてくれ」
    「ま、バグ取りが先決だけどな。この前、ヨッシーがカレー作ろうとして蛇口捻ったら水じゃなくてカレーが出て来て大変だったしよ」
    「それは結果オーライじゃないかい?」
    「オーライじゃねぇよ、中の配管が繋がって全部の蛇口からカレーが出てポンプの給水も出来なかったんぞ。コラ」
    「僕は分かってるよーポポとナナやリュカに何とかして貰っただろ?」
    「させんなよ!そもそも!」
    「分かった分かった。その口振りだと昨日かな、皆のヘイトを買い方としては情けないから流石に秒で直すよ」
    「あー、後は…ま、わりとどうでもいいけど。ソラの招待状が受理されたらしい」
    「どうでもよくないよ!?」
    「いや、もう俺からしたら何が来ても同じ。どんな壁でもぶち破って欲しい命を連れて来るのがてめぇだろ」
    「酷い言い方だなぁ、無作為に選ばないだけマシだろう?」
    「大差無ぇな。召喚のタイミングはあんたが握ってるからな、もう俺の仕事増やすなよ」
    「彼はかなり時空に影響を与えている子だからねぇ、慎重どころか全身全霊で集中しないと大変な場面を切り取りそうだ」
    「ハートレスで召喚したらぶっ殺すからな」
    「そうしてくれ、君には神殺しの資格があるよ」
    「無かったらこんな事、付き合ってねぇよクソが」
    「うん、分かっているよ。…以上かな?」
    「ま、後は細々した事だ。フォックスと擦り合わせてくれ」
    「分かった。あぁ、リックの様子は大丈夫そうかな」
    「トワイライトの症状は最近出てねぇな。ちゃんと薬が効いてるとは思うんだが、まぁてめぇがミドナをそっちに配置して調整してるのもあるだろ」
    「ミドナの居住をあそこにして悪いとは思うけどね、やはりメインファイターの健康が大事だから」
    「ま、理解してるし進んでやってる事だから俺は別に良いけどな。…たまに獣化して会いに行ってるらしいし」
    「あ、それは把握してるから気にしないで」
    「それ、絶対リックに言うなよ」
    「トワイライトリンクは恐ろしい程に他人を想う優し過ぎる子だからね、言わないさ」
    「精神的にも爆弾抱えさせたら、症状が出た時に深刻化が早くなる。変なストレス与えんじゃねぇぞ」
    「勿論。ロイも順調そうだね」
    「時々本来の記憶の混合で黙ったりするが、錯乱は無くなった。まあ、十年近くもよく耐えてるよあいつは。今でも『スマブラのロイ』として在る事は奇跡的なんじゃねぇか」
    「そうだね。書き換えるのは簡単だけど、それは僕が召喚してしまった『産まれる前のロイ』を殺すも同意だ。彼には健やかで居て欲しいね」
    「…俺が診てる奴等は、全員あんたが原因なんだがな」
    「当然だよ、僕が原因で無ければ世界の管轄権が増えてる事になってしまう。神様は二人も要らないよ」
    「不完全な神様で苦労してんのは俺達なんだけどな」
    「まぁまぁ、配管は直ったから取り敢えず溜飲を下げてくれよ」
    「はぁー…。わざわざ床下入った俺が馬鹿みたいだぜ」
    「配管工として正しい姿だろう?英雄としてのマリオでは無く、本来のマリオだ。僕はそんな君で居て欲しいけどね」
    「無理だな。俺は生まれ付きの英雄で、そんな俺を召喚に選んだのがあんただ。今更日常をただ謳歌するのはこの世界の誰にも出来ない」
    「うん、世界が成り立っているのは君達の素晴らしい乱闘があるからだ。多次元がそれによって認知するからこそ、このスマッシュワールドは保たれているのだから」
    「他人から認識させないと成立しない世界ってそもそもが曖昧過ぎるだろ」
    「成功してしまったから仕方ないね。後は広げて、繁栄させて、大きくして、賑やかになって僕の自己満足をひたすら繰り返すだけさ」
    「ソラも召喚が可能になったし、色々と下調べしねぇとなぁ…」
    「ここまで長かったし、君も色々最低限把握はしているだろう?」
    「ここに来る奴は本来の存在とは変わる自己を持ってたりするだろ。まぁ、あんたの召喚がどの時間を切り取るかによるから知らねぇけどよ。好きな食べ物とか、環境とかきちんと聞かないと答え合わせにならないだろ」
    「うん。君は本当に最高の英雄だね、ヒーロー」
    「は?当然の事を今更何言ってんだ?それ、褒め言葉にならねぇって学習しろ」
    「他に言葉が見当たらないものでね。…さて、じゃあ仕事も増えたしこのくらいで良いかな」
    「あー。後、リンクがまた行方不明だから適当に探してくれ」
    「なんで早く言わないの!!」
    「うっせぇな、あいつがマスターソードで時間旅行すんなんていつもの事だろ」
    「この世界の歴史はまだ浅いの!二十年くらいしか無いの!しかも彼は初期から居るのに!何を!何処を!見たいの!」
    「知らねぇよ、あいつにしか分からん事もあんだろ」
    「まったく…また初期時間から虱潰しか…。まぁ、勝手に帰って来そうだけど…」
    「あ、スカイリンクも連れてってたぞ」
    「早く言って!?彼は本当に駄目だから!!時間作用がオカリナリンクよりも強いから!」
    「へっ、たまには神様らしい仕事に勤しめ。ごっそーさん」
    「マ、マリオ!手伝って!スカイリンクが関わってたらほぼ何処のエリアにも行けちゃう!」
    「それ、俺も知らねぇとこに居るかもって事だろ?協力出来ねぇな、てめぇの仕事はてめぇでしろ。俺はやった、それだけだ」
    「ぐぬぬ…君はやはり意地が悪い」
    「ハッ!英雄様の機嫌を最初しか取れない神様には似合いだろ。んじゃな、来週は紅茶にしてくれ」
    言って、指を鳴らす。
    マリオの退出コードを認知した部屋が、彼をデータ化させ、フィギュアの体と共に本来の居住区エリアに戻してしまった。
    モニターでそれを確認しながら、マスターは大きく溜息を吐く。
    「はぁ。まぁ、全てが正論だ。流石と言うか、憐れと言うか」
    英雄として生まれたからこその、決して抜けない性善。
    だからマスターは、彼を最初の命として選んだのに、マリオはそれを責めない。
    「可愛いね、我がファイター達は。それを彼はよく教えてくれるから、助かるよ」
    摩耗しない様に、人らしくある様に。
    マスターはただの人間から電子世界の神様になる事を選んだのだから。
    退屈してはいけない、愛おしく思わなければならない。
    それを、忘れる事が無い様に。
    彼はいつでも全てのファイターを付かず離れず見守っている。
    「さて、リンク達を探すか。…まぁ、間違いなく、あそこかな」
    機材のダイヤルを回すと、案の定、二人の面影が見えた。
    装置化出来ずに打ち捨ててしまった、妖精の森。
    彼等は少し特別で、電子世界の時間にも干渉出来る。
    特に原初のスカイリンクは、マスターソードとの相性が良過ぎて時間旅行もダストボックスへの侵入も容易く出来る。
    コントロールを事実タイムリープしたオカリナリンクが握っているのだから余計に安全ではあるが。
    「あまり、本来の世界を思い出して過去にして欲しくはないからなぁ」
    悪いとは思いつつ、キーボードで原始的にコードを打ち込んだ。
    二人のリンクは強制的に体が電子化して、ゆっくりと正規の世界に連れ戻されて行く。
    その時、オカリナリンクと目が合った気がして。
    「怖い顔するなよ。時間軸は毛細血管の如く広がっているんだ、バッドエンドを全て潰すなんて神様だからこそ出来ないのさ」
    エンターを押すと、二人は完全に消えていた。
    侵入ブロックを強く設定し直して、暫くは介入出来ない様にしておく。
    ほんの少しだが記憶にも影響が出て、足が遠のくだろう。
    このスマッシュワールドはどんどん不完全になっていく。
    フィギュアに宿る意識が増える度に広くなって大きくなって、だからこその矛盾点がバグになる。
    『それ』から、クレイジーは力を取り込む。
    この世界線はまだ平穏だ、誰も欠けていないのだから。
    「神様でも分かんない事、沢山あるんだ。ごめんよ、リンク」
    だから、君達が乗り越えて欲しいなんて、我儘でしかないのかもしれないけれど。
    「…じゃ、お仕事しますか」
    右手の手袋を取って、キーボードに触れる。
    部屋が暗転して、輪郭を失って、宇宙に漂う果て無い闇に彼は一人、一つ一つ、丁寧に世界を想像し、創造する。
    マスターハンドの右手には、今日も世界への、ファイター達への愛が、込められていた。
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