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    minegiku

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    minegiku

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    雨が激しく降る日は大概悪夢を見る。シエルが亡くなる日の夢だ。俺はいつも情けなく泣いている。シエルを抱き柄にもなく声を上げながら。そして世界が暗転し闇に包まれていく。それからここが現実なのか暗転した世界なのかすらも分からずぼんやりと目を醒す。頭の中まで広がる鈍痛と体中汗でびっしょりとなる自身に、いつまでもあの光景がこびりつき考えしまう頭に、つくづく嫌気がさした。もちろん、シエルを忘れたい訳では無いが、あの出来事は相当堪えたのだ。そして、虚ろな眼を向けながら外に出る。雨はいつも俺の体に当たる度に、刃の如く鋭く痛みを感じさせる。まるで、シエルが痛みを訴えているのかと感じる。あの時俺がもっと早く見つけてやれば、シエルを死なせずに済んだかもしれない…ステラを1人にすることもなかっただろう…そもそもあの時に呼び出さなければ…雨の降りしきる中思いを馳せることしか出来ない自分に腹が立つ。強く握りしめた拳はいつしか、爪が食い込むくらいに握られ、うっすらと血が滲み出す。自分の行いは許されるものじゃないことは自分が1番よく分かっている。自分の罪をこの雨に懺悔していると目の前が少し陰り、バタバタという音が耳に入る。途端に冷たく痛い程降りしきっていた雨がパタリと止んだ。重たく下を向いていた顔を上げると黒色の傘が見える。

    「…風邪、引いちゃいますよ?」

    落ち着いた俺を諭すような声。ゆっくりと振り返ると優しく微笑みながら傘を差し出してくれている、ルナの姿を見た途端に一気に現実に引き戻される。感じなかった冷たさが肌を通して感じ始め、体が冷えていることに気付いた。その冷えた体に優しく触れ、俺の手を握るルナ。俺よりも何倍も細いというのに俺よりも力強い暖かな手に目頭が熱くなるのがわかった。こんなにも涙腺が緩くなっていたものだろうか…困ったように少しだけ眉を下げると、ルナも小首を傾げて眉を下げている。この状況がおかしく思えた俺の頬が綻ぶ。その瞬間にルナも同じように微笑み返してくれる。ああ…本当に愛おしいな、ルナは。添えられた手にそっと触れるだけのキスを落とすとルナの手はピクリと震えていたが、俺は構わず告げた。

    「……愛しているぞ、ルナ」

    見る見るうちに耳の先まで真っ赤にして口をわなわなと動かしている。その可愛らしく反応しているルナの手を握り返し、家の中へと戻る。その間も湯気が上がりそうなほどのルナを本当に愛おしく思うとある雨の日だった。
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    minegiku

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    雨が激しく降る日は大概悪夢を見る。シエルが亡くなる日の夢だ。俺はいつも情けなく泣いている。シエルを抱き柄にもなく声を上げながら。そして世界が暗転し闇に包まれていく。それからここが現実なのか暗転した世界なのかすらも分からずぼんやりと目を醒す。頭の中まで広がる鈍痛と体中汗でびっしょりとなる自身に、いつまでもあの光景がこびりつき考えしまう頭に、つくづく嫌気がさした。もちろん、シエルを忘れたい訳では無いが、あの出来事は相当堪えたのだ。そして、虚ろな眼を向けながら外に出る。雨はいつも俺の体に当たる度に、刃の如く鋭く痛みを感じさせる。まるで、シエルが痛みを訴えているのかと感じる。あの時俺がもっと早く見つけてやれば、シエルを死なせずに済んだかもしれない…ステラを1人にすることもなかっただろう…そもそもあの時に呼び出さなければ…雨の降りしきる中思いを馳せることしか出来ない自分に腹が立つ。強く握りしめた拳はいつしか、爪が食い込むくらいに握られ、うっすらと血が滲み出す。自分の行いは許されるものじゃないことは自分が1番よく分かっている。自分の罪をこの雨に懺悔していると目の前が少し陰り、バタバタという音が耳に入る。途端に冷たく痛い程降りしきっていた雨がパタリと止んだ。重たく下を向いていた顔を上げると黒色の傘が見える。
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