来世は他人だった 見間違いではなかった。髪は短いし、ファッションもパーカーにジーンズと些か過去のイメージと異なるものではあったが、その姿は確かに千寿郎そのものだった。歌う青年の傍ら、俯き気味にアコースティックギターを鳴らす。オリジナルの楽曲なのだろうか、聴いたことがないそれはどこかロック調で、本当はエレキギターを掻き鳴らしたいのではないかと思った。
出張先、いつもと違う街、いつもと違う駅。偶然に偶然が重なって訪れたこの駅前に、前世で俺の弟だったあの子がいた。
「あっ、お久しぶりです」
左手を軽く振れば、千寿郎も応えるように小さく手を振ってくれる。俺は二人の前に置かれたギターケースに二千円を入れると、少し離れたところから演奏を見守った。
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