同窓会で再会したくにひろとちょうぎの話大学4年の国広の元に高校の同窓会があると知らせが来た。参加するか悩んだ国広だったが、同じクラスで片思いしていた長義が来ると聞いてちょっと期待を込めて参加してみることにした。
同窓会当日。席は離れてしまったが長義は相変わらず美しく、高校時代と変わってないことに安心した。食事をしながらチラチラと長義を見る。特に視線が合うこともなく、酒も入ってみんなほろ酔い状態になったところで、長義が酔いつぶれていることに気付く。(酒、弱いんだな)と思っていたら「誰か送って行ってあげた方がいいと思う」という話になった。長義は「ひとりで帰れる…」とフラフラと立ち上がる。危なっかしくて見ていられなくなった国広は思わず立ち上がって「俺が送ろう。車で来ているんだ」と声を上げてしまった。
正直高校の時にそこまで接点があったわけじゃない。一方的に見ていただけなので、こういう時に家まで送り届ける仲ではないと思う。そもそも国広は長義の家を知らない。しかし言い出してしまったため後には引けず、長義を支えながら「今日は、楽しかった」とあいさつして同窓会を後にした。
車の後部座席に長義を寝かせて車に乗り込む。カーナビを操作してようやく長義の家を知らないことを思い出した国広。どうしたものか、と悩んだ結果、しょうがないので自分の家に泊まらせることにした。「…あんたは寝ているから聞いてないだろうが…俺は初めてあんたを見た時から、ずっと好きだったんだ」車を運転しながらぽつぽつと言葉を漏らす。「…綺麗だと思った。だが俺がそんなことを言ったところであんたは迷惑だろうと、違う大学に進学したことだからと、この想いを忘れようと思ったのに……
忘れられなかったんだ」車で来たことだって、もしかしたら、を期待したのかもしれない。国広は自嘲した。寝息しか聞こえないので絶対に聞いてないだろう。目が醒めて国広の家だったら嫌な顔をするだろう。でも、これはしかたがないんだ。そう自分に言い聞かせた。マンションに到着して、すっかり寝ている長義の身体を支えながら自分の部屋に入る。上着を脱がせて長義をベッドに寝かせた。綺麗な寝顔をぼーっと見ながら「…ああ、やっぱり、俺はあんたが好きだ」と呟くと、そこで国広の意識が途切れた。
(これは夢じゃないだろうか)
実はこれは自分が酔いつぶれて見た都合のいい夢かもしれない。そうでなければあの美しい男が自分の部屋にいるわけがない。手が届かない高嶺の花。
気が付けばすっかり外は明るくなっており、スマホの画面は11時半を示していた。寝すぎた…と起き上がると「お寝坊さんだね」という声。慌てて起き上がると、隣には長義がいて国広を見下ろしている。夢じゃなかった。怒っている様子はなく、寝起きでぼーっとしている国広を見てくすくす笑っている。だんだんと意識が覚醒してきた国広は慌てて長義から距離をとる。「す、すまない!昨日、あんたを送り届けようと思ったんだが、家を、知らなくて…その…」もごもごしていると「知っているよ」と一言。「…怒ってないのか?」「何故怒る必要が?お前はただ善意でそうしただけだろう」「それ、は…」「それとも」長義は意地悪く笑った。「ずっと好意を寄せていた相手を持ち帰って、何かを期待していた、のかな?」「………へ」「俺としては、あんなぼそぼそした独り言ではなく、ちゃんと伝えて欲しかったんだけれどね。不可寄りの可、といったところかな」「…え、待ってくれ、ちょ、なん、で……」「このむっつりめ」「……!」国広はキャパシティーがオーバーしてしまい布団に倒れ込んだ。長義はそれを見て腹を抱えて笑うし、布団に引きこもった国広を無理矢理引きずり出す。ほぼ強引に連絡先を交換したし、来週デートする約束もした。