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    たけち

    @tk_3cr

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    たけち

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    続き書くの面倒臭くなったクザスパ予定だったもの

     スパンダムがそう言う意味で自分自身に価値があると理解したのは、十を少しばかり過ぎた歳の頃だった。
     父親の職業柄結構な地位や権力を持った大人達の中で育ってきたせいか、目上の者に対する接し方は年齢に似つかわしくないほどに随分と熟れていた。
    「出世するには何よりも人脈が大事だ、コネクションは必用だぞ」と父の言葉通り、『じんみゃく』も『こねくしょん』もその意味もよく分からない幼い頃から、連れられていった社交場では高い地位や強い権力を持っていそうな相手に愛想を振りまき、スパンダムは大人達からよく可愛がられていた。
     そんな幼少期を過ごしていたので、彼らからまるで家族のように距離が近くやたらと頭を撫でられたり抱き上げられたり膝の上に乗せられたりとスキンシップが多かったのも、幼い子に対する庇護欲のような、あるいは多少小賢しくはあるが人懐こい子供として大人達に構われているのだと思っていた。

    「ねえ君、そういうの、ちゃんと使わなきゃダメよ」
     彼女はスパンダムにそう言った。
     その日の会場に居たどの女よりも煌びやかで優雅で美しかった女は、ゲストの誰かが連れていたいわゆる高級娼婦という職の従事者だった。そういった道のプロである彼女からすれば、やたらと愛想の良い子供の考えもその周囲の大人達の思惑も明け透けに見えていて、少しだけ心配になったのだと随分と後になって笑って話していた。
    「自分がどう見られているか、どうしたいのか、ちゃんと知っておかないと大損よ」
     セクシーなドレス姿でしゃがみ込み、子供に目線を合わせてニコリと笑った彼女は、辺りに振りまいていた妖艶さからはほど遠い、どこにでも居そうな普通の女の顔をしていた。
     それから他の社交場で合うたび彼女から教えて貰ったのは、近しくなっても良い相手と悪い相手の見極め方、距離の取り方、会話と駆け引きのバランス、おねだりの手口等スパンダムの将来的にも役立ちそうな事を色々と。
     自身の価値を正しく認識させて、使いどころを教えて……そして、最後に夜の作法。
     初めての相手は彼女ご推薦の閣下と敬称の付く壮年の官吏で、紳士的で手慣れたチュートリアルとして最適な男だった。ちなみに彼女も一緒だったので女の扱い方も同時に手解きを受けた。
     彼女の「教育」のおかげで着々と経験を積んで、スパンダムが父と同じく世界政府の一員となる頃には中々の上質な人脈やコネクションが形成されつつあった。


     温めのシャワーで汗を流した後も、身体の気怠さは残っている。それは不快なものではなくどちらかと言えば心地好い疲労で、有り体に言えば一仕事終えた達成感というやつだ。
     ちょっとした充足を感じつつバスルームから部屋に戻れば、ベッドに座る男が吸っていたタバコを手の中で握り消して細かな氷の破片に変えているところだった。
    「便利ですね、それ」
     水の滴る髪をタオルで拭きつつ近くへ寄れば、まあねと返す長身の男はスパンダムをチラと見て少しだけ眉を寄せた。
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