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    nullpo_ne

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    鶴さんが、女装して情報屋してる奴

    メモ帳から出てきた女装鶴さんと源氏兄弟の話ハアと大きなため息が車内に響く、その様子に赤信号で停止し緑髪の青年が兄者と双子の兄に話しかけた。
    「気持ちは解るが、もう手段を選んでられんだろ」
    「まあ、それもそうだけどね……まさか、行き詰まるとは思わないじゃないか」
    猫のような印象をした金髪の青年が弟を見る、顔立ちは瓜二つだが柔らかい印象のせいなのか全く違った顔に見えた。
    弟が、信号を見据えて発進した。そのまま車は二人を乗せて郊外へと出る。ここからは見通しのいい真っ直ぐの道のせいか、車内では再び会話がはじまっていた。
    「それでどこまで話は進んだかな」
    「西園寺家の御令嬢が、ホテルの一室で失踪した、そして俺たちに依頼が来たんだ……」
    「そうそう、よりにもよって消えたホテルがうちの傘下だったんだよね」
    「ホテルに関しては調査が行ってるが肝心の御令嬢の人間関係だな」
    その弟の言葉に兄はそうだったあ、と車の座席にもたれ掛かった。調査はその人間関係を調べれば調べるほど彼女には恋人どころか友人、親戚、家族と一緒に暮らしていたはずなのに家族とも一年以上会話もなく、会社でも何をしてるのか解らないという異様な捜査状況であった。
    なので、兄弟は共通の友人を頼ることになったのだが、その友人というのがかなりの曲者だ。二人をして「人生でなるべくは関わりたく無い」という評価を下している。
    その友人の家は、郊外のかなり広めの屋敷だ。兄弟は兄弟でかなりの資産を持っており、屋敷自体には驚きは無いのだが、その友人との会話をしたくない、一緒の空気を吸いたくないという兄の方の態度に弟は少しばかり憂鬱だ。
    弟は弟で友人のことは変わってるとは思うがらいつも兄と喧嘩するのでいい印象は無い。
    屋敷前の守衛に話しかけ、機械の認証を突破してやって来た屋敷前にはメイドが控えているが、その真ん中に男性が立っている。スラッとしたモデルのような体型の彼は顔立ちもかなり整っており、召使いにしては存在感が有りすぎた。
    「燭台切、久しぶりだな」
    「髭切さん、膝丸さん、お久しぶりです」
    「相変わらず弟に出迎えさせるなんて、兄の風上にも置けないね」
    「鶴さんは多忙なんで」
    堂々たる態度で躊躇なく中へ入っていくがそれを止める使用人は居ない、後ろに秘書の燭台切が控えているせいなのは兄弟も理解していた。
    では応接間はこちらです、そう案内されるのだが髭切の眉間には深々とシワが寄せられていた。応接間の扉を燭台切が開ければ中に居たのは、フリルがふんだんに使われたドレスを着た麗人だった。
    「まあ、源氏の御二人様、ご無沙汰しております」
    ドレスの裾を広げて挨拶する姿に、膝丸は瞳から光が消えている。そして無言の兄に視線を送れば少しの間の後に「うええ、キッショい」と髭切が顔を歪めた。
    「あらあら、どうされました?途中で車酔いされたとか?」
    「あのさ、その喋り方やめてくれない?声まで作って本気で気持ち悪い」
    その言葉に麗人は美しく笑う、口角の角度、目を細める時のまつ毛の揺れすら感嘆の声が出そうな美しさだが、髭切は首まで鳥肌が出ている。
    「鶴はこの容貌と設定で売っておりますので、お仕事モードだと割り切って頂けますと嬉しいですわ」
    「絶対にヤダ!お前の本性知ってるのに知らないフリとか巫山戯てんの?斬るよ」
    「今の鶴に本性など御座いませんわ、髭切様、ではお仕事のお話を致しましょうか、光忠」
    「解ったよ、鶴さん」
    その言葉に、そばで控えていた光忠はアタッシュケースを用意してきた。さあどうぞとソファを勧められ、どっかり座る兄と訝しげに鶴丸を見る弟という構図になる。
    「今回はどんな品物をご入用で」
    「ハアーーー、あのさ」
    「はい」
    燭台切が置いたアタッシュケースを挟んで髭切は鶴丸をにらみつける。
    「僕らが来た用事を察せないほどお前は無能になったの?」
    その歯に着せぬ言葉で、鶴丸から表情が消えた。先程までの柔らかな令嬢の顔は成りを潜め、冷たい目で髭切を見るのだが逆に彼は上機嫌な顔をしている。
    だが、鶴丸は失礼しましたわ!と言いながら満面の笑みに戻った。
    「本当に察しが悪く、鶴は反省いたしましたわ★」
    「………」
    「西園寺憂様の件ですわよね、あのホテルは源氏グループの傘下企業、鶴のあにさまからもよく言い含められております」
    「燭台切、今すぐここに三日月呼んでよ、僕が直々にぶっ飛ばしたくなってきた」
    額に青筋を立てながらギラついた目で鶴丸を見る髭切に「キャッ★怖い」と瞳を潤ませた鶴丸が言葉を続ける。
    「髭切様、短気は損気、それに三日月お兄様が簡単にぶっ飛ばせたら鶴がしてますわ」
    「確かにそれは一理あるな」
    膝丸は、いつの間にか出されたコーヒーに礼を言いながらも深く頷いている。
    「兄者、コイツの自の性格の悪さは身内では飛び抜けている、このくらいがちょうどいいだろう」
    「うーーーん弟がそう言うなら、まあ仕方ないか」
    「西園寺様の情報でしたらこのアタッシュケースの中に御座いますが、今回は申し訳ないですが一切の値段交渉には応じません」
    「へえ」
    珍しい言葉に髭切は目を細めた、鶴丸の人格について信用していないが彼の仕事については兄弟揃って信頼だけはしていた。
    不真面目に見えて、やるべきことはきっちりやるタイプがここまで言うので髭切は弟にアレと言って手形を出させた。
    「ハイ、これを」
    「……よろしいのですか?今回に関しては鶴も責任を負いかねる部分がありますわ」
    「お前がそこまで言うならそうなんだろうけど、いくらでも買う、というのが僕達の答えだよ」
    「光忠」
    その言葉に、失礼と言いながら燭台切が受け取った後、そのまま小切手を返すと領収書を一枚添えてきた。
    「不確かな情報なので、値段は固定でお願いしたいな」
    「本当に何も無いんだね、この値段の情報なんて」
    「逆に言えば不自然ですわ、この方」
    「ふーん、じゃあさ、鶴丸の妄想で良いから推理が聞きたいなあ」
    別に料金を設定しても構わないよと付け加える髭切に、ニコリと微笑んだ鶴丸はではご相談料の基礎料金を追加致しますわねと言う。
    「推理というほどのものはございません、この憂様というお嬢さん、名家の令嬢にしては情報が少な過ぎるのです」
    「少なすぎねえ」
    「普通、まあ私や御二人が過ごしている世界の話ですが西園寺家くらいの家の規模でしたらば、何歳でどんな学校かとか、周囲の評判くらいは出ますがこの娘さんは一つもありません、もう生まれた瞬間から監禁されて育ったのかというくらいですわね」
    「………そこまで無いのも不自然過ぎる」
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