水溜り台風が通過した日の翌日、審神者を含めた留守番部隊は周囲の掃除や雨戸の撤去の行っていた。
どこから来たのかわからないゴミや、飛ばされてきた妙なものを回収している、大所帯ではあるが本丸も広いので皆で手分けするのはまぁ当然の事で、その後に集団から作業を見つけた者から次々に抜けていき、最終的に三日月宗近と鶴丸国永だけになった。
その集団の中にへし切長谷部でも居れば、目くじらを立てながらこいつらを二振にするな!などと引き剥がしたが、そんなことを言う者も居ないので、二振はどこか気安く話しながらそれでも周囲のゴミや濡れた落ち葉などを集めて袋の中に入れていた。
そんな作業をしていると、二振りしてうずうずしてくる、千年も刀をしているがどうしても気安い間柄であるとふざけたくもなるものでその時に動いたのは鶴丸国永ではなく三日月宗近だった。
いきなり走り出した三日月の後ろをそうこなくっちゃな!と鶴丸は追いかけた、本丸の庭部分は広いので二振りが駆けていく、速さ自慢の短刀には負けるがそれでも比較的大柄な体躯の人間が走るといきおいも凄まじいもので少しばかり先を走っていた三日月に鶴丸が追いついて来た、華奢ながら割と筋肉質な鶴丸の身体能力を見越してか三日月がその頑強さで妨害しようとするのを鶴丸がいなしていく、二振りは戯れの様な徒競走に夢中になり、目の間にいきなり水溜りが出現した時には面食らった顔をしたがそこは驚き好きな鶴丸が提案する。
「よし!三日月!この水溜りを最初に越えたら今日のおやつ時の茶を淹れてやるよ」
「ほう、では淹れてもらおうか!」
二振り同時に大きな水溜りの向こう側へと跳んだ、勢いをつけて片足が地面につこうとした瞬間、一番水深のある所に二振り揃って落下した。
「………………」
「…………………これは、その、引き分けにせんか」
「ああ、うん」
先程まで熱中していたおいかけっこを止めた二振りは案の定、加州清光に見つかってしまう。
「もー!三日月も鶴丸も何やってんの!ドロドロじゃん、燭台切!そっちのおじいちゃん達どうにかして!」
「えっどうしたのって!鶴さん!そんなに着物泥だらけにして、三日月さんもびしょびしょじゃないか!作業終わったからお風呂に入ってね」
いたずらが見つかった猫よろしく、燭台切光忠によって風呂場へ連行された二振りは、風呂場でも水鉄砲をやって一期一振に注意されるのであるが、どうにも二振りよるとはしゃぎたい気持ちが抑えられない様子だった。