きみのすてきなところ 類と喧嘩をした。
「もう弁当を作ってこなくていいよ」
そう、あしらわれ、オレは激昂をした。それはとても些細な出来事、では全くなく少なくともオレにとっては重要な問題だったからだ。
それなのに今、降りしきる雨の中、一つの傘の中に二人で居ることが酷く不可思議なことでしかない。ちらりと横目で類を覗けば、類はオレのほうなど見向きもせず、真っ直ぐに冷たい空気の向こうを見つめて歩いていて、苦しく思っているのはオレだけなのかと些か落胆をする。
昼休みのたびに昼食の交換をねだってくる類のために、わざわざ早起きまでして弁当を作ったのが始まりだった。それを続けること十五日目。今日になって類がその弁当を拒否したことがこの喧嘩の中心部分である。
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