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    べこ

    その時の気分で好き勝手に落書きをぽいぽいしてます。

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    べこ

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    コテ+ゾウSSお試し投稿

    ##バディミ
    #BMB

    「ゴ、ゴンゾウさま~」
    マイカの里の財を守る漆喰の金蔵に、おさげ髪の少女が息を切らしながら
    蔵の金庫番であるゴンゾウに駆けよった。

    「どうしたそんなに急いで。珍しいな、今日はコテツと一緒ではないのか」
    大柄な体をかがめて、少女と同じ目線になったゴンゾウは
    いつも少女と遊んでいるコテツがいないことに気付いた。

    「あのね、コテツとね、さっきまで一緒に山で遊んでたらね
    コテツが足を滑らせて落ちちゃって、助ようとしたんだけど私じゃ手が届かなくて、ゴンゾウさまコテツを助けて……」

    しゃくり上げながらうわああんと少女が泣き出した。助けを呼ぶために大人でも息が上がる坂道を上り、金蔵まで一心に走ってきたのだ。ゴンゾウは懐から懐紙を取り出すとそっと当てるように少女の涙を拭った。

    「ゴンゾウさま、後の番は私にお任せください」
    話をきいていたのだろう、ぎいと重たい蔵の扉をわずかに開けて財を管理している忍がゴンゾウに声をかけた。
    「かたじけない、この借りは近いうちに返す」

    「ほら、もう泣くでない。コテツは山のどのあたりで落ちたのか思い出せるか」
    「ドングリがいっぱい落ちているとこ……」
    マイカの山でドングリがたくさん落ちている場所には心当たりがある。
    ゴンゾウも見習いになる前によく友と遊んでいた場所だ。きっとあそこだろう。
    「あの辺りか……分かった。もうじき日も暮れる、コテツは拙者が迎えに行くゆえ、暗くなる前に家に帰りなさい」
    まだ空は晴れて青いが太陽の位置からすると夕七つ。もうすぐ日も暮れはじめる頃だ。泣きじゃくる少女を落ち着かせて、帰宅するように勧めた。

    「うん……ゴンゾウさま、きっとコテツ一人で泣いていると思うから早く助けに行ってあげてね」
    「あぁ」
    一言だけ返事を返すと、ゴンゾウは恰幅の良い体格など物ともせず軽々と近場の木に飛び乗り、木から木へ移動して目星の場所まで向かった。



    「いてて……」

    山の斜面から滑り落ちてしまったコテツは挫いてしまった足首を抑えて地面に座り込んでいた。落ちたのはそこまで急な斜面ではないが、片足を挫いた状態では上に上がるのは子供のコテツでは難しい。
    「ちぇっ、こんな崖、いつもだったらすぐ登れるのにな。………あいつ、助けを呼んでくるって言ったきり戻ってこないし」

    一緒に遊んでいたおさげ髪の少女のことを思い出し、コテツはため息を吐いた。落ちてから一時間ほど経つがもうじき夕方になる。鮮やかな紅葉の山も日が暮れると真っ暗になり、コテツはこのまま誰にも見つけられなかったらどうしようと不安が増していた。
    もし、斜面に落ちたのが自分でなく少女だったら。きっと彼女の両親や里の大人が総出で探しに来てくれるに違いない。───だが、両親もおらず捨て子の自分では誰がそこまでしてくれるだろうか。

    「うぅっやだよ……ゴンゾォ……早く助けに来いよ……バカ……」

    今にも泣き出しそうな声で、唯一頼れる大人の名前を零すとコテツは下を向き、地面の土ごと固く握りしめた。

    「せっかく迎えにきたというのにバカとはなんだ。バカとは」

    呆れた声がコテツの頭上から聞こえる。ばっとコテツが顔を上げると亡き父から世話を頼まれたと、数年前から一緒に暮らしている男がいた。
    「ゴンゾウ」
    「全く、そう男が簡単にめそめそ泣くな。……足を挫いているのか、待っていろすぐに降りる」
    「なっ、泣いてないし」

    図星を突かれたコテツはごしごしと着物の裾で目尻を擦った。
    ふんっ、とそっぽを向く横顔は彼の実の父親に面影がある。
    音もなく斜面を降りるとゴンゾウはコテツの前に背を向けてしゃがみ込んだ。

    「片足だけでも立てるだろう。おぶされ」
    「うん……」
    斜面に手をついて片足だけでよろりと立ち上がると、コテツはゴンゾウの背におぶさった。

    「一気に上がるぞ。舌を噛むからちゃんと口は閉じていろ」
    「はーい……」

    ゴンゾウの肩に回す手をしっかりと強めると、一瞬だけ浮遊感を感じ、あれほど高く感じていた斜面の上にもう着いてしまった。息を吸い込むとゴンゾウは里まで走り出し、木々の間を流れるように過ぎ去っていく。

    「コテツ、里に着いたぞ」
    既に日が暮れてしまったが見知った里の光景にコテツは安堵した。
    「そういえばゴンゾウいつもこの時間まで仕事だろ。なんでおれが落ちたって気付いたの」
    「いつもお前と遊んでいる女子が教えてくれてな。足が良くなったら彼女に礼を言うのだぞ」
    「…… へへっ、そっか。うん、分かった」
    嬉しさを噛みしめるようにはにかんでコテツはゴンゾウの背中に顔を埋める。そんなコテツの様子にゴンゾウも眉間の皺が取れて穏やかな表情になっていた。

    我が家までの一本道を夕焼けが照らして二人の影が伸びていく。

    山道を走り駆けたのにゴンゾウは汗1つすらかいていない。
    忍者ってすげえなぁ……そう思いながらコテツは畑仕事から帰る人達や、巣に帰るカラスを眺めていた。
    ゴンゾウにおんぶされたのは初めてのはずなのに、体温や背中の広さ、腕の太さや密着しないと分からないような微かな体臭まで、ひどく懐かしい気がする。
    ずっと前からこうされていたみたいだ、と感じながらコテツはゆっくり瞼を閉じた。





    ─────────────────────
    ・おまけの後日談


    あれから二、三日ですっかり足の調子も元通りに回復したコテツは、今日は友人たちと里の中でかくれんぼをして遊んでいる。コテツとおさげ髪の桜柄の着物を着た少女は、長屋の前に置かれた大きな竹かごの後ろで鬼役の子に気付かれないよう、いつものように小声で言い争っていた。

    「もー、なんでいつもお前おれについてきちゃうんだよ。見つかっちゃうだろ」
    「違うもん。コテツが私と同じ方向に行っちゃうの」
    「いいや、そっちこそ違うね」
    「なによー」

    その時、コテツ達のすぐ近くで鬼役の友人が他の友人を見付けたと声が聞こえた。
    見付からないよう咄嗟に二人とも身を屈めて口を閉じ、反対側の通りまで来ていた
    鬼役の友人が通りすぎるまでじっとしている。鬼が二人の隠れている方向とは別の方向に探しに行ったのを確認すると、ふぅと胸を撫で下ろした。
    「行っちゃったみたいだね」
    「危なかったな」

    「そういえばさ、この前……おれが山で滑って落ちた時、ゴンゾウを呼んできてくれてありがとな」
    「どういたしまして、もう鹿のウンチを枝でほじくって追いかけてこないでね」
    「分かったよ……」
    コテツは気まずそうに指先で頬を掻いた。
    あの時、コテツは少女と山でドングリを拾って集めていた時に、野生の鹿の糞を見付けて近場にあった枝でほじくり返し、糞付きの枝を持ったまま少女を追いかけ、そして足を滑らせて斜面に落ちてしまったのが発端であった。

    「そうそう、それであの時、ゴンゾウにおんぶされて帰ったんだけどさ。はじめておんぶされたはずなのになんか昔から知っている気がして、変だよな」

    あはは、と気恥ずかしそうに笑って誤魔化しているとそんな空気を壊すかのように
    明るく豪快な声が二人の頭上から降ってきた。
    「あらやだよ、この子ったら」
    「おっ、おカン」

    大きな口を開けて、里一番の噂好きであるおカンが洗濯物を抱えて二人に声をかけたのだった。
    「コテツ、あんた忘れちゃったのかいアンタがこーんな小さい赤ん坊の時におしめを替えたり、ヤギのお乳をやったり寝かしつけたりお世話してたの、全部ゴンゾウじゃないそうそう、あの時いつもゴンゾウにおんぶ紐で抱っこされていたっけね。懐かし懐かし~
    あっ……というか、あの時あんたまだ一歳にもなってなかったね。そりゃあ覚えていないわあっはっは」

    手を叩いてほがらかに笑うおカンのマシンガントークに、コテツは頭の中の情報整理が追い付かず、呆けていた。話があっちこっちに変わるおカンの噂話は止まらない。
    一緒にいた少女はいつの間にか別の場所に隠れることにしたようで、コテツが気付いた時には既にいなかった。


    「コテツおカンと一緒とは珍しいな」

    ぴくりと背後の声にコテツが反応する。わなわなと肩を震わせて振り返り仕事の休憩で通り掛かったゴンゾウを睨み据えた。

    「全部おカンから聞いたぞ、おれが赤ん坊の時に世話してくれてたのゴンゾウなんだな」
    「なっ」
    「なんで教えてくれなかったんだよ、蹴りゴマの時だってそうじゃんゴンゾウの嘘つきバーカバーカバカバカバカバカ狸腹」
    「お、落ち着けコテツ、これには訳あってな……」

    里の住民が大勢行きかう通りで、コテツは人目も気にせず大泣きしながらポカポカとゴンゾウの腹を叩いているが、びくともしないゴンゾウの腹にそろそろ弾き飛ばされそうだ。
    里の大人達が皆知っているのに、自分だけ知らなかったのが気に食わなかったのか益々声は大きくなるばかりで、ゴンゾウはどう返したらコテツが落ち着くのか分からずに弱りきってしまっていた。自分達を横目で眺めている里の住民の生暖かい視線がゴンゾウをいたたまれない気持ちにする。


    「あんれま、見ておリスちゃん、おツルちゃん」
    「まぁゴンゾウさまったらまたコテツに言い負かされてますのね」
    「ほ、ほほ本当の親子みたいで」

    「「「可愛らしいわあ……」」」
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