3.知ってしまったヒミツ仕事の合間をぬってまだ片付けきれていない細々したものを片付けていく。
ふと手に取った見覚えのない箱。両手に乗る程の大きさで、細かな飾り細工が施されている木の箱だ。
俺のじゃない。大寿くんのかな?
少し気になって蓋を開けてみた。
音が鳴った。オルゴールだ。
大寿くんの物にしては似合わない。誰かの物だったのかな?
よく中を見ると銀のペンダントが入っていて、思わずそれに触れてしまった。
花の模様が細工してある楕円形の銀のペンダント。
「これ、ロケットペンダント?」
すごく気になって、ごめん、と心の中で謝りながらそれを開いた。
中には少し色褪せた写真が2枚。
1枚は椅子に座った綺麗な女性。そしてもう1枚には幼い子供が2人。
「お母さん?こっちは柚葉と八戒?」
初めて見る大寿くんの母親は柚葉に似て、芯の強そうな凛とした人。そして、笑顔で手を繋いでいる幼い柚葉と八戒。
大寿くんが閉じ込めていた大切なもの。
それを無理やりこじ開けてしまったみたいで、罪悪感に襲われる。
これは俺が触れていいものじゃなかった。ごめんね。
ペンダントとオルゴールを元の位置に戻して、自分の記憶にも蓋をする。
いつか大寿くんがあのペンダントのこと話してくれたら嬉しい…。