Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    hariyama_jigoku

    リス限はプロフ参照。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 51

    hariyama_jigoku

    ☆quiet follow

    カトシス。再掲。「伝熱」

    ##グラブル

    .

    「シスさん」
     呼ばれた名前に従って、ふいと視線をそちらに向ける。月明かりが合間合間に差す、騎空船内の薄暗い廊下にぽつりとカトルが立っていた。
    「任務帰りか」
     そう問いかけると、振動が伝って手持ちのカンテラが揺れる。団員の殆どが寝静まった夜に、シスが持ち回りの巡回を行うのが丁度今日だった。
    「ええ、少し遅くなってしまいましたが概ね予定通りです」
     こくりとカトルは首肯して、じっと影を被った瞳がこちらを見つめる。首を僅かに傾げると、カトルがふっと吐息みたいな甘さをこぼした。そしてゆっくりとシスの方に手が伸びる。驚いて若干体が跳ねるが、すぐに意図に気付きため息をついた。カトルの口角がにやと上がるのも、いいように扱われているようで落ち着かない。
     うなじを細い指が這い、後頭部を掴むように引き寄せられる。視線が急かすので、空いている手で口元を晒すように仮面を押し上げた。屈むように少し身を倒すと、かりと地肌を爪先で掻かれる。
    「誰かに見つかったらどうするつ、ん、むっ」
     半眼で口にすると、塞ぐように口づけられた。下唇に歯を立てられ、舌が潜り込む。水音が跳ねて背筋がぞくりと震えた。舌先を擦り合わせると、痺れるみたいにじんじんと快楽をまぶされるような感覚が止まらない。
     感覚的には随分と長い時間そうしていたように思うが、実際は一分二分のことなんだろう。漸く離された瞬間、熱い息を吐き出した。平時なら屈んだ体勢をいくら維持しようと何の負担にもならないが、頭に熱が溜まった今は若干堪える。
    「見つかりませんって。見回りはあなたなんでしょ? 他の人は皆寝てますよ」
     あっけらかんと宣うカトルに抗議しようと視線を向けると、なんだか些か不機嫌そうに眉根を寄せていた。好き勝手しておいて何が不服なんだと、ずらした仮面をつけ直す。
    「の割には不服そうな顔だが」
     引き寄せていた手は解かれて、程よい距離が空いた。軽く曲げた背を正す。度々あんな風に噛みつくようなことをしてくるうえ―――本当に噛みついてきた時もある―――無遠慮に屈むように強制されカトル自身も多少つま先を伸ばしているようだったから、いつからか自分で先に屈むようにしていた。不意打ちのような場合を除けば、それを仕掛けてくる時は大体二人だけの時であるとか匂わせてくる特有の甘さを含んだ時がある。予想しやすいというのは結構であるが、カトルが意図せずやっているとは思えないので覚えさせられているのだろうと思うと頭を抱えたくもあった。
    「それですよ」
     不満が滲んだような表情は、こういう時ばかり年相応に映った。それに仮面の下が緩むのを自覚しつつ、声色を変えずに言葉を返す。
    「なんのことだ」
    「別にあなたはなんのつもりもないんでしょうけど、毎回屈むじゃないですか」
     丁度頭を過っていたことを言い当てられ、目を見開いた。だが、気付く訳もないカトルはするすると言葉を続ける。
    「癪というか気に入らなかったんです。ていうか今もですけど」
     がしがしとカトルが乱暴に頭を掻いた。
    「僕だって、身長はある方なんですけどね。よりにもよって何であなたに負けてるんでしょう」
     いつもは誰よりも大人びた思考の持ち主だと思っていたのに、吐き出した不満の種の他愛なさについ苦笑をこぼす。それを聞き咎めたカトルが、柳眉を逆立てた。
    「ねえ笑い事じゃないんですよ」
    「分かったから、もういいだろう。見回りが途中だ」
     言い募るカトルの言葉を遮って、まだ確認していない方向へとカンテラを向ける。
    「お前も疲れているだろう。早く休め」
     そう言うと多少ぶつくさとしていたが、流石にシスの仕事を邪魔するつもりまではなかったのか止める気配はない。ほっと息を吐いて、そのまま踵を返そうとすると背中に再び「シスさん」と声が放られた。
    「癪なのは変わりませんけど、今はそう悪い気もしないんですよね」
     いくらか距離を取ったせいか、カンテラの光の外にあるカトルの表情はあまり見えない。伺うように言葉を待った。くすくすという笑い声が廊下に落ちる。
    「調教されて、お手を覚えた犬みたいだ」
     その言葉に、熱した鉄でも飲み込んだように火が灯った。
    「いい子にはご褒美上げないといけないんですよね? 犬なんて飼ったことないですが」
     部屋で待ってますね。弾んだ声だった。錘を乗せたみたいに足が床に張り付いたまま。カンテラを持った手に、要らぬ力が籠っている。いつの間にかカトルは立ち去っていて、今日一番のため息を吐いた。が、顔の熱は冷めない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏👏🙏🙏🙏😭😭🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏🙏👏👏👏👏👏💖💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
    1834