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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。

    ##サイドエム

    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
    「マユミくんって、結構えっち?」
     呼吸を整えながら、目の前の眉見に聞いてみる。離した体の距離は、パーソナルスペースを絶妙に犯しているが手を伸ばすには少し遠い。眉見は百々人の問いに、少し目を細める。
    「どういう意味だ?」
     単純に意味を図りかねている、といった声色だった。ううん、と言い出していながら百々人が首を横に傾ける。思ったままを口にしただけだったが、言語化できるように感覚を手繰り寄せる。
    「キスする時、腰に手を回されたから……何となく?」
    「……嫌だったか?」
     百々人の言葉を受け取った眉見が、一拍置いてから窺うような視線を向けた。それにはっとして、慌てて首を横に振る。
    「そうじゃないけど」
     口の端に濡れた感触が残っていて、それを手の甲で拭う。
    「どうしてなのかなって。結構しっかりホールドするから」
     なるべく何ともない風に言うと、眉見の眉間に少し皺が寄った。これは、多分困っているといったところか。怒らせたかと焦る心を、冷静な自分が推量で抑える。最初は眉見が何を考えているのか分からなかったが、最近は秀も百々人も随分表情が読めるようになってきた。と思う。もっとも、眉見自身が言葉が少ないことを自覚して、補うようになったからかもしれないが。
    「正直、意識はしてなかったが」
     そう言葉を切って、眉見は渋面を浮かべる。その表情の意図を汲みかねていると、ああというように視線がこちらを向いた。
    「逃げられると困るから、かもしれん」
     気まずげに吐き出した言葉に、百々人は少し目を見開いた。
    「……逃げないよ?」
     ほら、と離れた距離を埋めるように、体を前に倒す。驚きからか少し跳ねた体に、腕を巻きつける。眉見の肩口に額を押し付ければ、完璧だ。顔を上げると、珍しく瞠目している様子に口の端が緩む。
    「そうか、―――百々人」
    「ん、なあに?」
     硬い掌で髪を撫でられ、感触に目を細めた。
    「少し、試したいことがあるんだが」
     いつも通りの表情に戻った眉見を少し惜しく思いつつも、こくりと頷いて返す。
    「うん、いいけど」
     てっきりその後に説明が続くものかと思っていたが、百々人の返答を受けるとゆっくりとこちらの顔に陰が降りる。髪を耳にかけるように撫でつけられ、耳殻を僅かに指先がなぞった。
     ぞわり、と背筋を駆け抜ける感覚。その正体を手繰ろうと思考を割こうとすると、眉見の顔が近付いてキスをされた。急にされたものだから、呼吸が整わず薄く唇を開く。そのあわいにぬるりとした感触が潜りこんだ。舌先が縮こまった百々人の舌を撫で、粘膜が触れ合って確かな快楽に意識がけぶる。
     反射的に、眉見の肩を押すとそれは難なく離れた。
    「ほら、逃げた」
     百々人の肩で息を繰り返す様を見て、眉見の口角が少し上がる。
    「や、やっぱりえっちだよ……」
    「そうか」
     真っ赤な鼻先に、あえかな口付けが触れた。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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