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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    伏五小説。寝しなに話している二人。短い。

    ##呪術

    良いこと悪いこと 人一人分の重さが、僕の背中を床に縫い付けている。勿論、フローリングに直で、なんてことはなく、毛足の長いカーペットがしゃんと床との間に挟まっていた。
     重さだって、やろうと思えば難なく跳ね除けられる。でもそれをしないのは、可愛い僕の恵が珍しく自分からくっついてきたからだ。我が物顔で僕の上に寝そべって、何やら心臓の音を聞いているようにも見えなくもない。
    「恵。これ、僕でも分かるけどさ」
     ふく、と思わず小さく笑った。眠気が勝っているのか表情の乏しい恵が、僅かに首を横に傾ける。僕の上で。
    「悪いことだよね。キスも、セックスも」
     僕の言葉に、少し遅れて恵が身じろいだ。ドライヤーで乾かしたばかりの髪は、流石の恵でも毛先が少し丸っこい。
    「―――あんたは」
     目を焼くような昼光色ではなく、室内は灯りを随分と落としている。勿論そんな中でも僕の目は明確に情景を把握できるけれど、ふわふわとした浮ついた意識がそれを疎かにさせていた。ぱさり、と布の落ちる音がした。少し上体を起こした恵を見上げ、それからやっと恵にかけていた毛布がカーペットを叩いた音だと気付く。
    「俺とするの嫌ですか、そういうの」
     ううん、と首を横に振った。すると恵が目を少し細め、目尻を下げる。本当に少しだけ、きっと僕の六眼がなければ部屋の暗さで分からないくらい少し。その口角が上がった。
    「じゃあ、いいじゃないですか」
     下りてきた恵の手が、頬に少し触れる。指先で、輪郭をなぞるみたいに触れられて、くすぐったさに少し首を反らした。ふっと、恵が息をついて、指は追ってこない。
    「あんたが嫌じゃないなら、いいことですよ」
     ね、とまるで子供に言い聞かせるような口調だ。恵に似合わないことこの上ない。
     そして、恵に言われた言葉を脳内で反芻して、呑み込んだ。
    「恵は?」
     思わず尋ねると、はあとため息を吐かれる。呆れたというポーズを取ってはいるが、これは特にそんなこと思っていない時の仕草だとあたりをつけた。
    「嫌ならしてないです」
     恵が前のめりにゆっくりと倒れてきて、ひたりと僕の横に手をつく。ぱくり、と食べられるみたいにキスをされた。食むように唇を恵のそれで挟まれて、嫌悪感なんて微塵も感じない。
     なら、これはきっと良いことなのだろう。恵本人が言うんだから、きっとそうに違いない。
    「じゃあ、いっか」
     今度は人の頭くらいの重みが肩に乗っかった。まろい頭を撫でて、拾い上げたリモコンで今度こそ灯りを落とす。僕より高い体温が、触れた肌から少しずつ侵食するみたいだった。温さに息を吐いて、目を閉じる。寝つきは悪い方ではないが、今日は殊更すぐに眠れるような、そんな予感がした。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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