Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    hariyama_jigoku

    リス限はプロフ参照。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 51

    hariyama_jigoku

    ☆quiet follow

    リドフロ。再掲。「消灯まであと」

    ##ツイステ

    .

     引きずり込まれた建前は、確か一週間の猶予を出された課題を教えて欲しいというだったか。一応恋人同士とはいえ、何の因果かこの双子の部屋で過ごすのもそれなりの回数になってしまった。
     今日はフロイドの片割れも不在のようで、これはそういうつもりだろうかと早々に当たりをつける。だがこちらは課題の協力を求めてきているのだ、テーブルに教科書を広げていると不満そうな声が背後からした。
     ちらりと横目で見やると、部屋の主がベッドに寝転がっていて口を尖らせてこちらを見ている。
    「金魚ちゃん何してんの?」
    「君が課題がしたいと言ったんだろう」
     そうため息をつくと、くるりとペンを回して課題に手をつけた。放逐していると拗ねて絡んでくるのが常なのだが、フロイドが黙り込むものだから部屋に沈黙が落ちる。仕方なく首を捻ると、枕に顔を突っ伏す姿が見えた。手をベッドから垂らしてぷらぷらと振っているから、眠っていないのは分かる。
    「こら、人を呼びつけておいて眠る気かい」
     軽く体を揺すると、少しフロイドが呻いた。
    「オレ、超眠いかも」
     融けたような声が続いて、ああこれは相当だなと思案する。情事の後、シャワーを浴びて戻ってくると大抵こんな声をしている記憶があった。渋々とベッドの横に腰かけて、ターコイズの髪に指を通す。
     ―――期待していなかった訳じゃない。言い訳のように思考を連ねる。行為に誘う時は大概フロイドからであったし、彼が起きてから致すとすると到底消灯には間に合わないだろう。それに何より、フロイドが気分でないならこちらにはする理由がないのだ。
     そうかい、と返してフロイドの頭に置いた手はそのままになっている。課題に戻らない理由がなんであるのか、ベッドの―――彼の横から離れられない感情の所在は見ないふりをした。
    「でもさ」
     うつ伏せの状態から顔を上げたフロイドが、こちらを見上げる。
    「金魚ちゃん」
     そう形作られ吐き出された言葉に、眉間に皺が寄るのを自覚した。随分耳慣れてしまった、否慣れさせられてしまったというべきか。
    「眠るんじゃなかったのかい?」
     彼が顔を上げたことによって、自然首の裏に回った手で生え際をそっと撫でる。
    「もし金魚ちゃんがえっちしたいならさ」
     常より感情の籠らない声で落とされた言葉に、少し噎せた。
    「だいじょーぶ?」
     呑気な声と手が、背中の尾てい骨の辺りに僅かに触れる。
    「君がいきなり変なことを言うから」
     ねめつけるように見下ろすと、ふふっとあえかな笑い声が落とされた。
    「変なことじゃねえじゃん。金魚ちゃんがしたいなら頑張って起きる。寝ないよ。どっちがいーい?」
     唐突に放られた主導権に、つい返す言葉に詰まる。
    「金魚ちゃんに任せたわ」
     そう言ってフロイドは自分の頭に置かれていた手に、すりと鼻先を擦りつけた。その仕草に胸が痛む錯覚がして、思考をぐるりと回す。
    「しようか」
     数秒とも数分とも取れる沈黙の中、ゆっくりとそう口にした。未だ横になったままのフロイドのこめかみ辺りに口付ける。一瞬の接触の後、身体を離そうとすると縋るように首に腕を回された。眠たげに霞んだ瞳と視線を交わし、幾度も触れるだけのキスを繰り返す。
     ふわ、とフロイドが欠伸を溢した。手の中から解放されて、彼の目を擦る仕草から眠った方がいいのではという考えが過る。
    「フロイド」
     小さく名前を呼ぶと、彼はゆっくりと身を起こした。軽く伸びをするさまを見つめていると、不思議そうに首を横に傾けられる。
    「なあに、オレ顔洗ってくんだけど」
     呆気に取られて二の句が告げずにいると、きゅっと服の袖を引かれた。
    「頑張って起きるって言ったじゃん。俺だけ寝たら、金魚ちゃんかわいそうでしょ?」
     余計なお世話だ。飲み込んだ言葉は、よろよろと立ち上がるフロイドにかける言葉としては少し憚られた。今日は少しくらい消灯前の時間を共に過ごしてもいいかもしれないと考える、自分の絆され具合にため息をついた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
    1834