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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    カトシス。再掲。「合縁奇縁」

    ##グラブル

    .

    「ねえ、大丈夫? 飲み過ぎじゃない?」
     うぅ、と常ならば出さないような唸り声が、カウンターに突っ伏す下から聞こえた。これまた珍しい。つい苦笑して、シエテは視線をシスの方に向けた。
    「どうしちゃったのカトルくん」
     完全に潰れている様子のカトルと比べて、まだ素面そうな―――そもそも仮面越しだから今の顔色は分からない―――シスに問いかける。
    「飲み比べをしていた」
     さらりとそう言ったシスがまた、酒精の強そうな酒を口に含んだ。からんと鳴る氷の音でも聞こえたか、カトルの耳が揺れてぐらりと危なげに上体を起こす。
    「まだ、のめます」
    「ちょ、ちょっとストップストップ!」
     胡乱な声で手元のグラスに手を伸ばそうとするカトルを、慌てて制止した。
    「それ以上はちょーっと危ないんじゃないかな?」
     不機嫌そうに歪められた目が、じとりとこちらを睨む。酔ってるからって殺気を飛ばさないでほしいと、温度の低い視線から逃れるようにテーブル席の方に座っているカトルの片割れにちらりと視線を送った。
    「そ、その。私も楽しくなってしまって」
     感情の滲まない表情の代わりに、耳がぱたぱたと揺れる。申し訳なさそうに視線をうろつかせるエッセルを誰が責められようか。
    「いや、大丈夫大丈夫。エッセルのせいだと思ってるわけじゃないからさ」
     そちらに話を振ったせいか、ソーンも顔を上げた。
    「ごめんなさいね、シエテ。シスが見ててくれるものだから、安心かなって思っちゃったの」
    「いいよいいよ。でも珍しいね、シスくんがそんなこと言うなんて」
     元々今日は十天衆の会合があり、ソーンの提案でその後に都合のつくもので軽く食事をということになったのである。自分は少々野暮用があったので遅れての参加だったから、男性陣がシスとカトルだけになった。だが、まあ最近の二人を見るに大丈夫だろうと見送ったのだが、これはどっちに転がったのだろうか。
    「二人で話してるからほら、男の子同士話すこともあるのかなって思ったんだけど余計だったかしら…」
    「別に、普通に話してただけだ」
     その普通に話す、というのが二人の場合想像がつかないのだが。シスの仮面の奥の表情は読めない。
    「なら良かったんだけど。ええと、飲み比べを持ちかけたのはカトルの方だったっけ? シスが強いからむきになったみたいで」
    「あー…、それはちょっと想像できるね」
     カトルの頑なだった態度が少々軟化したのは傍から見てもよく分かるが、それでもシスへの対抗心は未だに変わらないらしい。グランサイファーに乗り合わせた時などはたまに手合わせなどを申し込んでいるらしく、シスもシスでそれを律儀に受けるものだからきっと満更でもないのだろう。
    「ソーン、そろそろケーキが食べたいぞ! おすすめあるかー?」
     サラーサの無邪気な声に、はーいとソーンが応じた。
    「せめて水だけでも飲んでほしいんだけどなあ」
     あまり悪酔いしては明日に響く。流石にそれはちょっとよろしくない。手に持った水のグラスを振ると、ゆるりとカトルが頭を振った。
    「ぼくは、まだまけてないですから」
     そう吐いた台詞の呂律の回っていないこと。じとりと睨む視線の先はシスだ。沈黙を保っていたシスが、透明な液体の入ったグラスを手に取る。少し仮面をずらして、それをこくりと飲んだ。そして食い入るようにそれを見つめていたカトルにちらりと視線をやり、ふっと一つ息を落とす。
    「まだ飲めるか」
     八分ほどになったグラスを挑発するように揺らすと、むっと不機嫌そうに顔を歪めたカトルの手がグラスに伸ばされた。ごくごくと飲み干して、小気味よい音を立てて空のグラスがテーブルに置かれる。
    「まだよゆうです」
     そう言ったカトルに、またシスがグラスを差し出した。それもふんだくるカトルに聞こえぬように、シスにそっと耳打ちをする。
    「…水だよね?」
    「当たり前だ」
     ごくごくと酒だと思って水を飲み干すさまは、完全な酔っ払いである。だが、これで酒はもう飲まないだろう。しれっと自分は酒を飲んでいるシスを横目で見つつ、シエテも適当な場所に腰を下ろす。
    「なんというか、最近遠慮しなくなったね?」
     カトルのことだけではない。星屑の街の―――ネハンとの一件以来、どことなくシスの壁が少しなくなったような気がするのだ。
    「別に、変わったつもりはないが」
    「もー、照れちゃって」
     あまり突っ込んでも不味いだろう、茶化すようにつつく程度に留めておくと仮面越しに睨まれる。それに気付かないふりをして、自分も空いた腹を満たそうといくつか店主に注文をした。

     なんだかんだとシスがカトルをいなしていたため、食事中は特にトラブルも起こらなかった。そして、満腹になったサラーサが眠気を訴えたため、その日はお開きということになった。
    「じゃあ、また定期報告の時にね」
     そう言ってそれぞれの宿に分かれようとすると、赤い顔をしたカトルがエッセルに肩を貸されていたのだが不意にむんずとシスの腕を掴む。
    「まだまけたつもりはないんですけど、シスさんのまけでいいんですか」
    「か、カトル…」
     エッセルが困ったようにシスとカトルを交互に見た。シスが浅く息を吐いて、カトルの手首を掴み返す。
    「負けた覚えはない」
     そして、その様子を見つめていた俺たちを気まずそうに見返し、エッセルにカトルを背負うのを代わると告げた。
    「で、でも」
    「宿まで送る。ベッドに寝かせれば忘れるだろう」
     寝ないと抗議の声がエッセルの横から上がる。エッセルが何度かぱちぱちと瞬きを繰り返して、表情を緩めた。
    「じゃあお願いする。カトル、暴れないでね」
     そう言って、シスがカトルを担ぎ直す。じゃあ、とエッセルがこちらに手を軽く振った。それにソーンがにこやかに手を振り返すのを見て、少し首を傾ける。
    「もしかしてさ、あの二人付き合ってたりする?」
     つい口を開くと、ソーンが少し驚いて顔を赤らめた。
    「えっ、私は聞いたことないけど!」
    「そっかー。ちなみになんでソーンが照れてるのかは聞いてもいいの?」
     そう問うと、恥ずかしげにソーンが頬に手を当てる。
    「えっ、これはその、知ってる誰かが付き合ってるかもってちょっとドキドキしない?」
     ソーンの言葉に首を捻るものの、分からなくはないかもしれない。方向性は違うだろうが、二人が喧嘩したら大事になりそうだなあとかそっち方面のドキドキとか。
    「うーん、まあ確かに?」
    「そう、そうよね!」
     うんうんと頷くソーンは、妙に楽しそうだ。くあ、とサラーサが欠伸を一つ溢す。流石にそろそろ寝かせてあげないとウーノに怒られるなと、ソーンと苦笑した。
    「まあ、どっちにせよ仲良きことは美しきかなってね」
     宿に向かって歩き出す。あんまり歩くのが大変そうだったら、俺もサラーサのことおぶってあげようかなと息を吐いた。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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