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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    グラデカ小説。「軽口の応酬にもならない」付き合ってない。

    ##メギド

    .

     アジトの大部屋の一つは、閑散としていた。冬の寒さからか、部屋の隅々までは熱は行き渡らないためかそれぞれ自室に引っ込んでいるのかもしれないし、そろそろ夕食の時間も近くなってきたからその準備に追われているのかもしれない。
     グラシャラボラスはうつらうつらとそんなことを考えながら、磨き上げた鉄塊に目を細めた。引き受けていた仕事は降り続く大雪で馬車は通れずに延期となっている。しばらくアジトに身を寄せ、折角籠るのだからと手に馴染んだ武器の手入れと洒落込んでいるのだ。
     成果は上々で、鉄球の棘の先まで輝いているように見える。キャラバンの護衛中に幻獣と相対した時に、都度都度派手な汚れは落としていたものの細かいところまでは手が回っていなかった。一息ついて、テーブルに得物を置く。人がいないからとソファとテーブルの一画を占拠していたが、もう少し時間が経てばここも騒がしくなるだろう。今の内に片付けておこうと、慣れない作業に凝り固まった体を伸ばす。
     と、どさりと目の前で音がした。つられて目を見開くと、いつの間に部屋に入ったのかデカラビアがソファの背凭れに身を預けている。いつもの帽子を乱暴に取り払って、テーブルに押し付けた。目を閉じて眉間を揉む姿には、疲れが滲んでいる。
    「おう、お疲れさん。随分連れ回されたみてえだな」
     労い半分の言葉を投げかけると、ぎろりと鋭い眼差しが飛んでくる。今日は朝から労役と称した慈善活動に行くと聞いていた。何度か行っているようだが、やはり性に合わないのだろう。ソロモンも分かっているだろうが、それでこそということなのだから仕方がない。
    「雪の中を駆け回るなんぞ、正気だとは思えん」
     うんざりとした表情だけで、何があったのかがなんとなく思い起こされて苦笑してしまう。
    「まあ子供ってもんは、遊び回るのが仕事みてえなもんだからよ。雪の中だろうと関係ないんだろうさ」
    「ふん。ならお前も子供のようなものだな」
    「おいおい、俺の伝説への挑戦を遊びと一緒にすんじゃねえよ」
    「俺には、何も変わらんように見えるが」
     軽口を鼻で笑い、デカラビアは口を閉じる。憎まれ口は相変わらずだが、少々覇気がない。それほど疲れているのかと、流石に気の毒に思えてくる。仲良しこよしを気取るつもりはないが、一応同じトップの下に集まる仲間なのだ。デカラビアの起こしたことに反発する者はいるだろうが、それはそいつの考え方だ。グラシャラボラスは正直何とも思っていないし、企みを挫かれたデカラビアがこれ以上何かするとも思っていない。
     それに、労働には対価が支払われるべきだ。グラシャラボラスはそれを払う立場ではないが、何か褒美の一つあってもいいだろう。

    「エトワールオレでも貰ってきてやろうか?」
     親切心もしくは労いのつもりで口にすると、デカラビアが緩慢に顔を上げる。訝しげな表情を浮かべたデカラビアは、僅かに目を細めた。
    「どういう風の吹き回しだ?」
    「ただの親切だっての。もうすぐ夕飯時だし、飲み物くらいが丁度いいだろ」
     疲れの滲んだ胡乱な目つきが、少し緩まる。ぽつりと独り言のように口を開いた。
    「ヴィータの子供が言っていた」
     デカラビアの伏せられた視線は、適当に宙へと放り投げられたようだ。何の話かと言葉の続きを待つ。
    「こんな日は素敵な結婚相手が、家で温かいものを用意して待っててくれる。将来そんな暮らしがしたいと」
     言葉を切って、デカラビアは小さく息を一つ吐いた。
    「それを、ふと思い出した」
    「そいつぁ光栄だな」
     目の前の男もそういう戯言を言うのだな、と少し意外に思いながら言葉を返す。くくく、と常の笑いめいたものを溢しているし、案外これで機嫌は悪くないのかもしれない。
    「思ってもいないことを。とびっきり甘くしておけ」
    「へいへい」
     尊大な態度のデカラビアに適当に返事をして、立ち上がる。俺もあまり深く関わりがあった方じゃないからよく知らないが、デカラビアは元からアジトの連中と交流していなかったと聞いていた。こうしてグラシャラボラスにも話しかけるようになった分、丸くなったのかもしれない。どちらにせよ、悪い傾向じゃないだろう。そう思いながら、部屋を出た。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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