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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    ユスバザ小説。習作、糖度高め。「噛み潰したそれは甘い」

    ##グラブル

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     ほの温かい指先が、包帯越しに頬に触れた。ユーステスの細い褐色は、勿体ぶったように包帯に爪を引っ掛けて綻ばせようとする。到底、バザラガ相手にするようなことではない、と胡乱な目でユーステスを見つめた。
     当の本人は意に介した様子もなく、笑みこそ浮かべないもののベッドの縁に腰掛たまま随分と緩んだ表情を晒している。その頬は酔いによって些か朱を帯びており、酒気も強く香っていた。取っつきにくいだの気難しそうだのと称される冷然とした雰囲気は、今や影も形もない。あくまで短くない時を過ごしてきた同僚としての贔屓目かもしれないが、ゼタやベアトリクスが見ても同様の感想を抱くだろう。
    「―――っ」
     思索に耽っていると、不意に急所である首を撫ぜられた。反射で身じろぐと、その分だけユーステスが距離を詰める。透き通った氷のような瞳が、バザラガを注視している。
     筋張った首を辿って、喉仏をくすぐるように爪が触れた。不快感は感じない、その程度の力加減。顎を掻くように指が滑る。注がれる視線の甘さ、まるでユーステスの好む犬を可愛がるような仕草に、次第にバザラガの方が耐えられなくなってきた。
    「俺は、犬じゃないが」
     堪らずそう口にすると、一瞬だけユーステスの手が止まる。ふっと、空気が揺れた。それが目の前の男が溢した一笑だと気付いたのは、耳の辺りに手が触れた頃である。
    「知っている」
     揶揄うような声色に、思わずバザラガは目を見開いた。
     俗な言い方をするのであれば、恋人等という呼称を用いる関係ではある。そこに甘さというものが介在することはなく、お互いにそれを良しとしていると思っていたのだが。
    「バザラガ」
     カム、と動く唇が、呼ばれた名前に続く。バザラガが思わず顔を顰めても、それを宥めるようにまた指先が頬を掠めた。しばらくは任務もない、そして安全な騎空挺の自室―――この空の中でも指折りと言っても過言ではない―――の中。そして普段はあまり口にしない量の酒を呷っていたのだ、この気の緩みようも仕方がないのかもしれない。と、居た堪れなさからユーステスから逸らした視線を彷徨わせる。己の顔が若干羞恥や照れから熱を持ち始めていることを自覚しつつ、こめかみを抑えるに留めた。
     深いため息をつくと、バザラガは椅子から腰を上げる。それを見てユーステスが、スペースを空けるように横にずれた。ベッドに座る前に丸太のような腕を捕まえられて、かさついた唇越しに熱が触れる。一瞬でそれは離れて、腰を落ち着けると今度は顎に口付けを見舞われた。小気味よいリップ音だけがいやに部屋へと落ちる。唇に触れたのは最初の一度きりで、頬、肩、鎖骨、と児戯のようなキスが降るばかりだ。だが、それでも夜半の気配はしんしんと落ち、受け止めるこちらの熱ばかりが高められていく。
    「おい、いい加減……」
     するのかしないのかはっきりしろ、という意味を込めて、抗議を口にする。と、ユーステスがぐらりと圧し掛かるように倒れてきた。一瞬息を詰めるが、特に労せず受け止める。バザラガをベッドに押し倒そうという仕草には思えず、嫌な予感が頭を過った。両肩を掴んだままのユーステスの顔を覗き込むと、顔は薄ら赤いまま青い瞳はしっかりと閉じられている。今度こそ大げさなほどのため息が口をついた。
    「……勘弁してくれ」
     悪態をつきながらも己の欲と寝息を立てる相手とを天秤にかけると、容易に相手の乗った皿が下がっていく。仕方なしとユーステスを起こさぬように、ベッドに横たえさせた。刻まれることの多い眉間の皺も、今は姿形もない。腕を掴んでいる手はそのままだが、何となく解く気にはなれなかった。冷え冷えとした枕に、包帯越しに頭を押し付ける。寝ずに夜を明かすことには慣れているが、朝までにはどうにかこの熱も冷めないものか。そうバザラガは少々手狭なベッドの上で目を閉じた。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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