うつらうつらと甘いのは あっ、先生。おはよう、仕事もう終わったんだ。まあ確かにもう昼だね、俺さっき起きたばかりだからさあ……誰のせいだと思ってるの。
香り? ああ、クッキーのことかな。そう、今焼いてるんだ。もう少しで焼けると思うよ。うん、簡単なものならね。この前相棒とおちびちゃんに故郷でよく食べてたお菓子の話をしたらさ、食べてみたいって言われちゃって。ただのクッキーなんだけど、ちょっとモンドとかのとは違うみたいで。
先生もそうなんだ。今焼いてるのができたらまた新しいのを焼くつもりだから、見てみる? いいよ。でも手は洗ってきてね。それに、ちょっと手伝ってよ。
そこ、不満そうな顔しない! うちじゃただ見てるだけじゃお菓子にはありつけないんだよ。相棒はそもそもこの前手合わせしたお礼なんだから。
ん? ああ、俺も甘いものは嫌いじゃないしね。それにうちで作る時はいつもこんなものだよ。人数が多いからね、少なく作って分量を見誤るよりかはいいと思って。
やる気になってくれてよかったよ。じゃあ生地を絞ってもらおうかな。俺がお手本を見せてあげるから、よく見てて。
まず、円形に丸を作るように絞って、真ん中で止める。ちょっと持ってて……で、その上にジャムを乗せてっと。ありがと先生。もう一回ジャムを囲うように生地を絞る……これでオッケー。分かった?
じゃあちょっとやってみよ。ジャム乗せるのは俺がやってあげるから、先生は絞るのだけやってくれればいいから。はい。
ものは試しだよ。先生が料理する時はほんと時間がかかるから、こういう簡単なのから慣らしてみるのもいいんじゃない? ええ……そこは分かり合えないな。食べたいものがあるなら、質はどうあれ俺はさっさと食べたいけど。
分かった分かった。天板から目を離さないで。……そうそう、ゆっくりでいいから。手震えてるよ? 冗談だって、でもいい感じだね。はいジャム。手本が必要なら俺のを見てくれればいいから。……、初めてにしては上出来じゃない?
うーん、あんまり絞り袋握るのに、力入れちゃだめだよ。さ、どんどん行こう。先生大雑把なところあるけど、不器用ではないんだからすぐ慣れるよ。
俺はちょっと焼き上がりを見てくるから、下の土台だけどんどん作っちゃって。
……ねえ先生! すごいいい匂いするよ、ほらほらほら。……ね、そうでしょ。久しぶりに作ったけど、やっぱりレシピがいいんだな。これをちょっと冷ましておくんだけど、先生には特別に焼き立て一枚食べてもいいよ。ジャムも熱くなってるから、火傷だけ気を付けてね。
ほら、俺が代わるよ。うんうん、やっぱり先生覚えが早いね。流石神様。え、まあいいじゃん。細かいことはさ?
……どう、美味し? ふ、ははっ、ねえ、もう! ほら水……だから熱いって言ったのに! はー、あはは……大丈夫? ならいいんだけど。うん? それなら良かった。家族にも好評だったしね、不味いわけないんだけど。
よし、次も焼くから先生ちょっと退いて。あと一回分くらいは焼けるかな……っと。またしばらく待ったら焼き立てができるよ。でも冷めても美味しいよ。さっきの分が冷めたら、お茶にしようか。
ん? そりゃあね、拗ねてるみたいだったから特別だよ。ええ? そんなの……どっちだと思う? はは、秘密だよ。
ほらさっさと生地を絞り終えないと、生地がゆるくなる! そんな顔したってだめだよ……。ちょっと、もう、しょうがないなあ。今度は先生のリクエストに答えてあげるから。それでいい? でも、無理難題はいやだよ。うん、じゃあ約束ね。先生。