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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    鍾タル小説。完成~~。先生に片想いしてるモブ視点の公子。先生最後まで出てこなかった。

    ##原神

    凄惨なエトランゼ3「ん、今気が付いたの?」
     へらりと相貌を崩した様子は、確かに往生堂で時折見かける鍾離が「公子殿」と呼ぶその人だった。璃月に滞在している執行官、そして鍾離が呼びかけた公子という呼称。背筋をたらりと汗が伝う。自身の不運を嘆くことより、気付かなかった己に嫌気が刺す。男の気安さと年若さからすっかり失念していたのだ、よもや執行官を目の敵にしていたとは本当に笑えない。
    「先生も公子って呼んでるし、とっくに気が付いてたと思ったよ。もしかして俺ってそんなに有名じゃなかったかな」
     ううん、と首を捻った様子は年の若さも相まって、益々公子とのイメージを乖離させる。だが、瞼には先程の凄惨な光景が焼き付いていた。機嫌を損ねてはいけない。先の光景で倒れていたのは、一歩間違えば自分かもしれなかった。今も、神の目を持つ彼の前では掌の上のようなものである。冷静になろうと小さく息を吐いた。
    「……鍾離様が、そんな方とお知り合いだなんて予想もしておりませんでしたので」
     だが、意思に反して吐き出されたのは皮肉である。ぴくりと公子の眉が動く―――、がその目はこちらを睨むことはなく、ただ興味深そうに細められた。
    「言うねえ。でも覚えておくといいよ。善人の友達は善人、って世の中そんなに上手く出来ていないんだ」
     公子は小さく笑って、倒れている男を一瞬見やる。
    「君も、あっち側に回りたくはないだろ?」
     ぞわり、と全身に鳥肌が立った。思わず視線を足元に落とす。早く、早くここを離れろ、と本能が警鐘をかき鳴らした。無意識に後退る足が、小石に転がす音さえ妙に耳に響く。
     からからと渇いた喉を潤そうと、なけなしの唾を呑み込んだ。
    「助けてくれたのは、ありがとうございます。でも」
     これ以上目の前の相手の反感を買うことは得策ではない。それは分かっているのだが、これだけは言わずにはいられなかった。震える足を抑え込んで、肺から声を絞り出す。
    「あの方に、もう近付かないで下さい!」
     それだけを叫んで、くるりと公子に背を向けて走り出した。

     残されたのは、きょとんと女の後ろ姿を見送る公子ばかりだ。
    「えぇ……。俺からしたらあの人の方が、俺よりよっぽど性質が悪いと思うけどなあ」
     公子は困り果てたように、ため息混じりに頭をかく。そういえば元顧客を放置していたんだったと、雑に男たちを担ぎ上げた。その場に撒き散らされた血は、水で洗い流しておく。
    「まあ恋は盲目って言うしね」
     確かに往生堂所属、ということを除けば市井の目から見ても、鍾離は中々良物件なのかもしれない。そんなことをぼやぼやと考えていると、血の薄く混じった水が、石畳の隙間に流れていく。
    「それに、俺も恋敵にわざわざ情報を教えるつもりもないし」
     言外に女よりは鍾離のことを知っているのだ、と言い捨てる。にまりと笑って夜道を歩き出した。機嫌は悪くない。後は起きた男たちから命と引き換えに金を回収すれば、仕事も終了だ。
    「今度先生に会ったら、自分に祈られるのどう思うのか聞いてみよっと」
     足取り軽く、公子が建物の陰に消える。その独り言を知るのは、月くらいしかいなかった。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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