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    hariyama_jigoku

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    hariyama_jigoku

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    伏五ネタ(not小説)。事変後の話を思いついたのでメモがてら。死ネタです。いつか長めの話にして、その後とかのエピソード足して書きたい。

    ##呪術

    渋谷事変後、無事に五条は封印から解き放たれたものの、腐敗した上層部からの死刑は免れなかった。何よりも、本人が逃げなかったというのが大きいだろう。
    大切な者を失って、とうじくんみたいになってしまう恵。表舞台から消えて、流しで適当に呪霊を払う。世界は確かに変化していて、手こずるような呪霊もいない。五条が死んでから五年経った。恵二十歳。
    横に五条の亡霊がいる。きっと幻覚だ、とあんまり相手にしない。ね~、とうじみたいになんないでよ。そのうち口に傷でも作ってみろ本当に許さないから。ねえ、恵。本当にみんなのところ戻る気ないの。大切なもの、いっぱいあるじゃない。今からだって遅くないよ、五年って短いし。あんたがいない。僕のこと、そんなに大事?それを、あんたが言うのか!クソガキだった俺の人生の半分以上居座って、初恋も童貞も全部奪っておいて、愛してるの一言だって言う前に死んだくせに。初恋だったの?きょとん、と五条が目を瞬かせた。んだよ悪いか。いや、悪くない、悪くないよ。僕もね、言ったことなかったけど処女だったよ。初恋は僕もよく分かんないけど。
    恵はしょうがないなあ。もうすぐ二十歳なのに、僕がいないと駄目なんだから。駄目ですよ、ずっとそうだった。馬鹿な俺も、情緒育ってねえあんたも、誰も気付いてなかっただけで。そっか。ごめんね、恵。僕も愛してるよ。触れる事さえできやしない。
    ね、皆の元に帰れなんてもう言わないから、僕の仏壇にくらい会いに来てよ。五条家にですか。御三家はほとんど解体され、今は実質的な権力はないに等しい。五条家は五条悟のワンマンだったものの、伏黒は五条悟の処刑に反対するため動いていたせいか、そう関係自体は悪化してはいない。今の僕ができる、最後のお願い。了承するとわーい、恵大好き!って抱きつく素振りだけされる。そういえばもうすぐあんたの誕生日ですね。よく覚えてるね。毎回祝え祝えって騒いで他のあんたじゃないですか。折角ならその日に会いに来てよ。命日に来られるよりよっぽどいい。分かりました、というと五条は顔を綻ばせた。
    五条家に入ると、しんと静まり返っている。少し慌ただしいのはなんなのだろうか。五条悟の遺体は、欠片もこの世には残っていない。六眼など、何人もの術師に立ち会わせて入念に消滅を確認したという。残っていたらそれはそれでまた争いの種になったしそれはいいんだろう。手を合わせると、にわかに五条家が騒がしくなる。仏間を出て適当に声をかけると、すみません今産気づいたものがおりまして、と慌ただしく返される。ざわり、と胸の内がざわついた。立ち去った五条家のものを見送って、誰もいなくなってから五条さん、と幻覚の名を呼んだ。反応がない。幻覚の癖に、主の思い通りにならないとはどういうことかと苛立ちが募る。だが、それにも勝る緊張が伏黒の背筋に汗を伝わせる
    で、その後どっかで待ってると五条家の人が、お待たせしてすみません。悟様の墓前にきていただいてありがとうございますといいに来る。あの、子供、生まれたんですか。ああ、聞いておられましたか。慌ただしくて申し訳ございません、男の視線が彷徨う。赤子は無事だったのですが、母親の方は……。出戻りの女でして、父親も定かではなく、どうしたものかと。こんなことお客人の前で言うべきではありませんでしたね。よかったら、少し顔を見せて頂いても。えっ、ああ、構いませんが……不躾ですが、黒髪黒目の男児です。瞬きをする。いえ、今日は悟様がお生まれになった日でしたので、もしかしてと沸き立つ輩もおりました。私は違いますが、当時の栄光に縋るものは多いです。術式の有無や呪霊が見えるかは分かりません。それでも、六眼でなかっただけでそういう輩はすぐに興味を無くされました。もし、そういうのが目的でいらしたら望む結果かどうかは―――。すみません、そういうつもりじゃなくって。いや、俺も少しは思いました。でも、やっぱり顔は見たいです。すみません、いきなり。いえ、出過ぎたことを申しました。こちらへ、と後に続く。
    奥へ進むにつれて、赤子の鳴き声が近付いてくる。取り上げてから落ち着いていたのですが、その六眼目当ての輩が捌けてからああしてずっと泣いているのです。心の臓が妙にうるさい。いつも伏黒の回りをいやでもうろついていた亡霊は、もうずっと姿を現さない。手汗でぬるついた掌に、己を律するように爪を立てる。
    襖を開く。真っ赤な顔で、赤子が女の腕の中で暴れている。泣かないで、どうしたの、と取り上げたのだろう女がしきりにあやしているが、甲斐なく赤子は暴れている。くしゃくしゃの顔、目の色は分からないが、うっすらと頭にかかる髪は黒い。突然の闖入者に、女は戸惑ったような顔を向けるが、それを制して一歩赤子の元に近付いた。赤子は破竹のように泣いているが、暴れ方が少し変わった。ただしきりに暴れていたのが、どこか女の手から逃れようとする動きに変わる。心臓が、早鐘を打つ。抱かせてもらってもいいですか。動揺を押し込めて、女に聞くと、いいですけれど……と暴れる赤子を落とさぬように慎重に渡される。温かい命、ずしりと命一つ分の重みが腕の中に乗る。見様見真似で抱いたのが悪かったのかぎゃあぎゃあと泣き叫ぶ赤子は身動ぎを繰り返す。けれど、その手がぎゅうと強い力で伏黒の服を掴んだ。あっ、と女の声が、どこか遠くで響く。赤子はしばらくむずがって忙しなく腕をばたつかせていたものの、段々とその鳴き声を落ち着かせていく。くしゃくしゃの顔が、ほろりと解けて赤子は玩具でも見つけたように破顔する。ぽたり、と赤子を包む布に水滴が落ちる。滲む視界の中で、赤子だけは落とさぬように、きつく、それでも痛くないように抱きしめた。五条が死んで、初めて伏黒は泣いた。
    笑う顔は確かに可愛いと思ったが、泣いている顔は猿みたいだったなと頭の隅で考えると、赤子が小さな足で伏黒の腕を蹴った。痛くもかゆくもなかった。
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    hariyama_jigoku

    DONE鋭百小説(鋭百々)。付き合ってていちゃついてる二人。互いの無意識の話。
    侵食 ちゅ、ちゅ、とリップ音が鼓膜を舐めるように繰り返される。くらくらと、その度に指先から全身に火が点っていくようだった。無意識に腰が引けるが、腰に回された腕が程よくそれを妨げている。
     眉見の肩に手を置くと、それを合図と思ったのか殊更ゆっくり唇が合わせられた後に緩慢に離された。吐息が濡れた皮膚に当たって、妙に気恥ずかしい。口と口をくっつけていただけなのに、なんて女の子みたいなことは言わないが、一体それだけのことにどれだけ没頭していただろう。腕がするりと離れ、柔らかなベッドに手を置いて体重をかける。
     勉強会という名目だった。元より学生の多い事務所では、勉強会がよく開かれている。C.FIRSTは専ら教え役だったが、S.E.Mなど加われば話は別だ。いつしか習慣と化したそれは、ユニットの中でも緩慢に続いている。事務所に行くだけの時間がない時。例えば定期テスト中―――下手に行けばつい勉強が手に付かなくなってしまう―――とかは、互いに課題を持ち寄って百々人は秀の、眉見は百々人の問題を見る。最初は二人が眉見に遠慮したものの、受験の準備になるからと押し切られる形になった。今日もそうなる予定だったが、秀が生徒会の仕事で欠席することを知ったのがつい一時間ほど前である。今日はやめておくかと聞こうとした百々人に、眉見が自分の家に来ないかと持ち掛けて今に至る。いつもは何かと都合の良い百々人の家だったのだが、一人で来るのは―――それこそ二人が付き合い始めてから来るのは初めてだった。
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