仮面で恋 ゾロの持つスマートフォンの待ち受け画像に、俺はビシリと固まった。今視界に入ったのは。見間違いじゃなければ。
「なぁ、ゾロ、それちょっと見せて」
あ?と返されるものの存外素直に渡してきたマリモのスマートフォンを見れば『海の戦士ソラ』のアニメロゴと共に、黒いサングラスをした金髪の戦士が写っていた。横には小さく『おそばマスク』と書いてある。
「おまえ、これ…」
「あぁ、それ。いいだろ。公式限定の待ち受け画像だ」
「いや、そうじゃなくて!…おまえさ、こんなん好きだったの?初耳なんですけど」
「…ふん。まぁ、最近な。そいつが一番好きなんだ」
その言葉に、俺は今すぐにその画像を消去したい気持ちに駆られた。ふざけんな、こんなマスク野郎のどこがいいんだ。しかしその反面、嬉しい気持ちもわずかにあるのが複雑だ。だって、これは俺が演じているのだから。くそ、どうしてくれよう。クソマリモに秘密にしていることが2つに増えてしまった。
ぐる眉にあの画像を見られた。まぁいつか目に入るだろうとは思っていたので別にいい。画像を見ながら百面相をするこいつを見て、笑いを噛み締める。
こいつは自分の役者稼業についてほとんど俺に話してこない。仕事の話は俺もあまりしないしお互い様だ。だが知り合いの医者に、一度は見てみろ面白いから、と半ば強制的に見させられて俺は知ってしまった。こいつが今、特撮アニメのいちヒーローを演じているということを。
バレてないと思ってやがるんだ、こいつは。それがおかしくて、笑いで肩が震えるのを誤魔化すようにビールに口をつけた。
(俺がお前のこと、わからないわけねぇだろ。)
そっちからバラしてくれるまで、俺はおそばマスクに片想いだ。