脱皮の話② あれから三日が経った。行灯に照らされた黒い鱗は薄らと白く濁り、脱皮が近いことを示している。おまけに感覚も鈍くなっているのか、それとも怠さが勝つのか、こうして身体を拭いていても大倶利伽羅はぐったりと目を閉じたまま動かない。
先ほどの食事もさじで掬って食べられるたまご粥を何とか食べきった程だ。動けない分食べる必要がないのだろうが、普段の食事量の半分以下で足りるものかと気を揉まずにはいられない。
「これなら明日には終わりそうか」
「…………そうだな」
独り言のつもりで呟いたそれに思わぬ返事が戻ってきて目を瞬く。振り向けばいわゆる「赤疲労」の時と似たような顔つき。これも一口団子でどうにかなれば良いものを、とその頬を撫でた。平常とは違い、自分よりも低い体温に心の臓がひやりと冷える心地がする。
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