造花でもいいの 卒業したら、どうするの。
たったそれだけのことを僕はまだ聞けずにいる。尋ねればきっとその人は、当たり前に答えを教えてくれるだろう。きっと、僕がこんな風にぎこちなくなってしまうよりも前からとっくに自分の進む道を決めてしまっているはずだ。今さら僕がまごついていても仕方ないということくらい分かっている。それなのに、いざ彼を目の前にすると、引き結んだ口を開こうとするたびに言葉が出てこなくなってしまう。
今日もだめだった。でも明日はもしかしたら。そんなことを繰り返している。
マユミくん。高校を卒業したら、どうするの。
*
その日は、久しぶりにレッスンや仕事の予定のない放課後だった。どのくらい久しぶりだったかというと、そのときはまだ窓の外の色がほとんど夜みたいな色をしていたし、吐く息だって白かった。今窓から見える景色はすべてが深い青の中にあって、その頃と比べると随分と明るく思える。
ようやく寒い季節が終わって、これからはどんどん日が長くなっていく。昔の、アイドルになる前の自分ならきっと嬉しいと感じるはずなのに、夜の入口の空気を吸い込むたびに胸の奥が焼けるような感覚でいっぱいになる。……これは、焦燥感だ。まだ何も前に進めていないのに、季節ばかりがこんなふうに先へ先へと進んでいってしまう。
生徒会室の戸締まりをして帰ろうとしていた僕に後ろから声がかけられて、振り返ると学年主任の先生が立っていた。
「花園、ちょうどよかった」
帰り際に悪いな。そう言いながら先生は生徒会長である僕にある仕事を持ってきたのだった。
「送辞ですか」
事務所のソファに腰掛けてスマホのゲームをしていたアマミネくんは、そう言ってきりの良いところでホーム画面に戻すとスマホをテーブルの上に伏せて置いた。さっき僕が声をかけた時片耳だけ外した状態になっていたワイヤレスのイヤホンを、両耳分外してケースに収めてしまう。別に大した話題じゃないからゲームしながら片手間に聞いてくれてもよかったのに、と思う。
「あれ、原稿作るの結構大変ですよね」
先日の放課後、学年主任の先生は職員室に寄ってくれと言い、僕に数枚のプリントと短冊のように細長く蛇腹に折り畳まれた原稿用紙を手渡した。生徒会長が年度末に担う大切な仕事の一つ、それは卒業式で在校生代表として送辞を読むということ。すっかり忘れていた。
「内容を考えるのはともかく、あの原稿、式典で使うものだから手で書けって言われるんですよね」
課題とかはオンラインで提出させることだってあるくせに、求めてくるものに整合性がないんだよな。彼はそんな生意気を言いながら不満げに口をとがらせる。人によればただ尊大な物言いに聞こえることもあるかもしれないけど、実際のところアマミネくんは新しい物事を取り入れて変革していくことに対してとても柔軟なだけだ。そうやって自分も周りも変えていってしまう。
「アマミネくんもやったことあるんだ?」
「そうですね。まあ、小、中の頃ですけど」
出会ったばかりの頃はどう接したらいいのか分からなくて戸惑ったし、自信に満ちた言動に自分との隔たりを感じたりもしたけど、その自信も人には見せない努力とか葛藤とか、そういう彼なりの下積みがあるからこそだとうっすら分かってきた。
「わあ、さすがだね。じゃあ今年も?」
「あ、いえ。うちの高校は毎年2年の学年トップが読むって決まってるらしいです」
「じゃあ来年はアマミネくんの番だね」
そう言って笑うと、一つ年下のセンターくんは当たり前という笑顔で返してくれた。
「まあ、そうなりますね」
アマミネくんが言い終わるかどうかというタイミングで事務所のドアの開く軋んだ音が聞こえた。後ろ手に押す力に任せるのではなく、ドアノブを持って静かにドアが閉められる。もうその時点で誰が入ってきたのかはわかっていたけど、顔を上げるとやっぱり制服にコート姿のマユミくんと目が合った。
「おはよう、秀、百々人」
声をかけられた僕らも口々に挨拶を返す。夕方になってから交わす「おはよう」の不思議な感覚に戸惑うこともあったけど、今ではもうすっかりごく当たり前の日常の一つになってしまった。放課後学校でたまたま隣のクラスの子に声をかけられたときに「おはよう」と答えてしまい、怪訝な顔をされたことだってあるくらいだ。
今日は少し暖かかったからか、マユミくんはいつものマフラーを着けてこなかったみたいだった。忙しく走り回ってるせいで基本的に身軽な格好のぴぃちゃんや、冬物をクローゼットの奥から引っ張り出すのがずっと億劫だった僕なんかに度々差し出されてきたあのマフラーだ。
「あ、そういえば鋭心先輩も卒業式では挨拶するんですか。今ちょうどその話をしてて」
コートをラックにかけているマユミくんの背中にアマミネくんが問いかける。
「ああ。お前達もそうか?」
俺は違うけど、百々人先輩は送辞を読むらしいです。そんな二人のやり取りを聞きながら僕はそっと腰を上げる。これからマユミくんの口から直接卒業式の話を聞くことになるのかと思ったら、ほとんど反射的に体が動いてしまった。
「マユミくんも来たことだし、まだちょっと早いけどぴぃちゃんに声かけてくるね」
「あ、はい、お願いします」
妙に話題を切り上げたと思われないように、自然な笑顔を心がけた。そそくさと廊下に出た僕は、なんとなくマユミくんの仕草を真似てそっと静かに扉を閉めようとしたけれど、二人が卒業式の話をし始めたのが聞こえてきてしまった。思わず勢いをつけてドアノブを引く。
扉の閉まるバタンという音に弾かれたみたいに、体が勝手に会議室を目指して短い廊下を走り出す。
ぴぃちゃんは今ごろ僕たちのために会議室のセッティングをしているはずだ。その顔を見たら少しだけ安心できそうな気がする。そして同時に、いま安心して、それで一体何になるんだろう、どうしてこんなことしてるんだろう、と頭の隅で他人事みたいに考えている。
僕が逃げて回ったとして、時間が過ぎることも明日が来ることも、マユミくんが高校生じゃなくなることも、全部仕方のないことだって分かりきっているのに。
*
先生からは数年分、過去に先輩たちが残していった送辞の原稿のコピーを渡されていた。それを参考にすれば一時間ほどで草稿は仕上げられるだろうというのが当初の算段だった。けれども、夜に一人の部屋で机に向かってみてもこのためにペンを握る気にさえなれなかった僕は、場所を変えて一息に仕上げてしまうことを思いつく。三人が揃ってオフの日を選んで、事務所の隅っこを使わせてもらえるよう山村さんとぴぃちゃんにこっそりお願いしておいた。
平日の夕方、この気の進まない仕事を渡された放課後とほぼ同じ時刻なはずなのに、窓の外はあの頃と比べまた少し明るくなっている。僕が何もできないでいる間にも季節は確実に進んでいると気付かされて、また胸がちりちりと焼けるような心地がする。よく見ると、誰かが換気のためにそうしたのか窓がほんの少し開いていた。暮れかけの夜の空気を深くは吸い込まないように、浅く小さく呼吸をしながら細く開いていた窓を閉めた。
……早く仕上げてしまおう。
清書はどうせ式典用の原稿用紙に書かないといけないから、草稿の段階の今は適当なルーズリーフにシャープペンだ。丸写しにならないよう適度に言葉を自分で補いながら、破綻がないよう文章を組み立てていく。そうしていると小学生の頃に作文コンクールに応募していたときの事を思い出した。きっかけは小学一年生のとき。ただ夢中になって書き殴った作文がたまたま優秀賞をとって、両親、特にお母さんはそれをとても喜んだ。百々人には文章を書く才能があるのかもしれない、きっと次は一番を取りましょうね、と。それで翌年から毎年、賞を意識しながら応募を続けるようになったけれど、結局最初に書いた作文よりいい成績は残せずじまいだった。そんなことばかりだ。
一年生の頃の自分は一体何をそんな夢中になって鉛筆を握りしめていたのだろう。テーマは「楽しかった思い出」だった気がするけど、今となってはそれがどんな思い出だったのかさえ思い出すことができなかった。
取り止めもない考え事をしながらでも問題なく作業は進んだ。やっぱり場所を変えたのは正解だったらしい。ただ、お決まりの『先輩との思い出』を振り返る部分では少し考え込んでしまった。でもそれも別に僕個人の記憶である必要はなく、学校行事の成果とか、各部活動の大会成績とか、そういった客観的な事実を並べるだけでも十分なんだと気がついてからは早かった。記憶の中にある誰かや誰かたちの受賞経験、大会での功績、それに対する当たり触りのない賛辞の言葉を紙の上に並べて整える作業を繰り返しているうちに、文書量は折り返し地点をかるく通り過ぎた。やってみると案外時間はかからなかった。なるべく心を無にして手を動かすのがコツみたいだ。
文章が結びに向かって盛り上がりを見せていく中で、僕はどこか冷静な頭のまま自分の手を見つめている。殊更きれいな言葉を選び取っては捨て、ちょっとやりすぎかな、と思いまた違う言葉を当てはめて前後のつながりを整えていく。
その時、事務所の扉が開く音がした。
聞いていた時間より少し早いけど、ぴぃちゃんが戻ってきたのかな。僕も伝えていたより早くまとめ終わりそうだから、一緒にのんびりできるかも。呑気に顔を上げたのと、ドアが静かに閉じられるのは同時だった。つまり、これはぴぃちゃんじゃない。息を呑む隙もなく見慣れた後ろ姿がこちらを振り返る。
「百々人、いたのか」
「……マユミくん」
「奇遇だな」
学校帰りに今度の仕事に必要な書類を出しに来たという彼は、鞄から取り出したクリアファイルをぴぃちゃんの机の上に置くと何かメモを書き残しているようだった。急ぎの書類ではないけれど近くを通りかかったから立ち寄ったという旨を、書き置きしながら彼が言う。そうなんだ。お疲れ様。声だけでも笑って聞こえるように注意深く相槌を返しながら、僕はその隙に自分の目の前に広げられた紙一式を音を立てないようそっとひっくり返していく。
「百々人は、学校の課題か何かか?」
マユミくんがこちらに向き直って改めて尋ねてくる。視線はテーブルの上に向けられていた。僕は努めていつも通りに聞こえるよう当たり障りない事だけ言う。
「うん、そんなところ。家だと集中できなくて、ぴぃちゃんにお願いしちゃった」
「そうか。何か俺に手伝えることはあるか」
そうくるか、と僕は思った。でもマユミくんていつもそういう人なんだった。気が回らなかった僕が悪い。
「えっと」
なんにも答えを準備できていないけど、何か言わなきゃ。卒業式の送辞を書いていると素直に返したらこの後はきっと卒業式の話にならざるを得ないだろう。それは避けたい。この後に及んでまだ逃げようとしている自分が嫌だ。でも、逃げられるものなら逃げてしまいたいのも本心だった。
もう終わるところだから大丈夫、とか生徒会の資料だから本当は外に出しちゃいけなくて、とかそれらしい言い訳がいくつか思い浮かぶ。実際、もう終わるところなのは本当だ。でも、口や喉や舌といった言葉を発するための器官と、今こうして物を考えたり嫌がったり怖がったりしている器官とがまるでつながっていないみたいに、何も声の形にならない。開きかけた口を閉じて、また開いて、閉じる。そうやって金魚みたいにぱくぱくしながら応えあぐねている僕の様子に、腕を組んで待っていたマユミくんが肩をすくめる。
「……聞いてみただけだから、言いたくないなら言わなくていい」
彼が話しはじめる前に小さく息をこぼしたとき、僕はとうとう呆れてため息をつかれてしまったんだと思った。でも、どうやらさっきのは控えめな苦笑いか何かだったらしかった。今も口元を笑みの形にしているマユミくんに、意外だなと僕は思う。てっきりライブに向けて僕が一人で潰れそうになっていたときみたいに、どうした、言ってみろと先を促されるものだと思っていた。マユミくんはまだ伝えたいことがあるようで、それに、と柔らかい声で言葉を続ける。
「百々人なら大丈夫だろう。お前はよくやっている」
「……」
本当に、本当にそうだろうか。僕はきみが僕らと同じ高校生では無くなってしまうことがたまらなく嫌で、無駄だとわかっていながら逃げ回っているだけなのに。
マユミくんはいつもこうやってごく自然に僕を褒める。ぴぃちゃんもよく僕のことを褒めてくれるけれど、あれは僕が褒めてほしいといつもせがむからだ。今ほど仲が良くなる前の僕は、彼が僕を褒める度にただ「そんなことないよ」と返していた。マユミくんの真っ直ぐな言葉がくすぐったかったという照れみたいなものもあったけど、ただ純然たる事実として、「そんなことはない」のだった。けれどもいつだったか、僕にそう言われた彼の眼差しが見たことのない憂いを帯びる瞬間を目にしてからは、無闇に否定で応じるのをやめた。あれはたぶんだけれど、「悲しい」。そういう顔だった。考えてみればそれもそうだ。誰だって、自分の言葉をいつも否定で返されていたらそんな気持ちになる。だから努めてこう返す。
「……ありがとう」
彼はほんの少しだけ、でも満足そうにそっと目を細める。それで僕は今回も反応の仕方を間違えずに済んだのだと分かる。マユミくんはキッチンの方へ足を向けた。僕の座っているソファの方ではなかったことに内心ほっとする。
「何か、温かいものでも淹れようか」
振り向きざまに彼が言って、場違いに僕の心臓が跳ねた。本人には言ったことがないし自分でも忘れていることがあるけど、僕はマユミくんがたまにするこの「〜しようか」という言い回しに不思議な魅力を感じているらしかった。
問いかけの体裁を取りながら自分の意思を表明しているみたいにも聞こえるし、ごく軽い提案のようにも、誰かに許可を求めているみたいにも聞こえることがある。今も肩越しに僕を見つめる瞳の奥に、揺らぐことのない芯の強さと、誰かに頷いてもらえるのを待っている子どもみたいな幼さが一緒にある気がして、どうしてこんな風に感じるんだろうと僕は思う。
雑誌などのプロフィールに書き連ねられているような事柄以上に、マユミくんが僕らに自分の生い立ちや家族の話をしてくれたことはほとんどない。僕だって僕自身と家族の事情を二人にまだ話したことはないし、別にそれでいいって思っている。
そのことと関係があるのかは分からないけど、こんなに落ち着いていてしっかりしている印象のマユミくんのことが、たまにすごくからっぽに思える時がある。僕たちはちょっと似ているのかもしれなくて、でもやっぱり全然違っていた。他人の期待や理想を一身に背負って立つマユミくんの背中は、それでもいつも真っ直ぐだった。
「百々人?」
「……あ、ごめんね」
手伝うよ、とテーブルに広がる紙の束を手早くまとめて鞄の中に突っ込み、僕はソファから立ち上がった。
マユミくんがお互いのマグカップを用意してくれて、その間に僕はコーヒーメーカーに豆をセットしておく。豆はこの間アマミネくんが事務所のみんなにと差し入れしてくれたものだ。コーヒーの酸っぱさが苦手と僕が言ったのを覚えていてくれて、飲みやすいものを選んだと言っていた。サーバーにコーヒーが落ちはじめたのを眺めながら、僕はこれから振る話題について考えを巡らせる。卒業や彼の進路の話さえ絡んでこなければ、僕はもともとマユミくんとお話しするのが好きだった。
さっきの書類、どんなお仕事のもの?アンケートとか、なにかの承諾書とか?
そういえば先週差し入れに持って来てくれた大きなはっさく、剥くのが大変だったけどおいしかったよ。
あ、今度のダンスレッスン、開始時間が30分遅くなったって聞いた?その分後ろも30分伸ばしてもらえるみたいだよ。この間のライブ、お客さんの歓声がすごかったね。次のライブはもっと頑張りたいよね。
そのどれもを言葉にするより先に、隣に立っているマユミくんが口を開く。
「百々人のところは、再来週の水曜が卒業式だそうだな」
本当に、その言葉を聞くまで数分前に自分がしていた悪あがきのことをすっかり忘れていた。うまくやり過ごせた気がしていたけどそれは僕がそう思っていただけだった。ぼす、という音と軽い衝撃が体に走って何かと思えば、僕はほとんど無意識に背中を狭いキッチンの壁にもたれかけさせていたらしかった。マユミくんの声で発された“そつぎょう”という音の響きがまだ耳に残っていて、心臓がきゅっと縮むような心地がしている。両腕を自分の背中側に回して、右手と左手を握り合わせて力を込めた。そうしないとこのまま立っていられないと思った。
「……うん」
「この間、秀がそう言っていた」
きっとこの間の打ち合わせの日だろう。もう、アマミネくん、どうしてそんな余計なこと言うかな。こんなのは随分身勝手な苛立ち方で、いっそ八つ当たりって言うんだとわかってはいるけれどどうしようもできない。そんな心のうちをなるべく表に出さないように気をつけながら、どんな言葉で返そうか暖房で乾燥ぎみの唇をすり合わせて考えていたら、マユミくんが言った。
「俺も同じ日程だ」
「……そ、」
そうなんだ。偶然だね。僕の口はかろうじてそんなような言葉を発した。いつその日がやってくるかなんて知らなくてよかったし、それになにも同じ日じゃなくたって。今まできちんと向き合ってこなかった分、ここでツケが回ってきたような感じがする。卒業式の話題になっただけでこんな風になってしまうのに、卒業したらどうするのなんて質問、どう頑張ってもできる気がしなかった。
どうしてこんなに受け入れがたいんだろう。なにがそんなに怖くて不安なんだろう。マユミくんはこの春に高校を卒業する。そんなの生きていたら誰だっていずれは通り過ぎる当たり前のことだ。
そっと隣にいる彼に視線をやると彼の目は正面のコーヒーメーカーに向けられていた。いつもと同じように、まるで上空から見えない糸で引っ張り上げられているみたいに正しく伸びた背筋で両腕を組んで立っている。
「……そっか」
特に意味のない相槌をうつ。一体何がそっかなのか、僕にも全然わからない。彼に倣って視線をコーヒーメーカーに向けて、真っ黒な液体がぽたぽたとガラスのサーバーの底に溜まっていくのを眺めた。普段なら香ばしくていい香りだと思えるはずなのに、なんだか今はやたらとその焦げたにおいが目と鼻に沁みるようで鬱陶しく感じた。
「送辞を読むと聞いたが、準備は順調か」
「……うん」
これまでが順調だったかは少し怪しいけど、草稿はもう一息で仕上がるところまできた。でも、同じ日程だと知ってしまったことで、もうその当日をどうやって待ち構えたらいいのか分からなくなってしまいそうだった。「早く終わればいいのに」と「もうずっと来なくていいのに」をどちらも抱えながら過ごすことになるのだろう。
「そうか。さすがだな」
追い討ちのようにマユミくんがそう言った。「そんなことないよ」は勿論、「ありがとう」さえも言えなくて僕は黙り込んでしまう。何も言おうとしない僕の方へ彼が顔を向ける気配があり、気づかうような視線が頬を撫でていく。ぽたぽた。コーヒーの落ちる音だけがキッチンに響いて、僕は鼻をすすりたかったけど今鼻をすすったら彼に余計に気をつかわせそうな気がして、少しだけ顔を上げることでなんとか堪えようとした。
ぽつりとマユミくんが言った。
「百々人が送辞を読んでいる時、ちょうど俺も答辞を読んでいるかもしれないな」
え、と思わず聞き返したら、マユミくんではなくコーヒーメーカーが「ぴー」とコーヒーの出来上がりを知らせる電子音で答えた。
咄嗟に動くことができないでいると、マユミくんは用意していた二人分のカップに手際よくコーヒーを注ぎ分けて、空っぽになったサーバーを流しに置く。彼がこちらを振り向くのと同時に床に視線を落とした僕の、やたらカラフルなマグカップが胸の高さに差し出されてくる。視線を上げると、彼はうっすらと湯気みたいに微笑んでいた。ほんとうに、うっすらと。
「同じ日程なら、そういうこともあるかと思った」
その笑い方があんまりきれいだったので、手渡されたコーヒーの水面に視線を落とす。蛍光灯の白っぽい光が反射して、それは鏡のようになっていた。覗き込むと、自分で思っていたより泣きそうな表情の自分がそこにいた。
「すまない。気がつかなかった。ミルクと砂糖、いくついるんだ?」
なかなかカップを受け取らない僕の反応をそういうものと受け取って、マユミくんが戸棚の方へ体を向ける。僕は、ずっと体の後ろに回していた手をようやくほどいた。強張った手は一度宙を掴んだけど、再び伸ばされて離れて行こうとする彼の制服の裾をしっかりと掴む。
「……いらない。マユミくんと一緒のがいい」
キッチンに足を踏み入れてから初めてきちんとマユミくんの目を見て話した。マユミくんの綺麗な色をした目が一瞬大きく見開かれて、笑んだ形に目尻がゆるまる。
「そうか」
改めて目の前に差し出されたマグカップを受け取りながら、思ったより大きな声が出てしまった事に自分でも驚いていた。ずっと力を入れて握っていたから、右手も左手も指先が白くなっていた。カップから伝わる温度のおかげで指先に体温が戻ってくる。コーヒーをゆっくり一口含むと湯気で鼻先がそっと湿った。アマミネくんの選んでくれた豆は、本当に酸味がほとんどなくて飲みやすかった。
ふいに寄りかかっていた壁からわずかな振動が伝わってきてカップから顔を持ち上げる。すると彼も僕と同じように壁に背中を預けていた。どんな表情でいるのかが気になって横顔を見ると、その眼は狭いキッチンの中でまるでどこかずっと遠くの景色を見つめているかのようだった。
とても端正な顔をした人だと、今さらだけれど思う。その瞳が動いて僕を見た。まるで僕が何か言うのを見守っているようだった。
ねえ、どこにも行かないで。
咄嗟に口からそんな言葉がこぼれそうになった。慌ててコーヒーでそれを喉の奥に流し込んだとき、どうしようもない寂しさを自覚した。やっと、僕は小さく鼻をすすった。
それから僕らは互いに何も言わずにただコーヒーを飲んだ。先に飲み終わってしまったマユミくんが使った器具や自分のカップを洗おうとしだしたのを止めて、僕やっておくから、と口を開いたのが随分久しぶりだった。
あまり遅くならないように、根を詰めすぎないように。そんな言葉を残して、彼は帰っていった。
*
久しぶりに制服をちゃんと着た僕は、在校生代表として自分の名前が呼ばれるのを待っている。
来賓席の近くに確保された僕の席は講堂の高窓から差し込む光がちょうど入ってくる位置だった。日向は心持ち暖かかったけど、式次第が順調に進んでいく内に僕の座席はすっかり日陰になってしまう。
指先が少し震えている気がする。寒いのかなと思ったけど、僕は相変わらず緊張しているのかもしれなかった。小学校や中学校、それから高校で生徒会長をやるようになってからこれまで何度も大勢の前で話す機会はあった。いい加減に慣れたっていいはずで、ましてや今はアイドルとして仕事をしているのに。
今頃、マユミくんもこんな風に自分の名前が呼ばれるのを待っているのだろうか。あるいは、もうすでに舞台の上にいて、いつも通り爪先から頭のてっぺんまで神経の行き届いたような佇まいでマイクの前に立っているのだろうか。どちらにしても、マユミくんの指先は震えてなんかいないんだろう。
ふいに聞き覚えるのある単語が講堂に響いて、あれ、と思ったら、それは教頭先生が読み上げた僕の名前だった。はいと大きな声で返事をして立ち上がり歩き出す体は僕のものだけど僕じゃないみたいだった。壇上にたどり着いた僕の体は、原稿を広げてそこに書かれている言葉を読み上げはじめる。送辞。二年、花園百々人。
僕には才能なんて何もないから、ぜんぶ努力でなんとかしてきた。ひたすら反復練習して、イメージを繰り返して、体に覚え込ませる。楽器もスポーツもそう。意識しなくても、スイッチを入れれば体が勝手にそう動くようになるまでやる。
「日差しがきらめき春の訪れが待ち遠しい季節となりました」
……そうして本当に春がやってきてしまった頃には、あの制服を着たマユミくんはもうどこにもいない。もしかしたらそれだけのことで何も変わらないのかもしれない。でも、例えば僕らが家に帰らなければならない時間になっても、彼一人だけは現場に、レッスン室に残ることが許される。一緒に帰ろうって言っても、今まで通りそうしてくれるだろうか。些細なことかもしれないけど、僕にはたったその程度のことさえひどくもの寂しい。
いつもならもっと無心になってやれるのに、カンニングペーパー、もとい原稿が目の前にあるからか僕の頭は余計な事ばかり考えてしまう。早口になりすぎないように、淡々としすぎないように、適度に抑揚をつけながら僕は練習通りに原稿を読み進めていく。
「今日の佳き日を迎えられたこと、心からお祝い申し上げます」
息継ぎの瞬間に顔を少し上げたら、舞台から自分と同じ制服を着た人たちが大勢見えた。それと同時にワックスのきいた床に窓から入る光が反射するのが眩しくて目を細めた。……衣装を着てステージに立った時のことを思い出す。パフォーマンスの途中、舞台照明に照らされながら立ち位置を入れ替える瞬間、マユミくんと目があった。目が眩むくらい強い光が瞬いていたのに、彼が僕に微笑む顔だけはなぜかはっきり見ることができた。その眼差しが何よりも眩しいと思った。ピンスポットの中に一人でいるときよりずっと。
原稿は気づいたらもう半分以下になっている。あんなに書くのに気が重く時間もかかったくせに、実際に読んでみると本当にあっという間だ。またふと思う。今、この瞬間、マユミくんはどうしているだろう。どうせならマユミくんも答辞を読んでいたらいい。たった一人で舞台に立つ彼の背中を思い浮かべる。
「明日からは校門で挨拶を交わすことも、廊下ですれ違うこともないのだと、思うと、寂しさが、」
気がつくと喉の奥が狭くなってしまって、声も震えていた。いやだなあ、どうして。練習では一度もこんな風にならなかった。
「胸に、こみあげ」
マユミくんがいつもそうしているみたいに、正しい姿勢で立とうとする。ねえ。いつもどうやってあんなに真っ直ぐ立っているの。上手くいっているのか僕にはよく分からない。心がぐらつきそうになった時、隣にいてくれる人がここにはいなかった。彼がいないステージの上。なんだかぼんやりしているな、と思ったら実際に視界が少し滲んでいるのだった。
そんな日がいつか来るのだろうか。高校を卒業したらどうするのと、今日までついぞできなかった問いが頭の中を駆け巡った。
「その存在が、どれほど頼もしく、心の支えになっていたかということに、気付かされます」
二週間前、半ば捨て鉢になりながら作った原稿の言葉に、僕は今更文字通り気付かされていた。
はっと我にかえると、僕は賑やかなクラスメイトたちに囲まれて自分の教室にいた。送辞の途中からの意識が曖昧だけど、スイッチの入っていた僕の体は最後までちゃんと原稿を読み切ったらしいことが皆の口ぶりから分かる。
卒業式は終わってしまった。じゃあきっと今頃マユミくんも。誰かが言った、花園、すごくよかったぞって鼻声の言葉に、クラスメイトたちがこちらを向いて頷いているのが見えた。
*
卒業式のその日は放課後の予定が特にない日だった。アマミネくんは通常通り学校の授業があるし、マユミくんもこの日ばかりはお家の予定なんかがあるだろうとぴぃちゃんが空けてくれていた。
今日に限ったことではないけど真っ直ぐ家に帰る気がしなかった僕は、窮屈な制服をいつもの通りに着崩してから事務所に足を向けた。ぴぃちゃんには原稿を作る時に場所を作ってもらったし、無事に役目を全うできたことを報告したいと思った。
とはいえ、達成感のようなものはほとんどなかった。先生やクラスの子達には褒められちゃったけど、本当にあんなのでよかったのかな。式の後でのみんなの反応を思い返しながら考える。感情が伝わってくるいい送辞だったとか、今まで送辞で泣きそうになったの初めて、とかそんな言葉をもらったけれど、そうやって褒められるには随分不誠実なことをしていると思う。
だって、あれは三年の先輩たちじゃなくて、マユミくんのことを考えながら読んでいただけだ。
「おはようございます」
事務所のドアを開けると、人の姿は見えなくても誰かがいる気配がした。夕方というには早い時間で、でも冬の名残でまだ日はそんなに長くない。ブラインド越しに部屋に入ってくる光にはほんの少しオレンジが混ざっている。
「ぴぃちゃん?あのね、ちゃんと読めたよ」
デスクの方に向かって足を踏み出したところに、思っていたのとは違う声が反対側から返ってきた。
「プロデューサーなら、つい先ほど打ち合わせで出ていった」
ばっと振り返ると、そこには今日何度も頭の中で思い浮かべたその人が立っていた。手には大きな花束を抱えている。
「マユミくん」
呼ぶなりその場に固まってしまった僕に、その人は少し困ったような笑みを向けて花瓶がどこにあるか知らないか、と言った。
そもそも事務所に花瓶があるのか僕は知らなかったけれど、マユミくんは一度見たことがあるらしい。それで、そういった備品がまとまっているところを二人で探してみることになった。
僕が開けた段ボールのうちの一つにはパーティーグッズがまとまって入っていた。風船や花紙、オーナメント、クラッカー、変な帽子。みんな誰かをお祝いするために別の誰かによって準備された物たちだ。中には自分たちで実際に使ったことのある物もあって、ここに片付けてあったのか、と言いながらそれらをもう一度段ボールに仕舞い込むマユミくんの手つきは思い出ごと慈しんでいるみたいに丁寧だった。
それを眺めていただけなのにじわじわ寂しさが押し寄せてきて、その後の僕は手元に集中しているふりをしながら黙って作業をこなしていった。
結局、花瓶はキッチンの上の収納の中から見つかった。
「これ、学校の人から?」
「ああ。生徒会の面々からだ」
水を汲んだ花瓶をソファの前のテーブルに置きながらマユミくんが答える。見ると「会長へ ご卒業おめでとうございます」とカードが添えられている。
「会長へ」
カードの文字を読み上げながら斜め向かいに座るマユミくんの方を見た。
「……会長、」
マユミくんをそうやって呼ぶのは不思議な感じがした。普段なら自分が呼ばれている呼称だ。
「ああ、カードのことか」
「僕もマユミくんのこと、会長って呼んでみたくなっちゃった」
「もうすでに会長ではないんだがな」
随分前に引退している、とほのかに笑う。僕は自分の知らない生徒たちから会長と呼ばれるマユミくんを思い浮かべた。こんな大きな花束だ。マユミくんのメンバーカラーを意識したのか赤い花が多かった。僕たちがそうであるように、きっと学校の人たちも彼を慕っていたんだろうと思う。ここまで抱えて歩くのも電車に乗るのも大変だったんじゃないだろうか。目立つし、僕ならちょっと恥ずかしいと思ってしまうかもしれない。それに、僕では大切にできない気がする。いまだに自室のあちこちに転がっている賞状やトロフィーを思い出す。
後ろ手に体の影に隠すようにして持って、でも結局耐えきれなくなって、駅や公園、街角でなるべく大きなゴミ箱を探す。そんな自分が容易に想像できた。……マユミくんは、そんな僕をまた止めてくれるだろうか。
嫌な想像を頭の隅に追いやって、花束を包んでいた包装紙を外していくマユミくんの様子を見守る。
「……きれいだね」
「ああ。事務所に飾ると言ったら後輩達も喜んでいた」
お家じゃなくてよかったのかなとふと疑問に思ったけど、ご両親だって職業柄たくさんお花をもらうのだろうしと考える。暮らしている人の数を花束の数が軽く追い越してしまいそうだ。
「プロデューサーに用事だったんだろう。巻き込んですまなかったな」
「ううん、この後何も予定ないから」
「そうか。送辞も『ちゃんと読めた』ようで、よかった」
小さく息を飲む。事務所に入ってきた時にマユミくんをぴぃちゃんと間違えた僕自身がそう言ったのだ。ぴぃちゃん相手になら褒めてほしくてああ言えるけど、マユミくんを前にしてもちゃんと読めたと言える出来だっただろうか。少し後ろめたさがある。
「……先生や友だちからは良かったって言ってもらった。泣きそうになったって」
「そうか。それは俺も聞いてみたかった」
花瓶に花を差し終えたマユミくんが顔を上げ、僕に笑みを向ける。その瞬間、「きみだったんだよ」と僕は心の中だけで唱えていた。つい数時間前、舞台の上で数百人を前に口にした言葉の中のいくつかは、本当はこの人たった一人に聞いてほしいものだった。
「あのね、」
送辞を読んでるとき、ずっとマユミくんのこと考えてたんだ。そしたら自分でも気付かないうちに声が震えてて、泣きそうだった。
そう言えたらよかったけど、こんなこと言ったらきっと困らせるから言えなかった。
「どうした」
こんなときに限って、今まで言われた中で一番優しい「どうした」だった。僕が何も言葉にできずにいるのを、何秒でも何分でも、いくらでも待っていてくれそうな気さえした。目を真っ直ぐ合わせられなくなって視線を下げると、鮮やかな色の制服の胸につけられた赤い花が目に留まる。それは本物の花ではなくて、真っ赤なリボンをバラに模して束ねた作り物だ。
「……それ、その赤いの、もらってもいい?」
すごく小さな声で僕はやっとそれだけ口にした。
「ああ。気に入ったものがあるなら、」
「あ、違うよ、花束の方じゃなくて……その、それ」
花瓶に生けたばかりの花に手を伸ばそうとしていたマユミくんを止めて、彼の左胸を小さく指差す。
「これは、造花だが」
「うん。でも、それがいい」
「そうか」
頷いてその場でピンを外しながらマユミくんが言う。
「卒業式に、こうして人に頼まれて何かを渡すのは初めてだ」
作りものの赤い花をマユミくんの掌から受け取る時、互いの指先がそっと触れた。その時マユミくんが僕に何かを伝えようとして口をわずかに開く。
彼にしては珍しく、逡巡するような間があった。普段あまり目にすることのない様子が珍しくてじっと見つめていたら、観念したように一度瞬きをする。次の瞬間にはいつもの真っ直ぐな眼差しでこう言った。
「それがお前でよかった、百々人」
思わずまだ触れたままの指先を、なんなら指先だけじゃなく差し出された掌を造花ごと握りしめたいような、縋りつきたいような衝動に駆られた。ただ、それをやり過ごして小さくうん、と返事をした。
あの後マユミくんは用事が済んだので帰ると言って、すぐ事務所を後にした。本当に花束を飾るためだけに事務所へ来たらしかった。僕はぴぃちゃんが戻ってくるまで事務所でぼんやりと過ごした。
窓から入ってくる光が朱色に変わりながら細く長くなって、さっきまでマユミくんが座っていたソファの上や花瓶を照らしていた。ほんの数十分前の出来事がなんだか幻のように思えて、その度にポケットから造花を取り出してはそれを眺めた。
ガラスの花瓶に夕日が反射してきらきらと眩しい。テーブルにできた花瓶の透き通る影を見ながら、これはどうやって絵に描いたらいいのだろう、いつか透明なものを絵の具で描けるようになれるだろうかと考えたりした。
打ち合わせから戻ったぴぃちゃんは、オフのはずの僕が事務所でずっと待っていたことに驚いていた。自分だってお仕事で疲れているだろうに、いつも通りに僕を労ってくれ、それでやっと今日を無事終えられるような気持ちになれた。
誰もいない家に帰ってきた頃にはすっかり日が暮れていた。デリバリーの食事が届いていたけど、一旦それは放っておいて自分の部屋に向かう。なんだか、ぴぃちゃんに初めて出会って名刺をもらった時に似ているなと思い出す。
どこがいいだろう。なんとなく、ぴぃちゃんの名刺みたいに分かりやすくいつでも見えるところに飾るべきじゃないと思った。僕以外誰も見ないところ。でもそんな場所はこの家の中にいくらでもある。
今朝起きたときのままくしゃくしゃのベッドに背中から倒れ込んで天井を見た。手持ち無沙汰になってしまい、造花の後ろについている安全ピンをもてあそぶ。ふとピンが外れたのでその流れのまま、僕はその花を自分のパーカーにつけた。
もともと派手な色合いの生地の上で、赤色はその花一つだけだった。けれどもそれは当たり前みたいにずっと僕の左胸にあったものみたいに思えた。花を包むみたいに心臓の上に手のひらを置いてみる。
高校、卒業したらどうするの。ずっと彼に聞いてみたくて、でも聞くのが怖くて、ついに聞けずじまいだった。でも不思議と後悔や後ろめたい気持ち、胸にわだかまっていたものが消えて無くなっていた。その代わり、伝えたい言葉が自分の中で大きく膨らんでいくのを感じた。どうして今まで忘れていたんだろう。
左胸に手を置いたまま、僕はポケットからスマホを取り出して画面を操作する。呼び出し音が聞こえてきて、思わず左胸に置いた手に力がこもる。一回、二回と繰り返すたびに鼓動の音が速くなるのが分かる。
きっとマユミくんはいつもみたいに「どうした」って言って、電話口でも僕が何か言うのを待っていてくれる。そうしたら僕は今度こそ、ちゃんと自分の声で彼に伝えなくちゃならない。
卒業おめでとうって、今なら心の底から言える気がする。