髪を切ろうか 敦がデスクでPC作業をしているが、どうにも前髪が目に入ってきて集中できない。
「髪の毛切らなきゃなぁ……」
前髪をいじりながらつぶやくと、背後からナオミが近づいてきて声をかけてきた。
「あら、敦さん。お困りの様子ですわね。ナオミがいいものを差し上げますわ」
そう云うとナオミは振り返った敦の前髪を素早く顔の横にまとめると、何やらヘアピンで留めてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「いえいえ。お礼には及びませんわ」
そう微笑むとナオミは長い黒髪をさらりと翻して給湯室の方へと消えていった。
しばらく敦がPCに集中していると、入口のあたりで国木田の怒声と適当にあしらう太宰の声が聞こえてきた。
「――だから太宰! 貴様はどうしていつもそうなんだ!」
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