月夜ふうと月明かりが差し込んで窓の外を見上げる。
少し厚くかかっていた雲が晴れて、満月が灯りの消えた部屋の中まで鈍く柔らかい光を届けた。
「今日、満月だったのね」
まどろむ瞳でそう言うマァムの少し乱れた髪を梳いてやる。
「……そうだな」
そう呟いて、柔らかな月明かりを見つめたままのヒュンケルに、マァムは閉じかけていた瞼を開けて尋ねた。
「何か、考え事、してる?」
「……いや。……昔、月をよく見たんだ。城の入り口で」
「地底魔城の、入り口?」
「ああ。あの階段は遊び場だった。そこしか空が見られる場所はなかったんだ……闘技場には、近寄るなと言われていたから」
マァムは何も言わずに、そっとヒュンケルの頬に触れた。ヒュンケルはその指先を柔らかく絡めてしばらく見つめた後、微笑む。
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