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    bin_tumetume

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    ##ほぼ100日冬彰チャレンジ

    7日目『火曜日、午後六時、某ゲームセンターにて』 軽快な音楽が画面から流れ始め、オレは負けを認めて突っ伏した。これを聞くハメになるのは、これで七回目だ。つまり、オレは対面の機体の先にいる男に七連敗していることになる。
    「あ~、もう。やめだ、やめ!」
     上半身を仰け反らせながらぐっと凝り固まっていた筋肉を解すと、次のコインを催促するコンテニュー画面を無視して低いイスから立ち上がる。冬弥の得意なパズルゲームだったから実力差があることは分かっていたが、冬弥の画面に一度も危険を知らせるBGMを鳴らすことすら出来なかった。オレがこれ以上やる気を失ったのが分かって、冬弥も席を立つ。自販機へ向かうと、素直に後ろを着いてきて横に並ぶ。
    「もうおしまいか?」
    「オレじゃ冬弥に勝てないことはよーく分かっただろ」
    「それならハンデを設けようか」
    「それで勝っても悔しいだけだからぜってー嫌だ」
    「本当に彰人は何にでも手を抜かないな」
     ゲーム大会の一件から少しは冬弥に付き合ってぷよぷよでもしてみようかと思ったが、案の定、オレの実力ではまったく相手にならないらしい。今度ここで草薙や鳳を見かけたらとっ捕まえて練習台にしてやろうと心に決める。冬弥と互角で戦うには、まずはあいつらを倒せるくらいにならねえと。
    「連鎖を考えるのが苦手なんだよな。コツとかあんのか、ああいうの」
    「考えるというよりも、ほとんど反射だな。連鎖の型があるから、反復していれば次第に頭に入る。計算式みたいなものだ」
    「うげ。萎えるようなこと言うなよ……」
     互いに炭酸飲料とブラックコーヒーを購入して、休憩スペースで一休みする。オレにしては頭を使ったから、炭酸の甘さが疲労した脳に染み渡る。一口で半分くらい飲み干してしまったオレに対して、冬弥は缶コーヒーのプルタブを弄んでいた。また何か考え込んでいるらしい。
    「どうした?」
    「……俺の趣味に彰人を付き合わせてしまっているな」
    「別に気にするなよ。今日ゲーセンに誘ったのはオレの方だろ」
    「でも、あまり楽しくなかったんじゃないか?」
    「そりゃ、あれだけボコボコにされればな」
     とは言っても、一度でも冬弥が手を抜いて勝ちを譲ったりすればオレは怒り出していただろう。冬弥だって、それを分かっているからこそ完膚なきまでに叩きのめしたんだ。
    「まあでも、お前となら、たまにはこういうのもいい」
     オレがゲームセンターに行きたいと言ったときの冬弥は、そりゃあ花でも周りに撒き散らしてるんじゃないかと思うほどに嬉しそうなオーラを放っていた。好きなことをしているときの冬弥は生き生きしていて、普段のクールさが鳴りを潜めて可愛いんだ。それに、オレだってアパレルショップに冬弥が付き合って来てくれたときは嬉しいんだから、ちょっとくらい返してやりたいと思ったっていいだろ。
    「……そうか」
     ようやく安心した様子で笑った冬弥が、手に握ったままの缶コーヒーのプルタブに指を引っ掛けて開栓する。かこ、と金属が擦れ合う音がした。
    「にしても、ぷよぷよじゃ相手にならなさ過ぎたけどな」
    「それなら、音楽ゲームはどうだろう。パネルを足で踏んだり、ダンスに近い動きをするものもあるから、慣れたらいい勝負が出来ると思う」
    「ふうん。じゃあ、次はそれやろうぜ」
    「分かった」
     確かに、体を動かすタイプのゲームや反射神経なら冬弥にだって負けない自信がある。これはゲーマーである冬弥なりのハンデってやつだろう。返事をしながらも律儀に頷いた冬弥が勝気に眉を釣り上げる。
    「負けないぞ、彰人」
    「オレだって負けねえし」
     負けず嫌いの心に火をつけあいながら、オレは互角に戦えるゲームがあれば罰ゲームを提案しても燃えるかもななんて計算していた。罰ゲームは定番で相手の言うことをなんでも一つ聞く、なんてのがいいかもしれねえな。
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