子犬にはご法度なので昼寝にはいい天気だった。日向が当たるリビングの窓際で昼寝して、日光を吸った彰人の毛も服もほかほかと温まっている。きっとこの季節に撫でたらさぞ心地よくて、主人もこの毛並みを手放せなくなるだろう。ぐっと伸びをして体の凝りを解し、同居人の存在を探して立ち上がった。
ふすふす。彰人は鼻をならす。甘くていい匂いだ。きっと今日も飼い主はいつものエプロンをして、キッチンに立っている。
甘いものが得意でない冬弥が甘いものを作ってくれるのは、いつも愛犬である彰人のためだった。だから、今回のも自分のためだと自信に満ち溢れた足取りでキッチンへ向かう。爪がフローリングに擦れて、チャカチャカとご機嫌なリズムを鳴らしていた。
「待て。彰人、ダメだ。ステイ」
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