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    KOP/カケタイ
    🎾 /月寿

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    月寿!大曲さんから見た二人の話

    「見てみぃ竜次。ま~た毛利がツッキーにべったりくっついとるわ」
    「もう見飽きたっての。お前もいちいち報告してくんなし」
    「だってオモロいやん? あのツッキーがあそこまで絆されるとは……まさかあの二人、デキとったりして☆」
    「おいおい、勘弁しろし……」
     二人がデキていようがいまいが俺には関係ねぇ。そういう話題を嗅ぎ付けては首を突っ込む修二と違って、チームメイト同士の恋愛事情なんざ聞きたかねぇし。普通に気まずいだろうが。
     あの二人の距離感が異様に近いのは、今に始まったことじゃねぇ。てっきり知り合い同士なのかと思いきや、別にそうではないらしい。なんなら毛利は、公式試合で越知に大敗した過去まであるそうだ。いよいよ意味が分からない。一度負けた相手にあそこまで懐くかよ。どんなメンタルしてやがんだ。
     確かにダブルスを組んだばかりの頃はもっとチグハグしていたが、いつの間にかああなっていた。二人の間で何があったのかは知る由もないし、知る気もない。まぁ、相性が良かったんだろ。息の合うパートナーに出会えて良かったじゃねぇか。せいぜい大事にしろし……と、先輩風を吹かせてみる。これでもダブルス暦はアイツらより長いからな。
     それにしても、ベッタリしすぎだろ。どこに行くにもセットで動いているもんだから、アイツらの体内には何か強力な磁石でも埋め込まれてんじゃねぇのかと思う。もしくは、強大な引力が働いている。
    百歩譲って練習中はまだしも(ダブルスだからな)、自由時間のランニングも、食事も、風呂も隣同士。談話室のソファでもくっついていて、消灯時間が迫ると二人仲良く部屋へ帰っていく。二人きりの部屋の中で何が行われているのか……いや、考えたくもねぇし。
     そういうわけで、越知の隣には毛利、毛利の隣には越知。それが当たり前の光景として目に焼き付いちまってるから、たまに二人が離れていると逆に呼び寄せて隣に並べたくなったまう。本棚の本の順番が揃ってねぇと気になるだろ? あれと一緒だし。
    「突然やけど、ツッキーと毛利の仲良しエピを発表してもええか?」
    「どうせやめろって言っても発表すんだろ」
    「正解☆」
     修二は越知と毛利の仲を応援している。いや、面白がっていると表現する方が正しいのか? とにかく積極的に首を突っ込みに行っては、「馬に蹴られたわ~」と言いながら戻ってくる。まったく、自業自得だし。
    「昨日な、俺と毛利で奏多が作ったパンの試食会をしててんけど」
    「おう」
    「そこへツッキーが通りかかってん。当然毛利が声掛けるやろ?『月光さんも食べましょ♡』言うて」
    「そのモノマネ似てねぇな」
    「え~渾身のモノマネやってんけど! まぁええわ。ほんで他にも焼き立てのパンがあるのにやで? 『月光さん、あーん♡』してもろて、わざわざ毛利の食べかけを一口貰ってん」
    「……」
    「いやぁどえらいもん見せつけられてもうたわ~!怖い怖い」
    「お前と入江の前でそれやるとか、肝座りすぎだし」
     その場にいなくとも、その光景が一瞬で想像できることが一番怖い。なぜなら毛利から越知への『あーん♡』など、飽きるほど目撃しているからだ。ちなみに、越知から毛利への『あーん』も見慣れている。最初は餌付けみてぇだなって笑ってたけど、もはや笑えなくなってきた。
    「そのあとツッキーはどこかへ行ってしもたんやけどな。暫く喋っとったら毛利のやつ、『そろそろ月光さんのところへ帰らな!』って。毛利にとってツッキーは帰る場所なんやなぁ……てなんや泣けてきたわ……ぐすっ」
    「涙脆すぎだろ。年寄りかよ。おら、涙拭けし」
    「うっうっ……優しいなぁ竜次は」
    「アホか」
     そうは言っても、ダブルスの腕が確かなコンビだってことは俺と修二も認めている。俺たちどころか、一軍高校生全員がアイツらの実力を知っているし、可能性を信じている。そうじゃなけりゃ、Genius10でナンバー9とナンバー10の肩書きを背負ってらんねぇだろ。
     毛利に関して言えば、一年生ながら年上だらけの集団に溶け込んでいるんだから、大したもんだと思う。自分で言うのもアレだが濃い集団だし、協調性ってもんが欠けていると感じることもある。そこへするっと入り込んで、トップのお頭にも物怖じせず絡みにいくし、なんだかんだ気に入られている。毛利を可愛がってるのは越知だけじゃねぇ。越知には及ばねぇかもしれないが、修二も、君島も、俺も。なんだかんだ気にかけちまうし、「竜次さ~ん!」なんて笑顔で駆け寄ってこられたら、悪い気はしねぇし。
     だからって、あの越知まで陥落するとは予想外だったけどよ。人懐っこくて愛嬌もある。可愛がりたくなるのもわかるが、限度ってもんがあるだろうが、限度ってもんが。
    「……ああ~! 離れてもうた」
     越知と毛利の観察を続けていた修二から、残念そうな声が上がった。
    「やっと解散したかよ。つーか、お前は何を残念がってんだ」
     毛利が越知の側を離れ、手を振って走り出す。進行方向の先には遠野がいた。処刑されんなよ、と思いつつ様子を見守っていると、どこからともなく君島がやってきた。うんざりとした顔で遠野をたしなめる君島を、頭の後ろで手を組みニコニコと眺める毛利。……やっぱアイツ、大物だし。
    「はぁ……俺も越知&毛利の仲良しエピを発表してやるし」
    「ほんま!? 助かる!」
    「助かるってなんだし……この間図書室に行った時のことなんだけどよ」
     図書室にいるメンバーは大体決まっている。データ集めが趣味の中学生や、氷帝の丸眼鏡。それから越知。越知に会っても、軽く挨拶を交わす程度で長話はしねぇ。限られた時間で読書をしに訪れているわけだから、一分一秒だって無駄にできねぇからな。席だって離れて座る。それで小一時間読書に没頭して、ちょうど右手で読んでいた文庫本を読み終えたところで立ち上がったら、いたんだよ、アイツが。しかも気持ち良さそうに寝てやがんだ。越知の隣で。
    「流石に大イビキかいてたらつまみ出すけど、そういうわけでもねぇし……越知も満更でもなさそうっていうか、隣にいるのが当たり前みてぇな顔して頭撫でてっし」
    「ヒュ~」
    「勘弁しろし……」
     はぁ……と吐き出したため息をかき消すかのごとく、背後から「月光さんっ!」と一際大きな声が上がる。背もデカけりゃ声もデカい。よく通る声につられて視線を向けちまったヤツは、俺らの他にも大勢いた。
     注目を浴びながら、毛利が越知の背中へ飛び乗る。越知と並んでいるから小型犬みたいに見えるけど、毛利だって男子高校生の平均を遥かに越えるたっぱがある。本人は「ぴょんっ」くらいの感覚だろうが、実際の負荷は「ドシッ」とか「ズシッ」とかそんな感じだろ。しかし越知は顔色一つ変えず、毛利をおんぶしたまま宿舎へ向かって歩きだした。
    「竜次知っとるか?あいつら平均身長2メートルあんねんで」
    「……スケールが違いすぎんだろ」
     さすがにあれは何かのトレーニングだと思いたい。そう思わせてくれ、頼むから。
    「月光さんの背中あったかいっすね!」
    「……」
     越知の方は声が小さくて何て返してんだかわかんねえけど。毛利がほっぺをぐりぐり押し当てて喜んでいるのを見るに、何か甘い言葉でも囁いたんだろう。
    「……」
     さすがの修二も面食らっている。二人で顔を見合わせて、「ヒュ~」「ヒュ~」と口笛を鳴らすことしかできなくなった。
     デカ勘弁しろし。
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