夏の日の2人は「今年も行けなかったな、花火」
五十嵐が誰に対してでもなく、ぽつりと呟いた。
夏休みといっても特別な出来事なんてほとんどなくて、寝て、起きて、時々アイスを食べて1日が過ぎ去っていってしまう。せっかくの夏休みなら何かしたらいいのに、と思うだろう。
でも五十嵐がしたい事は何一つ叶わないのだ。だって、したいことの主語には必ず“勝平と”がついてしまうから。
肝心の“勝平”は勉強に勤しんでいる。もちろん理解はしているつもりだ。応援だって。だけどやっぱり寂しいものは寂しいのだ。世の恋人達みたいに祭りやら花火やら海やらと浮かれてみたい。来年こそはきっと。高校生から大学生に肩書きが変わっているであろう未来の2人に想いを馳せた時、ドアが開く音がした。こうしてこの家に帰ってくる人なんて、1人しかいない。
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