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    iwatiok

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    iwatiok

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    マクレディと悪人111の前日談(一時的別離)と、ヌカワールド突入直前までです。
    シリアスめですが、総支配人任命後にちゃんとマクレディに会いに行ってるし相変わらず親友の押し付けをしてるので安心ですね。 ネイト→マク→ネイト順に展開。

    『1st Friend』邪魔なら殺して良い、
    興味がないなら撃って良い。
    隙があるなら奪って良い。

    こんなに簡単な事が、
    なぜ分からないんだ?

    誰も、俺のやり方を理解しない。


    けれど、この子だけは。
    皮肉を言いながらもついてきてくれた。

    だから俺も、隣に居たくなったんだ。

    ノーラに教えてもらったとびきりの笑顔で。
    笑顔の下に本音を隠し、
    俺ははじめての友人を手に入れた。

    ああ、でも、そろそろ。
    俺もこの子も限界だ。



    『1st Friend』


    レクスフォードホテル。
    俺達は、その一室を拠点に暮らしていた。
    ショーンの情報を集めながら、依頼を受け、
    夜には酒を飲み交わす。
    くだらない皮肉と、援護射撃。
    楽しかった。同性ならではの気兼ねの無さが、また良かった。

    戦前の俺には、
    ノーラとショーンしかいなかった。
    常日頃から「善き隣人」として振る舞っていたのだ、オフの日にまでピエロの真似事はしたくない。

    だからマクレディが俺の、連邦に来てからはじめて出来た友人だった。


    浮かれていた。
    俺と本質が違っていても、
    俺を受け入れてくれる者が連邦にいる。
    ノーラのような者が他にもいる。


    そんな、勘違いをしていたんだ。


    ────────

    「マクレディ…どうしたんだ?」

    ホテルの一室。
    照明は心許無く、部屋は暗い。

    俺はベッドに腰を据え、椅子に浅く腰掛けたままのマクレディに声を掛けた。


    「すまない、そのままで聞いてくれ。」

    か細い声だ。
    可哀想なマクレディ、銃を抱えたままで俯いている。
    昨夜の戦闘で撃たれたからだろうか…
    俺は慰めてやりたくて立ち上がった。


    「そのまま動くな…!!」


    怒声に空気が震える。
    強い牽制に息が止まった。

    呆然とした俺を見て、マクレディはようやくこちらを向く。

    「す、すまない…。
    けど、その場所から聞いて欲しいんだ。」

    声にいつもの優しさが戻り、俺は胸を撫で下ろす。けれどマクレディの視線は直ぐに俺から外された。居心地の悪い沈黙が続く。


    「…最近のお前、おかしいよ。」

    「え…?」

    面食らった。
    だって毎日、この子の為に明るく、優しく接しているじゃないか。
    昨日だって、撃たれた彼を助けたのに…

    「どこがおかしいんだ?」
    そっと尋ねる。
    狭い部屋だというのに、友人だと言ってくれた彼との距離は、酷く遠い。

    「わからないのか?
    お前、最近やり方が酷過ぎるぞ。
    昨日なんてレイダーの眼を…生きたまま抉るなんて……」
    思い出してしまったのだろう。
    マクレディは背を丸めて口を抑えると、最後に嗚咽を溢した。

    「それはお前が撃たれたから…。
    ああ、でもすまない。お前は嫌だったんだよな。」
    不安が心をざわつかせ、焦りのままに言葉を繋げる。

    「お前が嫌ならもうやめるよ、
    他にも駄目なところがあったら言ってくれ。
    俺はそういうところが疎くって…」

    緊張を和らげようと、わざと声高に振る舞った。笑顔の頬が引き攣り、心音が早鐘を打つ。
     
    「お前が嫌ならやめる、か。
    …なら、あんたはどう思ってるんだ」

    マクレディがようやく俺を見た。
    射抜くような視線が帽子の鍔の下から向けられ、生唾を飲み込む。


    「無理して笑ってるんじゃないのか?」


    背中がぞっと冷たくなる。
    ───俺の想像以上に勘が鋭い。

    「マクレディ………」

    夢遊病者のようにふらふらと足が動く。
    肩に触れようと手を伸ばすが、彼はビクリと反射的に身を縮め、
    ライフルのグリップを握る。
    指先は安全装置をいつでも外せる位置にあった。

    彼は俺を、恐れている─────

    「お前に酷い事なんてしない。
    それがわからないのか?

    俺には、お前しかいないのに。」


    俺はボルトから出て以来
    自由であり、孤独だった。
    連邦を渡り歩いて気付いたが、誰も俺の味方はいないらしい。
    …マクレディを除いては。

    「お前と上手くやれているなら、
    きっとノーラも俺を許してくれると思ったんだ。けれど、そんな事は無かったみたいだ。」

    俺は微笑んだ。
    笑いながら、ずっと認めたくなかった結論を声にした。

    「俺とお前は違うよ。
    そしてノーラとお前も違う。」


    「…俺の方こそ、今まで無理をさせたな。マクレディ。」

    彼には悲しまないで欲しかった。
    だから、笑うしか他になかった。


    俺の独白に、マクレディの表情が見る間に崩れる。
    そんな顔を見たくは無くて、俺はベッドから降りソファに横たわった。

    「おやすみ、マクレディ。
    お前は俺の大事な友達だよ。」

    偽りのない、心の底から出た言葉だった。
    マクレディが声を絞り出し、俺の名を呼ぶ。

    振り返ることはしなかった。

    ───────────────
    朝。

    身体が重いのは、きっとベッドのせいじゃない。
    昨夜あいつと交わした会話のせいだろう。

    窓から射す細い光が、部屋を照らす。
    きらきらと浮かぶ埃を眺めながら、俺は考えをめぐらせた。

    確かにあいつは異常者だ。
    けれど、俺にはいつも優しくしてくれたじゃないか。
    部屋のベッドだって、いつも俺に使わせてくれている。他にも色々…恩がある。


    もう一度、話し合ってみよう。
    そうすればまた、何かが変わるかもしれない。

    「ネイト…」

    振り返るが、あるはずの姿が無い。
    慌てて起き上がると、ローテーブルに何かがある。

    『今までありがとう。
    親愛なる友へ』

    置かれたメモの側には、きっかり250キャップに添えられていた。

    「なんだよこれ…手切れ金のつもりか?」  

    別れの手紙だ。
    理解できた途端に手が震え、歯の奥ががたがたと鳴る。
    立っているのがやっとだった。

    「くそっ…俺たちの関係って、こんなものだったのかよ……!!」
    悔しさのあまり声を荒げ、床に膝をつく。


    「返事をしてくれよ、パートナー…」


    いつも呑気に返ってくる答えは、もう無い。
    視界が潤む。
    部屋には俺の声だけが響いて消えた。



    ──────────

    連邦の荒野。
    年若い相棒は、もう傍らにない。
    彼の羽織るトレンチコートの翻る裾を思い出し、眉を潜めた。

    傷つけるより、余程良い。
    守る背のない旅は寂しくも身軽だった。


    口枯れた木々と岩場を歩んでいた俺は、
    突然のノイズに立ち止まった。
    何かを傍受したらしい。

    「なんだ?」

    ピップボーイのつまみを弄り、チャンネルを合わせる。
    ノイズの波の後、軽快な曲と共にアナウンスが耳に入った。

    「へえ、こんなラジオ…誰が流してるんだろう。」

    ヌカ・ワールド。
    戦前、CMで見たことがある。
    こんな世界で遊園地なんて、まるでピノキオの島の遊園地だ。流石にロバにはされないだろうが、それ以上の最悪が待っている可能性はある。
    だが、カラフルなクリームで覆われた得体の知れない「未知」に、枷を無くした俺は惹かれていた。


    「そうだ、どこへでも行ってみよう。
    この世界は自由に溢れているのだから。」

    はやる気持ちで発信源に向かう。
    こんな気分はボルトで目覚めた時以来だ。

    「Quench your thirst for adventure
    at Nuka-World」

    俺はラジオの曲を口ずさみ、モノレール乗り場に集るガンナーの頭を撃ち抜いた。


    END
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