Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    J9Ifdfh

    @J9Ifdfh

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 14

    J9Ifdfh

    ☆quiet follow

    https://poipiku.com/4030160/6180186.html の続き。やっとうなじに噛み付くよ編。七海さんは適当に作った恋人(not夢さん)がいて、その恋人に電話でちゃちゃっと別れを告げてから噛みつきましたとさ。

    ■Ωちゃんの項に噛み付くために、今カノに電話で別れを告げるα七海さんヒートを初めて迎えた彼女とそれにあてられた自分がやっと水分補給や休憩といったことに気を回せるようになったのは夜が明けて随分と経ってからだった。
    ベッドの上でシーツの海に溺れるようにしてぐったり寝そべる彼女に口移しで水を飲ませる。口の端から鎖骨あたりにこぼれていった水を舐め取る仕草にまでヒクリと反応をするが、今はそれよりも疲労が勝っているように見えた。
    生まれたままの姿の彼女をシーツで包み、胡座をかいてその上に後ろ向きに抱きかかえ、ずっと気になっていたことを問うてみた。

    「ここ、噛み付かれたいとは思わないんですか?」
    「っ……!」

    彼女に覆いかぶさるようにして背後から抱きしめ、人差し指でうなじのあたりを何度も往復する。彼女の首には私が送ったチョーカーが巻き付いていて、不用意にうなじに噛み付かれないようになっている。
    きつく巻き付いているわけではなく、指一つ分のゆとりがあるため、たとえばこうしてチョーカーの下側に舌を這わせることもできる。ぬらりとチョーカーに隠れた素肌を舌でなぞると彼女が身を捩る。

    「あっ、だって、チョーカーは自分で外せないようにロックが掛かってるし、そのパスワードは七海さんしか、知らないから。」
    「そうですね。だから、頼めば解除しますし、今ここでパスワードを伝えてもいいですよ。」
    「んッ……あ、だめ、そこ触ったら、ゾクゾクして……」
    「ゾクゾクして?どうなんですか?」

    犬歯をやわく彼女の肌に突き立てる。決して痛みを感じることはないが、そこに歯が立てられていることを意識せずにはいられない強さで、何度も。時折舌を這わせることも忘れない。
    そもそも、運命の番のヒートを前にして、一晩中うなじに噛み付くことなく交わりつつけていること事態が狂気の沙汰なのだ。常に、噛みつきたい/噛み付かれたいと思いながら身体を重ね続けている。それならば、さっさとチョーカーのロックを解除して噛み付いてしまえばいいのにそれをしていないのは、彼女に求められたいというただのワガママだといったら彼女は怒るだろうか。

    「ふ、うぅ……だって、七海さん、婚約者がいるし……。」

    婚約者ってあなたのことですか?と尋ねそうになったところで踏みとどまる。
    あぁ、そういえば自分には一応恋人なるものがいる。しかし、それは彼女の友人である伏黒くんに「七海さんは私のせいで恋人ができないって心配してましたよ。私が七海さんと住んでいるせいで恋人ができないなら一人暮らしを始めようかなって。嘘でも恋人がいるって言ってあげたほうがいいんじゃないですか?」と言われたのを真に受けて、取り急ぎ恋人を作ったのだった。
    実に馬鹿げているが、彼女が一瞬でもこの部屋を出ていくことを考えたのだと思ったら、嘘を吐いてでも恋人がいることにして安心させないととあのときは思ったのだった。
    そこにタイミングよく(あるいはタイミング悪く)、合コンの誘いがあって、その場で適当に恋人を見繕った。

    「先週紹介したあの人は、婚約者ではありません。恋人ではあるんですけど、あなたが私に恋人ができないと心配していたので取り急ぎ作った恋人です。」
    「取り急ぎの恋人…?」
    「まぁ、大人の事情ってやつです。今の今まで忘れていました。今すぐ別れることにします。」
    「そんなことしたら、恋人さんが悲しむんじゃ…?というか昨日の夜のことも…その…」

    彼女との会話が気まずくなって、ジュっと音を立てて首筋に赤い跡を残す。その刺激だけで力が抜けた彼女がこちらに体重を預けてくる。

    「恋人と別れたら、ココに噛み付いていいですか?」

    拒否をされるなんて考えたくもないので、先程よりももう少し強くうなじに歯を立てる。今は何も考えずに、本能や快楽と言ったものに流されてほしいなんて馬鹿げた願いを込めて。
    噛み付いた箇所を労るように舌でなぞり、また赤い跡を残す。先程よりも強く吸い付いたせいか、ハァと熱のこもったため息が漏れる。

    「返事は?」

    上から覗き込むようにして彼女と視線を合わせると、焦点の合わない色っぽい表情をした彼女が静かにうなずいた。
    ベッドサイドテーブルに置いてあったスマートフォンに手を伸ばして電話を掛ける。別れてください、と簡潔に用件を伝えると、理由を述べろとかすぐには了承できないといった交渉が始まった。
    冷静を装いつつも早口で捲し立てる相手の声を聞き流しながら、スマートフォンで別のアプリを開く。パスワード入力画面で私しか知らないパスワードを入力すると、彼女の首元からピピッと小さな電子音が鳴り、巻き付いていたチョーカーが外れた。ロックが外れたチョーカーを彼女に渡す。
    まだ別れ話の最中だろうと言いたげな彼女に微笑み、彼女の左脇から手を差し入れ右肩を掴む。次は右脇から手を差し入れて、彼女の口元をしっかりと手のひらで覆った。上半身を強く抱きしめ、口元に手を押し当てて声が出せない状態にすると、何をされるのかと不安げに身体を捩ろうとするがそれは許さない。
    次の瞬間、一思いに遮るものがない彼女のうなじに噛み付いた。先程よりも強く、しっかりと。犬歯がつぷりと肌に食い込んだ感触がしたあと、鉄の味がした。彼女は身体をビクつかせながら、私の腕に爪を立ててその衝撃に耐えている。本来であれば悲鳴に似た声が上がっていたのかもしれないが、それは私の右手でせき止められたので聞けずじまいだった。
    癇癪を起こしたような恋人、いや、元恋人の声がスマートフォンからBGMのように響くのは野暮ったいけれど、そんなことよりも彼女のうなじについに歯を立てたことの喜びが勝り、口角が上がる。
    ようやっと、彼女の口元に当てた手を離し、喧しいスマートフォンに手を伸ばす。

    「失礼。たった今、つがいができましたので、これで失礼します。」

    スマートフォンの電源を落とし、ベッドに放り投げる。
    覆いかぶさるようにして抱きしめていた彼女がこちらを振り返る。私の、運命の、番。

    「七海さん、あの……」
    「不誠実な男に見えますか?弁解はあとでいくらでもします。だから、今は、あなたが欲しい。」
    「私も、あとで色々話したいんですけど、とりあえず、チューしてください。我慢できない。」
    「ハッ、可愛い。私の愛しい番。愛しています。」

    神様というものがいるならば、理性とか倫理とかそういったものをかなぐり捨てて、ただ目の前の運命にすがりつく愚かさを笑うだろう。
    しかし、今は悪魔に魂を売り渡してでもこの運命を抱きしめている必要がある。しかもそれは私だけではなく彼女も同じ考えなのだから、今だけは愚かな時間を堪能させて欲しい。抗えない運命に流される。流された後にまた真っ当に生きるから、せめて今だけは。

    (未完)
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤😭😭💖💖❤❤❤💕💒💯💯💯❤🙏😍❤💖💖💖💖💖💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works