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    J9Ifdfh

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    の続き。

    七さんと"死神"と呼ばれる夢さん の #じゅじゅプラス ③高専の薄暗い地下室で夢さんと五条さんが二人きり。
    机越しに向かい合って座り、まるで取り調べのような不穏な雰囲気。

    「死神ちゃんが東京校に異動してきてから今日猪野が怪我をするまで4ヶ月くらい。東京校に来てから怪我人を出すまで結構時間がかかったね?これは噂とか推測ではなくて、京都校から受け取っているデータなんだけど、随分と京都では怪我人や死人を量産してたみたいで」

    ハハッと場にそぐわぬ乾いた笑みを零す五条に対し、俯いたまま何も言わない夢さんは膝の上でぎゅうっと拳を握りしめた。

    「今日まで死神ちゃんと組んで大怪我をする術師がいなかった理由は何なのかな?」
    「……、」
    「さじ加減?気分次第?」
    「……コミュニケーションを、」
    「ん?」
    「コミュニケーションを、とるよう……、心がけました」
    「えっ、何その新卒の社会人みたいなコメント。関西仕込みのギャグ?」

    ギャハハと下卑た笑いを零す男に対して言葉を続ける。

    「京都では……、任務前や任務中にペアの方に声をかけても……私の声が届いていないような対応をされることがほとんどだったので……、発言を控えていました。こちらでは私なんかにも良くしてくださって、声をかけるとお返事をしていただけるので、」

    ゆっくりと息を吐き出しながら、言葉を選ぶようにして紡がれる。

    「京都校では死神ちゃんの話を聞いてくれる人がいなかったから怪我人続出だったってこと?ふーん」

    つまらなそうに机の上に転がっていたボールペンを回し始める目隠しをした男。
    俯いたまま静かに涙を流している夢さんと視界が塞がれた状態でペン回しをしている五条さんという異様な光景が広がる地下室の空気はますます重くなるばかり。

    「じゃあさ、死神ちゃんは昇級したいと思ってるの?今、準1級でしょう?」
    「昇級は考えていません。それに……、」
    「それに?」
    「推薦してくれる方もいないので」

    そこまで言ったときにふと任務前の猪野くんとの会話を思い出す夢さん。

    ――七海さんに推薦してもらって1級になりたいんス!あ、そうだ、夢さんも今準1級だから、俺が七海さん推薦で1級になって、そのあと七海さんと俺が夢さんを推薦するっス!

    「あのっ、」
    「お!死神ちゃん、そんな大きいというか人並みのボリュームの声が出せるんだ」
    「任務の失敗や任務中の怪我は昇級審査に影響するでしょうか?」
    「どうしたの急に?意欲が出てきた?」
    「そういう、訳では……、」
    「まあ、内容によるけど任務は成功するほうがいいし、怪我はしないほうがいいんじゃない?」

    自分は昇級なんて考えていなかったけれど、七海さんに推薦してもらって1級になるのだと意気込む猪野くんの邪魔だけはしたくない。

    「今日、私が、任務中にミスをして、それをフォローしてくれようとした猪野さんが、怪我を、したんです、」
    「へえ?」
    「私が駄目で、猪野さんは、なんにも、」

    肩で息をしながら切実そうに青白い顔で伝える夢さん。椅子から立ち上がり机の上に前のめりになって訴えようとした瞬間、視界がぐらつく。

    「そんな息巻いちゃって。遂に死神の本性が出た?」
    「……ぅ、」
    「出たのは本性じゃなくて血だね。横っ腹からずっと出血してる。気づいてなかった?猪野といっしょに治療してもらったらよかったのに」
    「猪野さんのほうが重症だった、ので。あの、猪野くんは、任務で失敗なんて、してないです、」
    「はいはい、わかったよ。七海ぃ、死神ちゃんを医務室に連れてってあげたら?」

    机に突っ伏した状態でそれでも猪野のことを訴える夢さんに呆れながら扉に向かって声をかける。室内のじっとりと重苦しい空気を吹き飛ばすかのように、力強く扉が開けられる。

    「死神じゃなくて彼女には―――という名前があります」
    「おお、そんなにも呪力が乱れてる七海は久々!僕が手書きのお手紙をポケットに入れてあげてもそんなに乱れてなかったのに」

    ハァ―――と深くため息を付きながら歩を進める。眉間の皺はこれ以上ないほどに深く刻まれている。

    「五条さん、アナタ、夢さんが怪我をしているのを知ったまま話をしてたんですか?そうと知っていたらすぐにでも扉を開けていたのに。そもそも、私が扉の外で待っていることに気づいているなら声をかけてくれたらよかったんです」
    「扉1枚隔てた場所で、鉈を片手に素振りなんてしてたら僕じゃなくても気づくよ」
    「場合によってはアナタに1発お見舞いする必要があったので体を温めていただけです」
    「じゃあ今にする?今なら無下限を使ってない状態だよ」
    「そうしたいところですが夢さんを医務室に連れて行くのが先です」

    夢さんに近づくと衣服の腹部あたりが溶けて皮膚が火傷したような状態になって出血している。
    机に突っ伏したまま肩で呼吸する夢さんをそっと横抱きにするとスリットの入ったロングスカートにまで血が滴っていることがわかり思わず悪態をつく。

    「クソッ……」

    抱き上げられて前髪がさらりと横に流れる。意識朦朧の状態で閉じられたままの夢さん両目がうさぎのように赤く腫れている。
    ケロっとした表情をしていたなどと補助監督が言っていたが、彼女は傷の痛みも忘れて、ずっと静かに猪野を思って泣いていたのではないだろうか。自分になにかあったら彼女は涙を流してくれるだろうかと考えながら、夢さんを見つめる。

    「ほらー、早く連れてってあげたら?」
    「チッ。あなたの無下限ならばすぐですがそれも癪なので私が自分で連れていきます」
    「あんまり死神ちゃんに肩入れしないほうがいいんじゃない?」
    「あなたは誰かとペアを組むことなんてないから何もわからないでしょうね」

    そう言い捨てて、夢さんに振動を与えないよう気をつけながら医務室に急いで向かう。
    家入さんならすぐに治療をしてくれるだろう。彼女が目を覚ましたときに視界に映るのが無機質な真白い天井だなんて寂しすぎる。だから目を覚ますまで傍にいよう。魘されていてもいなくても手を握って、彼女が起きるのを待つ。そうして、猪野くんを助けてくれてありがとうと伝えて、何もかもを抱え込まなくていいのだと時間をかけて伝える。彼女のことを知りたい。できれば彼女に自分のことを知ってほしい。こんな一方的な想いを持つことは初めてで、庇護欲を恋愛だと勘違いしてしまっているのではないかと自問自答をするけれど答えはでない。だけど結局それを決めるのは自分自身であるから、もうこれは恋の始まりだということでいいのではないだろうか。馬鹿げた思考の渦に絡め取られながら、男の脚は一秒でも早くと医務室を目指す。(完)
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