「『Kneel』」
たった一言。それだけなのに体が勝手に膝を着く。視界にあるのはジーンズに包まれた男の足だけ。それをただじっと見つめていた。
「お利口ですね。それじゃあ『Look』、こちらを見てください」
言われた通りに頭をもたげる。そこには、Domにしては随分と優しげな風貌の男がいた「その調子です。『Come』」
ゆらりと、体が傾いだ。吸い込まれるように、俺は男の太ももに頭を載せる。嫌がる素振りも見せず、男は嬉しそうに頭を撫でた。
「よしよし、よく出来ました。『Goodboy』」
こんなこと、本来ならばプライドが許さない。それでも抗えないのは、Subの本能ゆえか。
繰り返し撫でる手に、なにかが満たされていくのがわかる。自分の意思とは裏腹なそれが居心地の悪さを醸し出していた。
「……落ち着きました?」
「……うん、ありがとう」
優しい風貌の男、綴は素っ気ない自身の言葉を気にした風もなく朗らかに笑った。
。