月が綺麗ですね……?「ただいま」
「おかえり天くん。餅もおはぎもあるよ」
「……なんで?」
「中秋の名月だからね。スーパー凄いよ、餅だらけ。正月みたい」
「ああ、成程ね。外国にいたら、そういうの分からなくなっちゃうな」
「今年は八年ぶりの満月と中秋の名月が被ってるんだって」
「へえ。八年ぶりか。後で頂こうかな」
「はーい。お風呂どーぞ」
「これ勝手に食べて良いのかな……空?空どこに行ったんだろう……あ、ベランダか」
「空?」
「ご飯の代わりが餅でごめんね」
「その分動くよ。これ、食べて良かった?」
「そ。好きなの選んで」
「分かった。月、見てたの?」
「ここのベランダ、他の家に邪魔されずに綺麗に見えるんだよね。星空も花火も見れるんだ」
「確かにそうだね。月が綺麗だ」
「……ふーん?」
「……別に空に告白した訳じゃないよ」
「うん、知ってるよ」
「……」
「……」
「んー、月だなあ」
「そりゃあ、月だからね」
「どこをどう見ても月だ」
「月だからね。何か期待してた?」
「真っ赤な月とか、永遠に三日月だったら良かったのになって」
「……それ怖くない?」
「天くんも僕もみぃんな特殊能力があって、魔法が使える世界だったら良かったのに」
「……?」
「ここから見える月も星空も、一緒で、変わんないなってこと」
「変わっていて欲しかったの?」
「うん。そうだったら、割り切れてた。違うんだなって、自分がいたところとは全くの別世界だなあって、納得できたのになあ」