氷の洞窟 紺碧告白ver.雑な前置き...
ひょんなことから、初心者の雀さんの代わりに峡谷レースを飛ぶことになった2人。
雀さんは紺碧にキャリーしてもらい、危ないところを助けてくれた雪白を気に入り、師匠になってくれと頼み、過度なスキンシップをしてきた。
温和な雪白が珍しくピシャリと断った後の話し。
(峡谷レースの話しです)
紺碧は雪白からアクションがない限り、雪白に手を出すことはない。
しかし雪白から何かそういった素振りがあれば即行動に出ようと思っていたし、絶対に逃がさないつもり。
今回は雪白の意思を確信して、ついに行動に出る。
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雪白に手を引かれ、岩山の途中に大きく口をあけた洞窟で休むことにした。
大きな氷柱(つらら)が夕日を受けて橙色にきらめいている。
冷たいはずなのに温かそうにみえるなんて不思議だね。
雪の上に直接座って、氷の壁に背を預ける。
星の子は寒さにも暑さにも強い、この洞窟で夜までいても凍えることもないだろう。
「あの、紺碧さん」
隣に座った雪白がなんだか改まった声を出した。 なにかな。
彼にしては珍しく迷っているようで、あぐらをかいた足の上で組んだ手を開いたり閉じたりしている。
「なぁに?」
優しく先を促すと、ようやく口を開いた。
「・・・紺碧さんにキャリーしてもらったあの子に、嫉妬してしまって・・・そんな自分が小さくて嫌なんですけど・・・」
最後のほうは消え入りそうな声だった。
前髪で隠れた頬の輪郭が赤く見えるのは夕日のせいではないようだ。
「嫉妬してくれたの?」
ちゃんと聞こえているのに、意地悪く聞きかえす。
こくりと縦に振られる頭。
どくり、と僕の鼓動が大きく動くのが分かった。
どうしよう、どうしようもなく嬉しい。
「小さいだなんてそんなことないのに。 嫉妬してもらえるくらい、好かれてるって、うぬぼれてもいい?」
「うぬぼれじゃなくて・・・なんというか、その、すごい、本当に・・・その・・・」
言葉を選ぶ葛藤が伝わってくる。
その先の言葉が聞きたくて、迷っている彼が愛おしくて、ついいじめたくなる。
そっと顔を近づけて、うつむいている雪白の顔を覗き込んだ。
・・・多分、僕たちは同じ気持ちだと思う。
目を合わせて感情の色を読み取り確信する。
彼は恥ずかしそうに視線を外すけれど、逆に僕は視線を外せなくなる。
「・・・僕も言っていいかな」
静かに言うと、少し意外そうに雪白は目だけで頷いた。
「さっきの子が君に抱きついているだけで、僕は嫌だったよ」
ね、初心者相手に、僕のほうが器が小さいでしょ。
「それにね、本当に格好悪いんだけど・・・紅藤(べにふじ)にも嫉妬しているよ」
ここで自分の師匠の名前が出るとは思わなかったのだろう、なんで、と唇が動いた。
「雪白くんみたいな弟子がいるから」
友人に嫉妬するなんて、雪白にはずっと隠してきた感情だ。
そんな内面を晒(さら)すことに恐れを感じながらも言葉を続ける。
「とても正直で純粋で芯が強くて。紅藤だから育てられたんだよね」
雪白を真っすぐなまま、彼の特性を見抜いて、そんな風に育てることのできた紅藤が、心底うらやましい。
一緒に暮らすようになり彼のことを知っていって、名前のように汚れのない眩しさに惹かれた。
師匠がいなくなって弱っている彼の心に踏み入るのは卑怯な気がして保護者の顔をしていたが、雪白のこんな表情を見てしまっては。
「キミの内側から感じる凛とした強さが、とてもまぶしい」
緊張で暴れそうになる鼓動を抑えながら、僕は雪白の目を真っすぐに見据え、今まで言いたかった言葉を言う。
「好きだ」
ああ、言ってしまった。
たった3文字がなんて重い言葉なんだ、息苦しくて深く息が吸えないほどに。
「師匠がいなくて寂しい思いをしているキミに言うのは、卑怯かもしれないね。でも、好きなんだ」
雪白は僕を好いてくれていると思う。
でもそれが僕の勘違いだったら、これまでの僕たちの関係は崩れてしまうね。
その恐れより、僕は自分の気持ちを伝えたくてしょうがなかったんだ。
雪白は僕から目を逸らさず少しだけ唇を動かしたが、声は出ず、かわりに表情が泣きそうに歪んだ。
下唇を噛んで下を向いた目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「・・・先に言うなんてずるいですよ・・・」
絞り出すようにつぶやいて、嗚咽で肩を震わせ、呼吸が落ち着くまで雪白は喋らなかった。
「俺が言おうと思っていたのに」
小さくつぶやいて服の袖で目元をぬぐうと、彼は顔を上げて僕を見た。
涙で潤んだ綺麗な瞳。
強い視線。
そう、その目が好きなんだ。
「俺も、紺碧さんが、好きです」
「・・・ありがとう」
鼻の奥がツンとしてしまって、僕は奥歯を嚙み締め目を閉じた。
「俺のところ、見てください」
有無を言わせぬ強い口調で彼は言い、両手で僕の頬を包み込む。
「・・・っ、紺碧さんは、時々意地悪だし、俺のところ子供扱いするし、すごい天然なところあるけど、そういうところも、す、好きです」
所々つかえながら一生懸命に伝えてくれるのが嬉しくて、僕はじっと耳を傾ける。
雪白の手は熱くて、少し震えているようだ。
こんなに泣いて緊張して、紡がれた言葉を受け取るのが自分だということがたまらなく嬉しい。
僕は四つん這いで彼の前に移動すると、にこりと笑った。
「僕の好き、は、雪白くんにこういうことをすることも含まれるんだけど、いいの?」
首を伸ばして鼻先が触れるくらいで止まる。
僕と氷の壁に挟まれる形になった雪白は少し身じろぎしたが、その目は揺らぐことがなかった。
それを是と受け取り、頬に口づける。続いて目元。薄い皮膚の感触。
もう一度確認するように目で問いかけてから、少し顔を傾けて唇を合わせた。
息を止めてじっと硬直しているような気配が雪白から伝わってくる 。
ついばむように軽いキスを繰り返してから、唇を使って雪白の唇の隙間を少し広げる。
さらに顔を傾けてくちづけると、お互いの口内の粘膜が触れ、濡れた感触がした。
雪白がひるんだように頭を引いたので、後頭部が氷の壁にコツンと当たる。
「逃げちゃだめ」
息苦しそうな、慣れない様子が僕の欲を煽る。
囁くように言って壁際に追い詰めるようにキスをして、怯える舌に優しく舌を絡める。
雪白は、ぎゅっと目を閉じて少し震えている。
怖い?気持ちいい?
怖がらないで、傷つけないよ。
頭をなでて、耳元、首、肩も優しくなでてやる。
夕日で照らされた氷の壁と、透き通るような髪に隠れた目元、真っ赤になった耳と頬、僕が濡らした唇。
縮こまった肩、両手はどうしようもなく行き場をなくしている様子だ。
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いくつかのエピソードのうちのひとつ、紺碧から告白ver.でした。
この先の話しは20歳以上の方のみ公開となります。
別垢になるので、気になる方はぜひお声がけくださいね...♪