私の右腕の様子が何だかおかしい 傷跡に触れられている。指先で掠めるようになぞられて少し擽ったい。
微睡む意識から抜け出して重い目蓋を開いて何度か瞬きを繰り返す。いつの間にか眠っていたらしい。執務室の窓からは西日が射し込んでいる。ふと顔を上げれば真正面で顰め面をしている月島と目が合った。姿勢を正して誤魔化すように咳払いをすると、月島の眉がぴくりと動いた。
「……すまない。待たせたか」
「いえ、今し方来たところです」
「そうか、ご苦労だった。今日はゆっくり休め」
差し出された書類を受け取って労いの言葉をかける。月島は返事をして直ぐに出ていくかと思いきや目の前で佇んだままだ。集中したいのに探るような視線が些か煩わしい。放っておくのも一つの手だが月島相手に持久戦はやるだけ無駄だ。
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