引き出しの中の脅迫状 僕が脅迫状を受け取ったことに気づいたのは、とある晩のことだった。
「は⁉」
思わず大声を上げると、ちょうど廊下を歩いていたらしい長義が障子越しに呼びかけてきた。それに何でもないと返事をして、文机に向き直った。手にした紙をもう一度眺めて、思考を反芻させた。文机の引き出しの中に一枚、紙が入っていた。
僕が風呂から上がり、部屋に戻ってからいつものように文机の引き出しを開けて、紙と筆を取り出す。筆と言っても最近はもっぱらボールペンを使っていた。筆ももちろん好きだが、風呂上りに筆を洗ったり、寝巻に墨が飛ぶことを思うとこのボールペンというのはなかなかに便利だった。
引き出しを開けて中身を取り出そうとしたところで、身に覚えのない紙切れが入っているのを見つける。その紙切れを手に取って見てみれば、文章が書いてあった。
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