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    yu_lethe

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    yu_lethe

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    全年齢イデ監
    実家からお見合いを勧められて、監督生♀と偽装交際をするところから始まる恋愛もの
    💀→(→→→)←←←←←監

    #イデ監
    ideeSupervisor
    #twstプラス
    twstPlus

    物事にはきっかけが付き纏う。
    組んだプログラムが正常に動作しない場合は必ずどこかに欠陥があるし、何かに抱く好悪は紐解けば長い間かけて形成された価値観に基づくものばかりだ。
    それが、親に「次のテストで80点取れたらゲーム買ってあげるね」と言われて健気に勉強に励む少年のように、点と点が真っ直ぐ結べるとは限らない。自分でも忘れているような点同士が複雑に絡み合っているから、人間は手っ取り早く「直感に従った」と思い込む。
    恋愛や憎しみ、殺人衝動、ありとあらゆる人間の感情に偶然だ運命なんてものは関係ない。そんなものはおとぎ話の中だけで充分。感情は脳から生まれるし、人間を司るのは心ではなく脳なのだから。

    要するに現実で一目惚れとか馬鹿すぎる。
    有り得ない。ムカデやミジンコに一目惚れして恋に落ちた奴でも連れてきてみろ。できないでしょ。出来ないってことは一目惚れなんて、よくよく考えたら勘違い・もしくはそれなりの理由がどっかしらにあるわけ。それを陽の者はすーぐ運命感じちゃって、簡単に永遠なんてありもしないものを誓っちゃって、怖っ…。

    そう、だから監督生氏がここ最近ポム化(ポムフィオーレ化:他寮の者が突然、美意識に目覚める)したのにもきっと何か理由があるに違いない。そして、もしかしたら、いや本当にそうとは思っていないけど、10連でSSR3枚抜きするくらいの確率の話ね。

    も、もも、もしかして拙者とのお付き合い(仮)がきっかけだったり、したらどうする???

    ……いやいやいや、きっっっっっっしょ!!!!!!


    イデアはその脳をフル回転させ、極めて冷静に現状を捉えようと努めた。自室のベッドの上で体育座りをしながら、あまりのきしょさに「うゲェ」と声を漏らす。
    どうする?ちゃうわ勘違い乙。半年と言わず一生ROMれ。
    大きな手で顔を覆うだけでは耐えきれず、膝に顔を埋めた。そのままボスっと横に倒れ込み、ジタバタと長い脚が暴れる。

    そもそも人間とプログラムは違いますし。
    人間の感情が機械で管理できるなら拙者は今頃こんな根暗やってないんすわ!!それなのに乙女心から攻略とかハード通り越してエクストラ、地獄、絶モード。そんなん無理すぎる…攻略Wikiないの?てかキモオタが乙女心とか考えていいの?考えただけで犯罪になったりしない?と思ったイデアは、今日もトークアプリに登録された数少ない"お友達"からのメッセージに既読すら付けないのであった。



    ◾︎

    話は遡ること数ヶ月前。

    「そうですか、ご結婚おめでとうございます」
    「は?アズール氏それ本気で言ってます?」
    「ええ、心から祝福していますよ!だってあなた、このままでは架空の嫁とやらが増えていくだけでしょう?」
    「そ、そそそ、それの何が悪いでござるか!!」
    「折角シュラウド家の嫡男とお近づきになれたのにイデアさんの代で潰えては勿体ないですから」
    「打算的すぎて草。少しは隠してもろて」
    「嫌だなぁ。持てるコネは全て有効活用したいというだけで、イデアさんが家を追い出され無職ニートになっても僕たちは良きお友達ですよ」
    「それ、対等な友人関係から都合のいい主従関係に更新されるのでは?」

    イデアとアズールは、狭い机を挟んで向かい合うようにしながらボードゲームに勤しんでいた。
    イデアの節ばった細長い手が駒をゆるく掴み、次の一手を打つ。しかし「あ」と口にするより早く、すぐさまアズールによって打ったばかりの駒を取られてしまった。
    「あなたらしくないミスですね」と、ずり落ちた眼鏡の鼻当て部分を中指で押し上げながら指摘され、イデアは猫背を更に曲げて縮こまる。

    普段「もしや脳の回転が止まってらっしゃる?寧ろどうやったか教えてくれない?拙者、天才なので馬鹿の思考回路が理解出来ずww」と煽りながら勝利を収めるイデアには信じられないほどの凡ミス。
    いや、打った直後の駒を次の相手のターンで取られるのはミスどころではなく罠と分かりながら飛び込むウサギ同然だ。戦略もなにもあったものではない。

    「どうせあなたのことです。これまで通り、電話でお断りするのでしょう?」
    「それがそうもいかなくてさ…」

    イデアをこうまでさせる悩みの種。
    それは、ほぼ毎月両親から送られてくる女性の写真と釣書であった。つまりはお見合いである。
    思春期を駆け抜ける男子高校生にとって最も触れられたくない部分である恋愛事情を不用意につつきまわすのが親というもの。ましてシュラウド家は嘆きの島の番人として、冥府の門を開閉するユニーク魔法を遺伝的に持つことが決まっている。
    両親にとっても、S.T.Y.Xにとっても、イデアの3次元の女性への無関心さは悩みの種であった。このユニーク魔法がなければ、番人は務まらないのだから。

    「これまでは学業、開発、行事…ありとあらゆる理由をでっち上げて回避していたんだ」
    「ほう」
    「今回もそうしようと思っていたのにオルトが今までのも嘘だったって全部バラしちゃって……あーーーー嫌だ嫌だ、絶対に嫌。学生結婚とか無理。髪が燃えてるだけでも目立つのに?お洒落とかちっとも興味ないキモオタ陰キャが突然シルバーリングを薬指に付けてみろ!「あ、コイツいよいよ脳内の嫁と…」って笑い者にされて社会的に殺されるに違いない……何で拙者ばっかりこんなフラグが何回も立つんだ…………」
    「その台詞だけ聞くとラノベの主人公みたいですよ」
    「さっきから何か面白がってない?」

    イデアの怪しむ視線から逃れるようにアズールはお得意の営業スマイルを作った。

    「いえいえ、ちっとも面白がってなんかいませんよ。今日はそんなイデアさんの力になりたくて来たのですから」

    イデアの駒がアズールの駒によって倒され、机上を転がっていく。何やらまたひとつ嫌なフラグが立ったな、と察したイデアは視線から逃げるように駒の行先を目で追った。駒は一周回って盤の縁に当たって止まった。

    「僕と契約しましょう!」
    「嫌です」

    食い気味の即答。NOと言えるオタクなので。
    一方、慣れっこのアズールは笑みを一切崩さず、この場を支配する。
    余計なことは言わないぞ、と相手が口を噤んでいるにも関わらず説明を続けた。普段よりも抑揚がついていて、どこか芝居がかって聞こえる。

    「ご実家から届くお見合いを断りたい。これがイデアさんの願いですね?」
    「…………」
    「僕であれば、在学中もう二度と嫌な思いをしてまで電話で断る…なんてことすら、しなくていいようにできます」

    えっ、マ?
    と一瞬で食いつきそうになったのをイデアは慌てて堪える。
    てっきり今回限りの対処法を授けてくれるとか、代わりに断ってくれるとか、そういうものを考えていた。
    それが、在学中。手詰まりの現状に転がり込んできた上手い話。

    イデアはアズールと約束こそ交わしたことあれど、契約をすることは初めてだった。



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