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    祖母の遺品整理の夢

    祖母の遺品整理の夢 祖母が亡くなった。
     平均寿命は超えていたし、大病を患ったわけでもないので老衰や大往生という表現が合いそうな最期だった。
     今日は、祖母が病院に搬送される直前まで一人で暮らしていた市営住宅の団地に来ている。遺品整理がほとんど終わり、部屋には三人掛けの長いソファだけが残されていた。明日の朝に、このソファを廃品回収に引き渡し、それから家の床や壁の傷み具合を確認しに管理会社のひとが来るので、それに立ち会えば、この家は解約できる。場所が離れていて、早起きしても始発では間に合わないので、前日に来て一晩この家のソファで夜を明かそうという心算だった。
     カーテンも絨毯もない、ソファだけになった祖母の家は寂しかった。WiFiもないし、誰かに電話をする気にもなれない。財布とスマホしか持ってきていないので、やることもなく、ボロボロの三人掛けソファに横になった。錆びたスプリングの軋む音と共に祖母が作ってくれた筑前煮のことを思い出したのは、そういう匂いがソファに染み付いているせいかもしれない。寒いというほど寒くもないが、こころもとなさから、毛布のひとつも持ってくればよかったと後悔しながら目を閉じた。
     気がつけば夜だった。眠っていたのだろう。目を開けると、何もない寝室の入り口付近に、心霊写真によく映っていそうな黒い長髪に白いワンピースの人間が立っていて、こちらを見ていた。眼球もないし、瞼もないし、下顎もない。そこには暗い穴があるだけだった。夢ということにしよう、と思って目を閉じたが、たくさん寝たばかりで眠気は来なかった。謎の緊張で冷や汗を流しつつ、もう一度、目を開けると、心霊写真ガールはさきほどよりこちらに近付いてきていた。もう二度と朝まで目を開けないぞ…と思って目を閉じ、ひたすらに朝を待った。
     やっとアラームが鳴り、雀の鳴き声が聞こえ、朝が来たと思って目を開けたが、ぜんぜん夜だった。辺りは暗いし、何の音もしない。強いて言うなら自分の引き攣る呼吸音が聞こえた。目も瞼も下顎もない長い黒髪の白いワンピースの女が目の前でこちらを覗き込んでいた。

    おわり。
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    MEMO祖母の遺品整理の夢
    祖母の遺品整理の夢 祖母が亡くなった。
     平均寿命は超えていたし、大病を患ったわけでもないので老衰や大往生という表現が合いそうな最期だった。
     今日は、祖母が病院に搬送される直前まで一人で暮らしていた市営住宅の団地に来ている。遺品整理がほとんど終わり、部屋には三人掛けの長いソファだけが残されていた。明日の朝に、このソファを廃品回収に引き渡し、それから家の床や壁の傷み具合を確認しに管理会社のひとが来るので、それに立ち会えば、この家は解約できる。場所が離れていて、早起きしても始発では間に合わないので、前日に来て一晩この家のソファで夜を明かそうという心算だった。
     カーテンも絨毯もない、ソファだけになった祖母の家は寂しかった。WiFiもないし、誰かに電話をする気にもなれない。財布とスマホしか持ってきていないので、やることもなく、ボロボロの三人掛けソファに横になった。錆びたスプリングの軋む音と共に祖母が作ってくれた筑前煮のことを思い出したのは、そういう匂いがソファに染み付いているせいかもしれない。寒いというほど寒くもないが、こころもとなさから、毛布のひとつも持ってくればよかったと後悔しながら目を閉じた。
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