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    #夢

    髪が二倍になる話 中学の放課後の教室の掃除時間に、ゴミを捨てにいくところだった。自分も中学生で、周りも当時の同級生だ。廊下はひとでごった返している。私は人気のないゴミ集積所まできて、ほっと一息ついたときに、ふと自分の髪の長さが気になった。腰まである長い髪は、今更ながら、他人からは少し気持ち悪く見えるかもしれない。私は髪を束ねているヘアゴムを少し下げて、ポケットからハサミを取り出して、一息に髪を切った。爽快だった。切った髪をゴミ集積所に置いて教室に戻ろうとしたが、切った髪を置いてみると、大変な気持ち悪さを感じた。切った髪がまるで巨大な虫か蛇のように見える。あるいは凄惨なイジメの痕跡か、ゴミの中にいじめられっ子が埋まっているようにも見えそうだ。見つけたひとが驚いて大騒ぎをしても困るなあと思い、私は髪を拾い上げ、ハサミについている「やりなおし(UNDO)」ボタンを押した。すると、髪の長さは元に戻ったが、巨大な虫か蛇のような切った髪は変わらず手元にあった。髪が二倍になってしまった。
     仕方がないのでなるべく小さく丸めて手の中に隠しながら教室に戻った。掃除はもう終わるところで、私はスッと自分の机の中に丸めた髪を放り込み、机の中が見えないように椅子の上に自分のカバンを置いた。図書室にでも行って、教室に誰もいなくなった頃に髪をカバンにしまおうと思い、掃除が終わるのと共に教室を出ようとした。
    「カバン忘れてるよ」
     声をかけてくれたのは、いつもクラスの輪の中心にいる女子のひとりだった。友達ではないクラスメイトにも、誰にでも親切で明るくて気さくで、頭も良くてユーモアもあって、おだんごにまとめた黒髪が綺麗な、陰キャ私の憧れの女子だ。私はめちゃくちゃにテンパった。あー、とか、うん、などと適当に呟きながら、教室から人が全員出ていくタイミングを見計らって、もたもたと自分の机に向かった。みんなが教室から出ていって、私とその女子だけが教室に残った。私はカバンを持ち上げて、忘れ物を教えてくれたことのお礼を言った。
    「机の中にも忘れ物あるんじゃない?」
     その女子は何気なくしゃがんで私の机の中を見た。置き勉すんなよ、重いしそのくらい別にいいじゃん、という定番のやりとりを期待していたのかもしれないが、そこにあるのは、巨大な虫か蛇のような髪である。しゃがんだまま無言で固まったその女子に慌てて早口で経緯を説明して、サッと髪を掴んでカバンに押し込んだ。その女子は引き攣った笑顔を見せながら一歩離れた。
    「あー、なんか、人形の髪?とかに使えそう?で、いいね?」
     ちがうんです、これは、その、ほんとうに、ああ、ヘアドネーションっていう病気で髪が生えてこなくなったひとのウィッグ用に寄付するとかいうのもあって、そんなオタク趣味みたいなことに使うつもりじゃなくて、いやごめん単に見た目キモすぎて学校に捨てていけないなと思っただけで、ああ…待って引かないで……
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    IhaqrL

    MEMO祖母の遺品整理の夢
    祖母の遺品整理の夢 祖母が亡くなった。
     平均寿命は超えていたし、大病を患ったわけでもないので老衰や大往生という表現が合いそうな最期だった。
     今日は、祖母が病院に搬送される直前まで一人で暮らしていた市営住宅の団地に来ている。遺品整理がほとんど終わり、部屋には三人掛けの長いソファだけが残されていた。明日の朝に、このソファを廃品回収に引き渡し、それから家の床や壁の傷み具合を確認しに管理会社のひとが来るので、それに立ち会えば、この家は解約できる。場所が離れていて、早起きしても始発では間に合わないので、前日に来て一晩この家のソファで夜を明かそうという心算だった。
     カーテンも絨毯もない、ソファだけになった祖母の家は寂しかった。WiFiもないし、誰かに電話をする気にもなれない。財布とスマホしか持ってきていないので、やることもなく、ボロボロの三人掛けソファに横になった。錆びたスプリングの軋む音と共に祖母が作ってくれた筑前煮のことを思い出したのは、そういう匂いがソファに染み付いているせいかもしれない。寒いというほど寒くもないが、こころもとなさから、毛布のひとつも持ってくればよかったと後悔しながら目を閉じた。
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