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    Tears_reality

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    空気が読める政府職員と刀剣男士の話

    空気が読める(見える)政府職員と刀剣男士の話その2「金糸雀、あれお前髪の毛染めたのか?」

    「ま、まあそんなとこ。これから飯行くんだけど一緒に行かね?政府の食堂、お前初めてだろ」

    「あぁ、そういえばってそれこそお前…」

    「千尋ちゃん、俺は友達も恋人も大事にする男だよ。どっちもないがしろにしないの」

    ああ、相変わらずさといというかなんというか。金糸雀萌、こいつは俺の幼なじみで時の政府の花形と言われてる黒本丸対策室に務めている。巷では花形なんて言われているけど中には「天国にいちばん近い部署」なんて呼ばれていて入れ替わりもそこそこ激しいらしいけどこいつは変わらない。こいつの周りの空気もいつも通り花がぽんぽんと咲いている。俺には察することしか出来ない。だからこうやって時々こいつの周りの空気を見るけど異変はない。隠すことに関しては金糸雀はたけている。とても。空気が見える俺を欺くくらいこいつは隠すのがうまい。悔しいくらいに。


    話は戻っていつもは自分で作ってきた弁当を食べてるんだけど今日に限って家に置いてきてしまったということでそれを知ったこいつは俺を飯に誘ってきた。正直人の多いところはあまり好きじゃない。空気が沢山いるからだ。食堂なんてもってのほかだと思っていたら金糸雀は「ちひろちゃん、素直になろ。刀剣男士の空気興味あるでしょ?」と俺の好奇心を刺激してきた。ないと言ったら嘘になる。人間のは空気はそんなに変わらないけど、こないだ天保江戸組の二振りと出会って俺は刀剣男士の空気に興味を持ってしまった。それだけじゃなくて刀剣男士本人にも。そこに居たのは神様だけど俺たちと同じ感情を持った俺たちと変わらない存在だったから。神様だけど俺たちと同じようにご飯も食べるし、もちろん欲だってある。そういやこないだ売店で見かけた審神者さんはどうなったんだろうか。本棚丸ごと買うなんてあの刀剣男士は余程の本好きに違いない。そういえばあの棚って…うん、考えるのはやめよう。俺も最初見た時びっくりしたけどね。色々と。

    そんなことを考えながら食堂にやってくればやはりお昼時そこそこの人達で溢れかえってきた。刀剣男士の方々はいるだろうかとちらりと見れば空気らしい真っ黒い狼としょぼんとしている銀色の狐。主は誰だろうと思い見てみれば本丸のママこと燭台切光忠さんと写しにクソデカ感情をこじらせた監査官の山姥切長義さんがいた。真っ黒い狼はウキウキして主である光忠さんの周りをうろちょろ、銀色の狐の主である長義さんは今でも倒れそうで。金糸雀にちょっとごめんと声をかけて長義さんに話しかければ「…飲みすぎて…その」とあぁ、わかりました。もう何も言わないでください。長義さんの手を引っ張ってトイレに連れていく。なんだってあんなに我慢してたんだろう。

    ふと端末を見れば金糸雀からの連絡。席取っといてくれたんだ。ありがとう。長義さんが落ち着いたら俺も行こうかなと思っていたら案の定長義さんがトイレが出てきていた。

    「えっと具合はどうですか?」

    「だいぶすっきりしたよ」

    心無しか空気の銀狐もツヤツヤした感じでドヤ顔でこっちを見てくる。うん、可愛い。長義さんと他愛のない話をしながら長義さんは俺と金糸雀を両方見てなにか納得したのか去り際に「この借りはちゃんと返させてもらうから」とにこにこしながら去っていた。借りも何も別に俺は助けただけで何もしてないんだけど。それにしても燭台切さんの空気も長義さんの空気も可愛かったなー。本人の手前流石に触れることは出来なかったけど。ちょっと残念。

    それからしばらくしてのこと。俺の部署に猫耳猫しっぽをつけたミニ加州さんと犬耳をつけたミニ大和守安定さんがやってきました。ちらっと見れば沖田組と呼ばれる二振りは仲良くベンチのうえで寝てて。持ち主と一緒の寝方して持ち主の上で寝てる。そういえばこの2振りとはまだ話したことないな。でもすごい疲れてるみたいだしっと思っていたらのしっと重みが。

    「坊主たちはやはりここか。連日疲れのようだったからなぁ」

    声の主を見た瞬間俺は固まった。俺にのしかかってる人は一文字則宗さん。長義さんとおんなじ監査官で刀剣男士を守る法律を作った人で俺たち人間側と一悶着あったらしい。ちゃんとしなきゃと思った矢先だった。金色のでかい猫が俺の頬をにスリスリしてきたのは。こんなでかい空気の化身そうそう見た事がない。っていうかめちゃくちゃ大きくないか。気づかれないようスリスリしてきた猫がずり落ちないようエアーで持ち上げればさらにスリスリしてくる。か、可愛い、でもこれは一体何を求めてるんだろうと思ったら金のでかい猫は俺の手から離れ則宗さんの頭に乗ってドヤ顔をする。あぁ、なるほど。なんとなくお疲れのようだし、でも上の人の頭を撫でるなんて俺大丈夫??なでた瞬間切り捨てられたりしない?と思いながら適当な言い訳をして則宗さんの頭を撫でると「これはなかなか悪くないな。」と言い出した。どうやら俺の対応は間違ってなかったらしい。

    則宗さん、褒めて欲しかったんだ。則宗さんは特命調査員を束ね、本丸の監査をする立場でいわば上の人だ。話に聞く限り則宗さんより上の刀剣男士はいないみたいで、あぁっと。そっとやめようと手を引こうとすれば「気持ちがいいからもうちょっと」と言われ同じ部屋で眠る起きた組の二振りが目を覚ますまでやらされたのは言うまでもない。

    そんな時だった。金糸雀がいる黒本丸対策室に呼ばれたのは。なんでも俺じゃないとダメな案件らしい。そこで引き合わされたのは虚ろな目をするへし切長谷部その人だった。長谷部さんの空気には感情がない。何があったんだろうか。金糸雀をちらりと見れば絞り出すように金糸雀は長谷部さんの身に起きた事実を告げた。

    「長谷部はずっと待ち続けていたんだ。帰ってこない主のことを。でも長谷部の主が帰ってこなかった。そのうちは長谷部は主が帰ってこないことを…」

    「もういい、わかったから。」

    カウンセラーの金糸雀ができないことなら俺がやるしかない。だって昔からそうしてきたから。俺はその日面会時間が終わるまでずっと長谷部さんを抱きしめ続けた。そうして終わる頃には長谷部さんの目に一筋の涙が流れていた。空気もどこか嬉しそうで俺はほっとした。うん、もう大丈夫。何故かどこか長谷部さんの空気が寂しそうに俺を見ていたのは気の所為だろう。長谷部さんには帰る本丸がある。俺はそれを見送らなきゃいけない。

    俺も審神者になれたらこんな思いしなくて済んだのかな。ふと思う。でもこれが俺の選んだ道。俺は俺のやり方で刀剣男士を見ていきたい。そうして俺を見つけてくれたあの刀剣男士に今の自分を見せたいと思う。

    「いつか君が自分を誇れるようになったらその時は僕を絶対呼んで。他の誰でもない僕を」くう
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